第13章−3 異世界の誠意は謎です(3)
「殿下は前々からアホだと思っていましたが、今回の件で、救いようのないアホだということがわかりました」
腕を腰にやり、強い口調でリニー少年は膝をついている王太子を睨みつける。
微妙に、アホ度がランクアップしている……。一応、仮にも、王太子なのに、そんなアホ呼ばわりしてよいのだろうか?
ここに勇者世界のドゲザマナーが存在しているのなら、間違いなく、リニー少年は王太子にドゲザを強要していただろう。
そんな気が、ものすごくする……。
「どれほど殿下が今回のことについて、心を痛めて反省しているのか、口先の謝罪だけは、勇者様も納得できないでしょう。ここは……殿下の誠意を見せるべきではないでしょうか?」
リニー少年の言葉に、王太子は目をパチクリさせる。
納得できないのは、オレよりもリニー少年とフレドリックくんの方だと思うのだが……まあ、そこは追求しないでおこうか。
綺麗事のリップサービスではなく、モノで解決しようという、妙に生々しい展開になってきたね。
「セイイってなんだ?」
「それは、勇者様にお答えいただきましょう。それが確実で、間違いありません!」
リニー少年はオレの方にくるりと向き直る。
一同の視線がオレに集まった。
「え……?」
(えええええっっ!)
そんなコト打ち合わせてなかったよ?
いきなりな丸投げ展開に、オレは焦った。
「マオ、なんでも言ってくれ!」
王太子がオレに縋ってくる。
「だったら……元の世界に帰りたい」
「それは、無理だ!」
即答されてしまった。
少しくらい悩むなり、迷うなり、検討してくれてもよいのに、即答だ。ひどすぎるよ。
「もう少し、ハードルを下げてくれ!」
王太子の正直な言葉に、オレは絶句する。コイツにプライドはないのか?
次の望みはなんだろう……。
「だったら、オレにしつこくつきまとわないで欲しい……」
「それは、もっと無理だ! 不可能だ!」
「…………」
リニー少年は天井を仰ぎ、フレドリックくんは額に手を当てて難しい顔をしている。
「……勇者様。申し訳ございません。勇者様のご希望は、このクズには難しすぎるようです。もう少し、難易度を下げた『お願い』にしていただけませんでしょうか?」
「いや、もう、こんなヘナチョコ。一生許さなくてもよいのでは? 無視しましょう。いっそのこと、勇者様の視界から消しましょうか? 勇者様のためとあらば、証拠も残さず、存在そのものを消滅させることもできますが?」
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