第13章−1 異世界の誠意は謎です(1)
ここまでストレートに迫られ、想われていると、心が揺らいでしまうよね。
「勇者様、ほだされそうになっていますね? だめですよ。簡単に許してはいけません。残念な鬼畜はどこまでいっても、残念な鬼畜でしかありません。すぐに開き直ります」
フレドリックくんの辛辣な忠告に、オレは 慌てて頷いてみせる。頷かせるだけの凄みがあった。
忠誠心を疑われたフレドリックくんは、オレ以上に、ご立腹のようだった。
「フレドリック! マオはわたしのモノだからな! 奪おうなど考えるなよ!」
「奪うもなにも……。勇者様のお体はどうかはわかりませんが、お心は、まだ殿下のモノにはなっていないですよ? 勘違いの激しい男は嫌われますから、ご注意ください」
「な、なに! そうだったのか?」
ドリア王太子は驚いた顔でオレを見る。
「……フレドリックくんの言う通りだよ」
オレの返答に、王太子は眉をハの字にしてしょぼんと萎れる。見ていて痛々しいくらいの落ち込み様である。
ちょっと、やりすぎじゃないだろうか……。
「勇者様、何度も言いますが、騙されてはいけませんよ」
再度、警告を受けてしまったよ。
「そうです。ああやって、いつもわたしたちや大臣たちは騙されているんです」
「お、お、おう……」
リニー少年とフレドリックくんの迫力にオレは圧倒されてしまう。
小姓と近衛騎士は、オレの件に便乗して、王太子としての自覚に欠けるドリア王太子を矯正指導するつもりのようだね。
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みんなで王太子の締め出しを決めたとき、問題は「いつまで締め出すか」ということだった。
とりあえず、謝ったら許してやろう……という軽い気持ちだったんだけど、これがなかなか重い事態になってしまったんだよね。
なんと……王太子の口から「ごめんなさい」という言葉がでてこないんだ。
かしずかれるのが当然の王族だから、というのもあるだろうけど、王太子殿下は足しげくオレの元に通ってくる。
でも、部屋に入れて欲しいと訴えてくるだけで、謝罪が全くないんだ。
王太子との付き合いが長い、リニー少年とフレドリックくんはある程度、予測していたようだけど、こんなに時間がかかるとは思ってもいなかったようだね。
フレドリックくんの『挑発』がなかったら、王太子から謝罪の言葉をひきだすのは、もっと日数がかかったにちがいない。
本当は、本人が気づき、自発的な謝罪が欲しかったけど、あまり日数が過ぎると、今度は、なぜ、自分が締め出しをくらっているのか忘れてしまう危険性がある、とリニー少年はオレに進言してきたんだ……。
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