第9章−2 異世界の書庫は凄いです(2)

 王城の書庫だけあって、蔵書数もハンパない。


 オレは積極的に世界の本を収集して、それなりに自信があったのだけど、オレの城の書庫の倍くらいの大きさがあって、圧倒されてしまう。


 こちらの世界の方が識字率が高いから、そのぶん、本の需要もあり、本がつくられ、世界に出回るのだろうね。


 オレのいた世界と、こちらの世界では、本の数自体が違っているのだと、痛感しちゃったよ。


 無事、元の世界に戻れたら、まずは『夜の国』の識字率アップに力をいれようと、オレは密かに誓った。 


 ずらりと並んだ本の背表紙を眺めるだけで、心が躍って興奮してしまうくらい、オレは本が好きだ。


 本があっても字が読めるのか心配だったんだが、ここは、召喚ご都合主義設定がいかんなく作用してくれたようで、問題なく文字も読めたよ。

 試しに、字を書いてみると、オレの異世界の文字は、こちらの世界の人々には翻訳されて理解されるようである。


 異世界召喚ってすげー便利すぎる。


 そういうわけで、オレは本が読めた。


 もともと、オレはインドア派で、武術よりも魔術を好む。

 身体を動かすよりは、頭を動かす方が好きなんだよ。


 なので、書庫は、オレにとって楽園だ。


 日中は、エルドリア王太子は国葬関連で忙しく、接点はない。だからとても静かだ。


 フレドリックくんは、護衛騎士としては優秀で、気配を消してオレの側に控えてくれている。


 ひらたくいうと、フレドリックくんは、オレの邪魔はしてこない。

 ドリアはオレの邪魔ばっかりするけどね。


 書庫で何時間も本を読み漁っていても、フレドリックくんは、なにも言わず、ただ壁と同化している。

 見事な同化率である。


 ****


「ずーっと、こうして一日中ただ立っているだけだと、退屈じゃないのか?」


 本を読み終えたとき、フレドリックくんに質問してみる。


「お気遣いありがとうございます。ただ立っているだけではなく、勇者様の護衛任務を行っておりますので、退屈ではありません」

「そ、そうなんだ……」


 キリリとした顔で、あっさりとした模範解答がかえってきた。


 護衛任務中のフレドリックくんには悪いけど、オレはインドア派だけど、ステータス的には、オレの方が圧倒的に強いよ。

 護衛なんかいらないよ。

 オレが本気だしたら、たぶん、オレの方が勝っちゃうよ?


 なにせ、この世界を護れるくらいの強さの持ち主として、この世界に喚ばれてしまったのだから……。


 フレドリックくんには一度、椅子に座るよう勧めてみたけど、護衛ができなくなる、とやんわりと断られちゃった。


 それもそうだろう。

 オレ(魔王)の護衛たちも、ずっと立ちっぱなしだった。

 彼らの場合は交代制だったから、気にならなかったけど、ずーっと同じ顔が立っているから気になるのだ。


 そのうち、オレも慣れてきて、本人がずっと立っていたいというのなら、好きにさせてやろうという気持ちになってしまった。


 だから、オレも好きに本を読むよ。

 勝手にどんどん読ませてもらうよ。




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