第8章−1 異世界の識字率にびっくりです(1)
十日後――。
オレは王城の禁書庫の中にいた。
エルドリア王太子に『限定付き』だったけど、王城の中を散策する許しは得ていたからね。
最初、禁書庫は立ち入り禁止の場所だったけど、書庫の中の本をあらかた読みつくしたオレは、エルドリア王太子にうるっとした目でお願いしたら、あっさりと禁書庫の鍵をゲットすることに成功したんだ。
王太子……チョロすぎるよ。
オレに対して『どうしようもなく、病的なまでにべた惚れ』というリニー少年情報は、かなり信憑性が高そうだね。
まあ、王太子がチョロかったから、それほど苦労することもなく、オレは禁書庫への立ち入りを許されることとなりました!
ヒャッホー!
禁書庫と呼ばれるだけあって、禁書ばかりが収蔵されている部屋は、少しだけかび臭かった。
インクの匂い、湿った紙の匂いもする。
ざっと見回したところ、鎖付図書、魔法で封印されている魔術書、豪華装丁されている本やら、表紙に錠前がついている本など、内容もさることながら、見た目からしてなにかしら云われがありそうな本が、コレクションされていた。
歴史的、学術的、芸術的に貴重な本が目白押しだ。
オレはしばしうっとりとした表情で、部屋の中に漂う厳かな空気を堪能した。
「素晴らしい……」
なんと、素晴らしい部屋なんだ!
感動にうち震えているオレを、書庫の年老いた管理人は、穏やかな眼差しで眺めている。
ここ毎日、書庫に通い続けていたので、オレが本好きな王太子の賓客だと、認識されたようである。
「閲覧席はこちらでございます」
そう言いながら、オレを奥の方へと案内してくれる。
「それでは、ごゆっくり……」
管理人はオレとオレの護衛騎士に軽く会釈すると、書庫の方へと戻っていった。
****
禁書庫は、王位継承権を持つ上位の王族や、国王に許された者しか閲覧許可がでない。
なので、閲覧席もものすごく豪華で、そこだけは、居心地の良さげな空間になっていた。
椅子もゆったりとしており、座ってみたが、座り心地も抜群だったよ。こう、負荷もなく……身体がすいつくようなかんじだね。クッションもフカフカ。
暗い室内を照らす魔道具の光も、とても柔らかくて、読書にぴったりの明るさだった。
読書好きにはたまらない空間だよ。
「今、もう、禁書庫の中で暮らしたい……って思われましたよね?」
オレの行動を監視している、赤髪の護衛騎士に言われる。
「よくわかったな。ダメかな?」
「ダメですよ」
護衛騎士の返事は淡々としていて、おまけに短い。
それでも意思の疎通に不自由なく、過ごせているのだから……驚きである。
この数日で、オレの思考パターンは、護衛騎士に見抜かれてしまったようだね。
禁書庫で暮らせないのは残念だが、読める本は読んでもよい……と言われているので、オレは読書の時間を満喫することにする。
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