第7章−2 異世界の朝は衝撃です(2)

 三十五回も勇者に倒されて、三十六回も復活するということを繰り返していると、ちょっと、新しい『刺激』が欲しくなる。


 そのことを、勇者召喚の責任者である、聖なる女神ミスティアナに話した結果が、コレである。


 初対面の男との『刺激』なんて、オレは決して求めていなかった。


 ……不本意だ。


 しかも、媚薬の影響もあったのだろうが……エルドリア王太子はそちらの教育もしっかり受けてらしたようだ。


 異世界のレベルの高さに、オレは恐れ慄く。


 ……思い出さないほうが、オレ的にはいいような気がしてきた。


 アレは全くもって不本意な、封印すべき事故だ。


 恥ずかしい。恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい……というか、もう、さっさと元の世界に戻りたい。


 寝台の中で悶々としていたら、その気配をリニー少年に悟られてしまった。


 もぞもぞ、バタバタしてたら、起きてるってばれちゃうよね。

 うかつだった。


「勇者様、お目覚めですか?」


 ああ、無邪気なリニー少年の声が、オレの心に突き刺さる……。


 ふたりぶんの気配が、こちらに近づいてくるのがわかった。


(逃げたい!)


 だが、逃げるどころか、寝返りすらできないオレは、布団の中で小さくなって固まることしかできない。


(た、頼むから、王太子はこっちに来ないでくれ……)


 枕に顔を埋めながら、オレは心のなかで女神に必死に祈った。


「マオ、昨日は無理をさせてしまったな。今日はゆっくりと身体を休めてくれ」


「…………」


 オレのささやかな願いは、女神には聞き届けてもらえなかったようである。いつものことである。


 エルドリア王太子は寝台の側で屈み込むと、オレの方へと顔を近づけてきた。


「マオ、素敵な夜をありがとう」


(いや、やめて! そ、そん、ん、なああ、恥ずかしいセリフはやめて! 頼むから、やめてくれ!)




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