第8章−2 異世界の識字率にびっくりです(2)
肉食系王太子はチョロくてちょっと心配になるけど、この国の人々は、他国に比べて識字率も高く、勉強にも意欲的で、本の普及率もよいらしい。
書庫の蔵書数を見れば、それも納得するけどね。
こういう知識は特権階級のみのものかと思っていたけど、貧しい平民であっても、不幸にも親を亡くしてしまっても、簡単な算術、日常的な読み書きができる大人になるようにと、国営の塾があるというから、びっくりだ。
また、優秀な生徒には、奨学金制度というものがあって、貧しくても、学校に通って学ぶことができる仕組みがあるんだって。すごいなー。その仕組、考えた人、エライと思うよ。
魔術の研究も盛んだけど、文化、芸術の振興にも力を注いでいると教えてもらった。だから、なんとなく、王城にいる人たちって、上品なんだね。
オレの城とは大違いだよ。
権威あるアカデミーがこの王都にあって、他国からの留学生も、積極的に受け入れているらしいよ。知識の出し惜しみ、隠蔽はできるだけせずに、公開しているらしい。
で、ここが気に入ってしまった留学生らが、自国に帰りたくないとタダをこねて、外交面ではちょっと困っているらしい。
学術分野では先進的な、牽引する役割をこの国は担っている。
かなり先端を大爆走しているようで、他国はその背中を見失わずについていくので、せいいっぱいだとか……。
つまり、他国からは一目置かれる存在というわけだ。
オレがあまりにも読書に対して貪欲な姿勢を見せるので、リニー少年の方から、そういったコトを話してくれるようになっていた。
とはいっても、リニー少年も箱入り息子の世間知らずであるから、地方のことや貧民街の事情まではわからないと言っていた。
でもまあ、その年齢で、その自覚があるだけでも偉いと思うよ。
普通は知らないし、親などが見せないように隠してしまうからね。
とまあ、リニー少年の説明によれば、表面上は、学問を愛する穏やかな国……といった風である。
歴史書にもざっと目を通してみたけど、この国から他国へ軍事侵攻したという記録はなかったね。
戦争が全くなかったというわけではないよ。むしろ、頻繁に近隣諸国からの侵略は受けているようだね。
攻め入った隣国に対しては、容赦なく反撃し、勝利している記録が細かく残っている。
国軍も強いし、国境付近を治めている辺境伯らが大活躍しているようだね。
実録もあれば、その話を元にした、小説なども、書庫にはたくさんあったよ。
軍は国の防衛のため……というスタンスだが、手を抜いているわけではないようだ。
むしろ、軍略の研究やら、兵器開発やら、そっち系の学問も盛んなようである。
書庫の蔵書を見ていても、リニー少年の話は間違っていないだろうね。
基本、豊かな国で、余裕があるから、多くの人が学問を習得することができるのだろう。
貧しくてその日を生きていくのが必死な世界では、勉強どころではないからね。
学問、研究が活発になれば、医療や諸産業の技術も発展し、利益が産まれるという、いい展開になっているようだ。
そして、その利益を研究開発費にあて、さらに学問、研究が活発になる。
とても、とても、魔王の存在に戦々恐々としている国には見えない……。
魔王誕生はガセではないかと、疑いたくなるくらいだ。
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