第12章−3 異世界の笑顔は激甘です(3)
ドンドンドン!
「マオ! マオ! 開けてくれ! 部屋の中に入れてくれ!」
ドンドンドン!
「全く……毎度、毎度、お恥ずかしい限りです」
紅茶のお代わりを注ぎながら、リニー少年はため息をついた。
口調は穏やかだったが、蔑むような目が怖いよ。怖すぎるよ。
子どもからこんな目でみられる大人にはなりたくないものだね。
リニー少年にこんな目で見られたら、オレは間違いなく、数日は再起不能になってしまうよ……。
「勇者様にお許しいただければ、速攻で、あの無駄口を潰して参ります」
「潰さなくていいよ……」
どうしたことか、フレドリックくんの科白が、だんだんと凶悪な響きになってきているよ。
ふたりの「王太子をコテンパンに懲らしめましょう」という提案をのらりくらりとかわしていると、新たな声が加わった。
「殿下! またここにいらしたのですか! 休憩時間は終わりですよ! 大臣たちがお待ちです。ささっ」
「い、い、いやだああああ。マオ、マオ! オレのマオがあああああっ!」
長々とした叫び声を残しながら、ドリア王太子は引きずられていく。
手際のよさから想像するに、近衛騎士が数人でチームを組んで、王太子を連れ戻しに来たのだろう。
ドリア王太子は、よく執務中に雲隠れするヒトだったらしいが、今回は、行き先がわかっているから、捜索がすごく楽だという。
「なあ……あんなヤツが王太子で、大丈夫なのか?」
静かになったドアの方を眺めながら、オレは部屋にいるふたりに質問する。
「確かに……王太子殿下は、あんなヤツですけど、現国王陛下の後継として認められているお子様は、残念ながらエルドリア王太子のみです……。父や兄たちも懸命に支えておりますが……」
「ええ。あんなヤツが継嗣というのは、恥ずかしい限りなのですが、王太子殿下はやればできる子なんです。ただ、やらないだけなんです……」
ふたりは同時にため息をつく。
散々な言いようだが、心底嫌っているわけではなさそうだ。
まあ、それはオレにもいえる。
ちょっと、うっとおしいくらいウザイヤツなんだが、いなかったらいなかったで、なんか寂しい……。
その……今までが今までで濃密すぎたこともあり、夜がちょっぴり物足りないというか……人肌が恋しいというか……。
ふと、そんなことを考えてしまい、オレは慌てて首をぶるん、ぶるんと横にふる。
そんなオレをふたりが不思議そうな目で見ている。
オレは慌てて視線を落とし、読書へと意識を集中させたのであった。
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