第10章−3 異世界の情報網は怖いです(3)※
「はいはい。ドリアの気持ちはよーくわかったから、そろそろ、解放してほしいかな……」
オレも軽くハグして、キスを返し、王太子から離れようとする。
このままくっついていたら、いきなり寝室直行になりかねないからね。
せっかく、みんなが頑張って夕食を用意してくれているんだから、残さず頂かないと、悪いだろう?
(……?)
あれ? ドリアが離れない?
なんだか、今日はいつも以上に、力強く抱きしめられる。
「ちょ、っ、く、くるし……」
抗議の声をあげたら、いきなり唇を塞がれた。
突然の乱暴なキスに、オレは目を白黒させた。
(なんか、ヤバい……)
召喚された初日は媚薬の原液を被ってしまってヤバい目にあったが、今日もなんだか、嫌な予感がする。
気づけばオレは王太子に抱き上げられていた。
リニー少年がなにやら王太子に質問していたけど、すでに意識が朦朧としはじめていたオレには、よく聞こえなかった。
ドリアの「不要だ」という短い言葉だけが、はっきりと聞こえただけだ。
「お……怒って……る?」
オレのぼんやりとした呟きに、ドリアの顔がくしゃりと歪んだ。
苛ついているのか、後悔しているのか、我慢しようとしているのか、不思議な表情だった。
ドリアのキラキラと眩しい笑顔も素敵だとは思うが、本心を覗かせようとしない壁をオレはなんとなく感じていた。
今のドリアの表情の方が、血が通ったひとりのひとのような気がして、なんだか安心できる。
今まで見たことがないドリアの表情が見れて、なんだか嬉しくなる。
ちょっと微笑んでいたのかもしれない。
エルドリア王太子は一瞬、息を止めると、オレからのろのろと視線を外す。
身体がフワフワと揺れはじめた。
オレを抱いたまま、移動を始めたようである。
どこに行くんだ?
……と思ったら、寝室だった。
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