第10章−1 異世界の情報網は怖いです(1)
オレが禁書庫にどうやって入ろうかと考えていた六日目の夜……。
今日もまた、エルドリア王太子がオレにあてがわれた客室へとやってきた。
毎日、毎日、よくつづくよね……。
リニー少年が王太子来訪の対応をしている。
エルドリア王太子だが、最初の頃は、自室に戻って、入浴して服を着替えてからオレのところにやってきたのだが、めんどくさくなったのか、今は政務が終わると、オレの部屋に直行するようになっていた。
オレは「やれやれ」と小さな声でこっそり呟きながら首を左右に振った。
今日から大神官長の国葬がはじまり、王太子は夜遅くまでその対応で忙しい……とリニー少年から聞いていたのだが、どうやらガセだったようである。
リニー少年自身もなんでもないような顔をしているが、夕食の準備が途中の状態で、内心では焦っているだろう。
オレは読みかけていた本に栞をはさみ、センターテーブルの上に置いた。
センターテーブルの上には、オレ、リニー少年、フレドリックくんの名義で借りた分厚い本が、きっちり三十冊載っている。
王城の書庫は、なんと、本の貸し出しも行っていたんだ。ひとり十冊まで、二週間貸し出し可能なのだ。すごいよね。驚いちゃった。
なので、オレはリニー少年、フレドリックくんに頼み込んで、毎日、三人分、三十冊の本を借りることにしている。
できるだけボリュームのある本を選んで借りているのだが、オレは一晩で読んでしまうんだ。
だが、今日は予想外にエルドリア王太子の訪問時間が早くて、最後の一冊が読めなかった。
もう少しで、伯爵令嬢を殺した犯人とその方法がわかるところだっただけに、悔やまれてならないね。
エルドリア王太子が、足早にオレの方に向かって歩いてくる。
オレは最後の一冊に心ひかれながらも、ソファから立ち上がり、王太子を迎えた。
「マオ、会いたかった……」
(朝に別れたばっかりなのに、ドリアはなにを言っているんだか……)
オレはエルドリア王太子にギュッと抱きしめられる。
どんだけオレに飢えてるのか……と呆れ返るくらい、エルドリア王太子のスキンシップは激しくて、ちょっと困る。
いくら、挨拶のキスでも、こう、回数が多いとうんざりしてしまうよね。
でも、適応能力とは恐ろしいもので、エルドリア王太子はこういうヤツなんだ、と悟ってしまうと、大概のことは許せるようになっていた。
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