第10章−5 異世界の情報網は怖いです(5)
ドリアの顔がものすごく、怖いものになっている。
その眼光の鋭さに、オレは心底、震え上がってしまったよ。
魔王のオレをも越える威圧だ。
甘ったるい気分が、一気に冷めた。
「フレドリックはマオの護衛騎士として、マオに与えたが、あくまでもフレドリックは護衛だ。歓談の相手ではない。ましてや、色目を使うなど……」
「使ってない!」
オレは慌てて否定する。
ナニコレ?
なんで、こんな話になるの?
これ、めちゃくちゃヤバくない?
「なに? フレドリックの方から誘ってきたというのか!」
「ち、ち、違うから! 誘われてなんかいないから!」
誘ったのはオレの方……と言ったら、話がさらにややこしくなりそうなので、そこは沈黙する。
「口にするのもはばかられるような関係になったのか?」
「なんで、食事をしただけでそうなるんだよ!」
「わたしとマオはそうなった」
「…………」
忘れていた。
そうだ、王太子はこんなヤツだったよ。
初対面のときから感じてはいたが、王太子とは会話が噛み合わない。
関係が深まって、心が通じ合った気分になっていたオレが浅はかだったよ。
「わたしだって、マオと昼食をとったり、お茶の時間をたのしんだりしたかったのに……」
「いや、さっき、食事は必要ないって言ったよな?」
「確かに、食事をしなくても生きてはいけるが、マオが別の誰かと食事をしていたら、生きていけない……」
「なにを……言ってるんだ?」
これは……もしかして、アレだよな?
アレで間違いないよね?
シット!
そう、嫉妬だ!
「護衛の任務もマトモにできないフレドリックは、しょ……」
「わ――っ! それだけはダメだから!」
処分とか、冗談じゃない。
しかも、フレドリックくんの性格からすると、処分と命じられたら、自ら進んで自分を処分してしまいそうで……怖い。
勇者たちがいた世界でも、ブシとかいう騎士の精神にハラキリとかいうものがあったくらいだ。
ここにだって、そういう精神があるのかもしれない。
異世界人の発想は怖い。
思考回路が理解不能だ。
「そんなに、むきになって庇うとは……」
慌てるオレの様子が、さらに、ドリアを変な思考へと導いていく。
まずい流れをオレは感じ取り、ものすごく焦ってしまった。
「フレドリックくんは護衛だから。ただの護衛だから! 優秀だし! そんな将来有望なコを簡単に処分しちゃだめだから!」
オレは必死になって言う。
どんなに強くて優秀な部下であっても、オレを置いて、どんどん先に逝ってしまう。
どんなにがんばってオレの手元にひきとめても、ほとんどの者は、自然の理には逆らえない。
いずれは死別する。
文官と違い、武官は、ときとして生命のやりとりもある。若くして戦死する者も多い。
なのに、なぜ、自らの手でそれを早めようとするのだろうか?
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