第13章−2 異世界の誠意は謎です(2)
まあ、オレもいい加減、引きこもり生活にはうんざりしていたので、こちらから動くことにした。
王太子とは乳兄弟だというフレドリックくんが、「わたしにお任せいただけませんでしょうか?」と言ってきたので、任せてみたら、こうなったわけだよ。
ちょと残念な結果だね。
こんなのが仕えるべき主君とは、リニー少年とフレドリックくんには同情を禁じ得ないね。この先も苦労するだろうよ。
オレの憐れむような同情の視線に気づいたふたりが、苦笑を滲ませる。
この若さでふたりとも達観しきっている……。
これは……主君が頼りないと、臣下がメキメキ成長するというパターンだね。
「悪かった。マオ! 許してくれ!」
「反省したか?」
「うん。反省した! した! たくさんしたから! もう、あんなコトは、二度としない。やるときは、ちゃんと手順を踏んでする! 優しくする!」
(おい、おい、やることは、しっかりやるつもりなんだ……)
返す言葉が見つからない。
「ろくでもないですね」
「鬼畜ですね」
「反省しているとは思えないですね」
「反省の方向性が間違ってますよね」
小姓と近衛騎士がオレの背後で、オレの耳にもしっかり届くような音量で囁きあっている。
「マオ〜」
王太子は甘えるような声をだしながら、ひしと抱きついてくる。
「わかった。ドリアの気持ちは十分わかったから、とりあえず、離れてくれ」
「ゆ、許してくれるのか!」
「許すとは言ってない」
ドリアの顔が驚愕で歪む。
そんなに驚くことでもないだろう。
「なぜ、許してくれないんだ! なぜだ! わたしのどこがいけないんだ!」
必死の形相で迫られる。
こ、怖い。
「殿下、そういうところが、勇者様に嫌がられるんですよ」
「ど、どういうところだ!」
リニー少年とフレドリックくんは、大きなため息を吐き出すと、これはだめだ……という顔になった。
「…………」
色々と協力してくれたリニー少年とフレドリックくんには大変申し訳ないが、みるからに、エルドリア王太子の再教育には失敗したようである。
まあ、オレは、最初から王太子の再教育が成功するとは思っていなかったんだけどね……。
ふたりにもそれぞれ思うことがあるのだろう。微妙な緊張感が部屋に充満する。
「ど、どうして、みんな、黙っているんだ?」
居心地悪そうにしている王太子を、一同が気の毒そうな目で見やる。
おまえ、なにもわかってねーだろーっていう、侮蔑の込もった目線だ。
救いようのない王太子の残念さに、一同が呆れ返っているのだが、さすがにそれを口にする者はいない。
王太子の身分に遠慮して、というよりは、これ以上、こじらせたくない、という想いが強いとみえる。
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