第12章−2 異世界の笑顔は激甘です(2)

 最初から部屋に結界を張っていれば、ここまでこじれることがなかったのに……と思う。


 さらに、オレは空間収納の魔法も使えたのを思い出し、預けていた魔王の正装も、その中にしまうことにした。

 ついでに、空間収納の中を確かめてみると、魔王にしか扱えない武器とか武器とか武器とか武器とか……武器しかない!


 しかも、一割も使っていない。収納空間はガラガラだ。

 なんて、もったいない……。


 そもそも、外出することも少ない引きこもりの魔王で、身の回りの世話は臣下に任せっきり……という状況では、空間収納を使う機会がないからね。


 オレの身の回りのモノは、侍従たちが自分の空間収納にしまっていたから、当然といえば当然のことなんだ。


 無事に元の世界に戻ったら、異世界遭難セットをセレクトし、着替え……特に、パンツは予備も含めてたくさん収納しておこう、と、オレは心に誓う。


 そして、中庭に落ちた『謎の落雷』についてだが、実は、オレがやった。やっちゃった。


 力でねじ伏せられて敵わないのなら、魔法で抵抗するしかないからね。


 だが、流石に、王太子への直接攻撃は不味いと思う理性が残っていたので、できるだけ派手な魔法を無人の場所で炸裂させて、騒ぎを起こして逃れよう……と思ったんだ。

 オレなりの配慮だよ。


 フレドリックくんが城内を案内してくれたときに、ここなら、多少の魔法をぶち込んでも被害は少ないだろう……という場所を何か所か探し出していた。

 そのひとつがあの、なにも置かれていない中庭だった。


 兵士の訓練か、荷物置きにでも使っているのだろうか?

 とにかく、なにもなく、適度な広さを備えた、まるで「ここで暴れてもいいよ」っていわれているような場所だった。


 魔法の効果は、ありすぎるくらいに十分にあり、城内は上を下への大騒ぎとなってしまった。

 王太子が呼び出され、事後処理をすることとなった。


 大成功である。


 さらに、その落雷は、「国に貢献した大神官長への労いが足りぬから、神がお怒りになったのだ」という風に解釈されたらしく、国葬期間がさらに一週間延長される……という事態になってしまったから驚きだよ。


 神様ではなく、オレの怒りなんだけど……まあ、それも含めて黙っておこうね。




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