第7章−4 異世界の朝は衝撃です(4)

(えええええええっ!)


「えーっと、大神官長様って、もしかして……昨日の?」

「ああ。昨日、マオを召喚した大神官長だ」


(いきなり、知人死亡イベント発生か!)


 異世界に召喚されてまだ二十四時間もたっていないのに……。


(なんという急展開だ!)


 ベッドにうつ伏せになったまま、オレは驚き慌てふためいていた。


 動ける状態だったら、驚きのあまり飛び起きていただろうね。


 予想していなかった。だが、言われてみれば、妙に納得できる人物の死亡報告に、オレはしばし呆然とする。


 こういうときって、どうしたらいいんだろう?


 急展開に思考がついていかないよ。


 召喚者が死んでしまった……。

 これは偶然なのだろうか。

 それとも、なにかの陰謀なのだろうか。


 いやいや。それよりもなによりも、勇者召喚術に関する知識はちゃんと、次の世代に受け継がれているのだろうか?


 今にも死にそうな――実際に、死んでしまわれたが――ヨボヨボのおじいちゃんに、負荷のかかる高レベル秘術を使わせたのだ。


 他にも召喚術が使える者がいれば、普通は、今にも死にそうな老人に鞭打って異世界から勇者を召喚させるよりも、もっと元気そうなヤツにさせるよね?


 少なくとも、オレならそう命令するよ?


 大神官長のおじいちゃんが死んだことによって、勇者召喚術が使えるやつがいなくなったって……ことはないよね?


 十分ありそうで、ちょっと怖いんだけど……。


 大神官長のおじいちゃんには悪いが、そんなことが真っ先に浮かんでしまったよ。


 自分の世界に戻る方法を一番知ってそうなヒトが、いきなり手の届かないところに逝ってしまわれた……。


 こうなったら、自分でがんばって情報を集めるしかないよね。


 幸先のよい異世界ライフのはじまり……とはいかないようだ。


 暗雲たる気持ちで枕に顔を埋めていると、またカ――ン、カ――ンという、鐘の音が聞こえた。


「……もしかして、あの鐘の音は?」

「故人を悼むモノだ。今日は一日中、鳴り続ける」


 煩いだろうが、我慢してくれ、とエルドリア王太子に言われたが、故人を悼む鐘の音にケチをつけるほど、オレの心は狭くないよ。


「ちなみに、死因は……?」


 チラリと顔を動かし、側にいる王太子を見上げる。


 まさか、勇者召喚失敗という役立たず認定で処分……ではないだろうな?


 ありそうでちょっと怖い……。


 聞くのは怖くて嫌だが、知らないままというのもモヤモヤする。


「老衰だ」

「……本当に?」

「間違いない。大神官長は、国で最高齢の御方だ。それだけ長く生きれば、色々と持病を併発されてもいよう。老いた身であるから、勇者召喚も負担だったかと思われる。だが、老衰で間違いない」


 う――ん。

 にわかには信じられない。


 大神官長様は、ヨボヨボのおじいちゃんではあったけど、昨日、見た限りでは、危なっかしくても、まだ数年は生きていそうなかんじだった。


 勇者召喚で無理をしたとか、無理をして勇者召喚したのに、召喚したヤツが魔王だった……というショックとかストレスで、ポックリいっちゃいました、という説明の方がしっくりくるよね……。




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