第12章−1 異世界の笑顔は激甘です(1)
ドンドンドン!
「マオ! マオ! 開けてくれ! お願いだ! 部屋の中に入れてくれ! 入れてくれ!」
ドンドンドン!
ドリア王太子の必死な声と、扉を叩く音が煩い。
「見苦しいですね……」
「煩いですね。黙らせましょうか?」
フレドリックくんが手の関節をポキポキと鳴らしながら、オレの方へと視線を向ける。
顔がマジだよ。目が怖いよ……。
これは……本気で、しかも力ずくで王太子を黙らせる気でいるみたいだ。
リニー少年が用意してくれたお茶を受け取りながら、オレは静かに首を横に振る。
そして、書庫から借りている本へと視線を落とす。
嫉妬で我を失った王太子に乱暴されてから二日目を迎えようとしていた。
あの日の夜……。
ドリア王太子は、中庭に落ちた『謎の落雷』について、音と振動は酷かったが、被害は、地面が焦げて抉れた程度で、怪我人はなし……ということがわかると、オレが使用している客室に戻ってきた。
が、扉の前では怒り狂ったリニー少年とフレドリックくんが立ちはだかり、ドリア王太子の侵入を阻んでくれたという。
さらに、リニー少年は、オレが聞いても若干引いてしまいそうな、キッツイ叱責と罵詈雑言を浴びせて、王太子の心をポキンとへし折り、フレドリックくんは、呆然自失の王太子を力技で追い払ってくれたらしいよ。
次の日の朝、ドリア王太子は目覚めるとすぐにオレの部屋の前に駆けつけ、部屋に入ろうとした。
が、オレが扉に魔法を掛けたので、王太子は部屋に入ることかなわず、複数の近衛騎士たちに引きずられるように連れ去られていった。
それから一時間に一回くらいの頻度で、王太子はオレの部屋にやってきた。
が、追いかけてきた大臣やら近衛騎士らに連れ戻される……ということを繰り返していた。
昨日の夜は、そのまま扉の前の廊下で泣きつかれて寝たという……。
夜番の近衛騎士たちはとても困っただろう。
やっていることがオコチャマだ。
書庫に行きたかったのだが、昨日は身体に痛みが残っていたため、今日は、王太子に遭遇するのが面倒だったので、フレドリックくんに頼んで、書庫から本を借りてきてもらい、ずっと、部屋に籠っている。
異世界に召喚された動揺でうっかり忘れていたけど、オレは魔法が使えたんだったよ。
リニー少年があまりにも優秀すぎて、魔法を使って雑用を片付けるということがなかったので、すっかり忘れてしまっていた。
とりあえずオレは、この部屋にいつも使用している結界を張ることにしたよ。
オレが敵とみなした者は入ることができなくなるタイプのヤツだ。
人を傷つけるとか、周囲に被害をだす過激なタイプのものではないので、誰にも邪魔されずにひとりで作業したいときとか、よく使っているんだ。
他人に迷惑をかけずに、自分のプライバシーはしっかり護られるという、なかなか便利なモノだから、みんなにオススメしたい魔法だね。
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