第8章−3 異世界の識字率にびっくりです(3)
異世界に召喚されて、十一日目にして、禁書庫に立ち入ることができたのだが、そうなるまでには……まあ、それなりに、それなりのことがあった。
ということで、禁書庫に入る前の話に戻ろう。
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異世界に召喚された翌日は、城内を歩き回る気分にはなれず、部屋の中でゴロゴロしていた。
で、なぜかリニー少年が用意した部屋着は、ヒラヒラ、フリフリした、ラブリーなデザインの恥ずかしいやつだった。
「着たくない。着るもんか!」
もちろん、オレはシーツにくるまった状態で、断固拒否する。
オレにだって学習能力くらいはある。
リニー少年は「似合うと思うのですが」と凄く不服そうだったが、拒否だ。拒否!
採用する理由がこれっぽっちもない。
それがオレに似合うわけがないし、そもそも着たいとも思わない。リニー少年の目は、残念ながら節穴のようだね。
「こんなヒラヒラ、フリフリしたものじゃなくて、普通の部屋着を用意してくれ。シンプルなのがいい。パンツもこんなのじゃないヤツだ!」
パンツもボクサータイプのものを強く所望するよ。
「そ、そ、そんなぁ……」
なぜ、スケスケ薄布地のヒモパンツを拒否しただけで、リニー少年はどうしてそんなに悲しそうな顔をするの?
ちょ、ちょっと……床の上に泣き崩れるってどういうこと?
「……あー。アレ、そう。あれだ! オレは、王太子殿下の部屋着とお揃いがいいんだ!」
「勇者様は、殿下とお揃いのお召し物をご所望ですか?」
「あ、ああ。そうだ。お揃い。ペアルックだ!」
「なるほど。殿下もお喜びになります!」
ものすごくキラキラした目で、リニー少年は大きく頷く。
一瞬、言葉を間違えたかも……と後悔した。
でもね、フリフリ、ヒラヒラ、スケスケヒモパンツ生活になるくらいなら、それくらいは些細なことだよね。
気にしたら負けだよ。
そして……あっさりと、普通な部屋着が用意されたんだ。
王太子が昨日、着ていたものと同じデザインだけど、サイズはオレにぴったりだった。
王太子の方がオレより背も高く、体格もよいので、王太子の部屋着を渡されたら、大きめの服を着ることを覚悟していたのだけど……この部屋着、オレのためにしつらえたかのようなほど、ピッタリな服だった。
(量産品なのだろうか?)
少しばかり疑問が残るが、下手に躊躇して、またヒラヒラ、フリフリを渡されても困るよね。
オレは急いで部屋着に着替えた。
パンツも心置きなく、安心して履けるものだった。
よかった……。
本当に、よかった……。
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