第8章−4 異世界の識字率にびっくりです(4)

 その次の日……三日目はというと……。


 オレの専属になったという赤髪の護衛騎士に、城内をひととおり案内してもらった。


 ただぼーっと城の中を見学していたんじゃないよ。

 こっちの世界の文化文明レベルをより詳しく知るためと、逃走経路を確認しておくため、オレは必死だったよ。


 なので、オレはかなり真剣な表情で、護衛騎士の案内に耳を傾けていた。

 オレは護衛騎士のわかりやすい説明を聞きながら、脳内に正確な王城の図面を作成していく。


 もともと職務に忠実で真面目な護衛騎士なんだろうが、オレが城内に興味津々だったため、さらに時間をかけて、丁寧に対応してくれる。


 オレの城よりは狭そうだけど、調度品とかは贅を尽くしたもので、全体的に華やかだ。


 いや、オレの城が暗くて、陰気なだけだろうね。たぶん……。


 そういえば、女神ミスティアナは、オレの城を訪ねてくるたびに、地味だとか、ショボいだとか、もっと内装に予算をかけろとか言っていたなぁ。


 歴代勇者も、オレの城に入ったとたん、ちょっと不思議そうな表情になり、とまどいをみせながら「なんか、イメージとちがう」「地味だな」「安っぽいな」とか「本当に、ここが魔王城なのか」とか口にしていたことを思い出す。


 こういうことだったんだな……とオレは納得した。


 でもまあ、魔王城のリフォームは、元の世界に戻ってからの話である。

 そう、まずは、元の世界に戻らなければならない。


 オレの心のうちを知らない護衛騎士は、懇切丁寧に、詳しい説明つきで城内のあちこちを案内してくれた。


 護衛騎士の名前は、フレドリック・ラーカスという。

 騎士になるために産まれてきたような、鍛え抜かれた立派な体躯の青年だった。


 リニー少年の説明によると、フレドリックくんは、近衛騎士として、普段はエルドリア王太子の護衛を担当しているんだって。

 エルドリア王太子の覚えもめでたく、王太子の一番近くにまで近づくことができる、側近的な存在であるらしいよ。


 近衛騎士の条件には、武勇だけではなく、見目麗しく、品行方正で知性ある言動も求められている。国によっては、家柄も条件に加わる場合もあるからね。


 一応、オレの近衛騎士も、そういう条件にかなうものを選んでいた。

 なにしろ、近衛騎士は、オレとセットで行動するのだから、イメージダウンになりかねないような問題児を、ぞろぞろと連れ歩くわけにはいかないからね。


 粗野で乱暴でバカなヤツを連れ歩くと、オレの品位まで疑われるだろ?


 フレドリックくんは、少しばかり地味な感じもしないではないが、将来が約束されたエリートだ。


 いや、あのキラキラ眩しい王太子の後ろに控えるのなら、これくらい地味……落ち着いている方がちょうどいいくらいかもしれない。


 フレドリックくんまでキラキラしてたら、目のやり場に困るだろうね。それこそ、眩しすぎて目が潰れてしまう。


 きっと、近衛兵の制服の下には、王太子を軽く上回る、ガチガチ、ムキムキに鍛えられた筋肉美が隠されているんじゃないかな。


 にもかかわらず、暑苦しさとか、圧迫感を感じさせないところは、好感がもてる。

 鮮やかな赤い髪と赤い瞳の、真面目そうな男だった。


 なんだが、騎士団長に似てるなあ……と思ったら、彼は騎士団長の五番目の息子だったよ。



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