第11章−7 異世界の嫉妬は過激です(7)

「……おまえたちが悪いわけじゃない。むしろ、よくしてもらっている……」


 そう。さっきの出来事は、このふたりには関係ない。そこははっきりさせておかないとね。

 フレドリックくんと親しくしていたのが引き金になった……とも言えなくないが、それをここで口にすると、さらに話がややこしくなりそうだからやめておこう。


「……え、えっと、まあ……なんか……毎晩、ドリアの勢いに流されてしまっていたオレもちょっと……まずかった……んだろうし……」


 オレはモゴモゴと言い訳めいた言葉を続ける。

 跪いていたふたりは「はっ」とした顔で、オレを見上げた。


「嫌がる勇者様を、あの鬼畜は、力でねじ伏せたというのですか!」


 フレドリックくんの目が、燃えるような光を放った。

 オレのことを想ってくれているのはありがたいが、主人を鬼畜呼ばわりするのは……どうかと思う。


「身分を笠に着て、抵抗できない勇者様を手籠めにされるなんて……サイテーな男ですっ!」


 『宰相の息子権限』をめいっぱい使っている者の科白としては、ちょっとどうかと思うが……。


「それで、これからはいかがいたしましょうか?」


 フレドリックくんの質問に、オレは考え込む。


 ただ、痛み止めが効いてきたのか、だんだん眠気が襲ってきた。考えるのがおっくうになってくる。


「そうだな……とりあえず、寝る」


 お互い冷静になる時間が必要だよね。


「それがよいと思います」

「まずはお体をお休めください」


 ふたりは、オレの意見にうんうんと同意する。


「……オレがいいと言うまで、王太子殿下は部屋に入れない……っていうのは可能か?」


「可能です!」

「お任せください!」


 オレの質問に、ふたりはナイスアイデアです、と言わんばかりに、大きく頷き返してきた。


「じゃ、とりあえず、今晩からそうしてくれ」


 今日は……眠れるかどうかわからないけど、可能であるのならぐっすり眠りたい。


「この際です。王太子殿下には、しっかり、魂の底から反省していただきましょう!」

「同感です。お仕置きです! 勇者様、二度と、このような不祥事が起こらないよう、わたくしたちで、びしばしと王太子殿下を躾ましょう!」


 ふたりしてなんだかまずい具合に盛り上がっていないか?

 いつものふたりの様子と比べると、ずいぶん過激なような気もするけど、オレもさっきのコトには少しばかり腹を立てていたので、ふたりの言葉は軽く聞き流す。


「身命を賭してでも、王太子殿下の魔手から勇者様をお守りいたします!」


 めちゃくちゃ真剣な顔で、フレドリックくんが宣言する。

 もう、なんか、誰が魔王で勇者なのかわからなくなってきた……。


「いや、そこまではしなくてもいいから……」


 若干、不安要素はあったけど、オレは椅子に座ったままウトウトしはじめる。


 完全に眠りの淵に陥る前に、身体がふわりと浮遊する気配を感じ取っていた。


 心地よい身体の揺れに身を委ねながら、オレは寝室へと運ばれていく。


 寝室には眠りを誘うと言われている香が焚かれ、先ほどの残り香を消し去っていた。


 綺麗な寝床に身を沈め、柔らかな布団を掛けられると、オレはゆっくりと意識を埋没させていく。


 本当に、このふたりに任せてよいのだろうか……。


 ぼんやりとする意識の中で、そんなことを考える。

 王太子とは別の意味で、ふたりは変な方向に暴走しそうな予感がした。




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お読みいただきありがとうございます。

さて、やらかしちゃった王太子殿下はどうなってしまうのでしょうか。

フォローや励ましのコメント、お星様など、お気軽にいただけますと幸いです。

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