第13章−4 異世界の誠意は謎です(4)
珍しくリニー少年とフレドリックくんの意見が割れたよ。
というか、さらにフレドリックくんの過激度が増していく……。何故だ?
ドリア王太子は膝をつき、じっとオレの目を見上げている。
もともと、ヒトの意見を聞こうとしない人物だが、リニー少年とフレドリックくんの声は、間違いなく聞こえていないみたいだよ。
羨ましいくらい都合のいい耳だね。
王太子はオレの言葉だけを待っている。
命令を待つ健気な犬のような、純粋なキラキラした目線にオレの心がくらりとくる。
「う……ん。だったら、禁書庫の本が読めるようにして欲しい……かな?」
オレの言葉に、室内がしん、と静まり返った。
その後、爆発した。
「え……ええ?」
「ええええええ!」
「え――――っっ!」
リニー少年とフレドリックくん、そして、王太子までもが驚愕の表情で、一斉に叫び声をあげていた。
微妙にハモってないのだが、なぜか一体感のある叫び声だったよ。
(な、な、なんだ? この反応は!)
みんなも驚いているようだが、おそらく、一番、びっくりしたのは、オレだろうね。
そこまで驚くような申し出なのか?
なんか、オレ、やってはいけないことをやらかしてしまったのだろうか?
禁書庫って……確かに、ヒトの出入りが制限される大事な場所だろうが、これほど仰天するような場所なのかな?
「だめ……なのか?」
もう、これ以上、どんなお願いをしたらよいのかわからない――というか、なにを言ってもダメだと言われそうな予感がした――オレは、半分涙目になりながら、目の前で屈んでいる王太子を見下ろした。
うるっとした目でお願いしてみる。
「…………!」
とたんに、王太子の顔が一気に真っ赤になった。
「ダメじゃない。ダメじゃないぞ! できる。それならできる! 本来、王位継承権を持つ上位の王族や、国王に許された者しか閲覧許可がでないのだが、マオだったら大丈夫だ! でる。絶対に、でる。ださせてみせる!」
感激しているのか、ドリア王太子は目元を赤くさせながら、オレの手をめいっぱい握りしめる。
「マオがそこまで、王家の禁書庫に興味を持ってくれるなんて、感激だ。嬉しすぎて、天にも登るような気分だ。早速、ち、ち、父上にお願いしてみるからな!」
元気になったドリア王太子は、がばっと勢いをつけて立ち上がると、回れ右をする。
今にも部屋をでていきそうな王太子を前に、リニー少年は慌てて両手を広げて立ちふさがり、フレドリックくんは気配を消して後ろから王太子を羽交い締めにする。
な、な、な?
どういうこと?
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