第2話厭な父親
幼少期から、遊びに連れて行ってもらった記憶がない。唯一、遊んだのは父と川で魚釣りくらい。
父はトラック運転手で、朝早く帰ってきて晩酌し寝て、また、夜に会社に向かう。
だから、昼間は家のなかで、僕たち兄弟は静かにしてなくてはいけなかった。
笑い声を上げただけで、僕らは殴る蹴るの暴行を受けた。
母はその頃、足を悪くして寝たきり状態のおじいちゃんの在宅介護を始め、高校生の僕と弟ほ芳雄は部活に励んだ。
僕は弓道部。弟こそ、中学校では卓球部であったが、高校時代はサッカー部。
誰に似たのか、僕らはイケメンと呼ばれ、彼女がいない時期は無かった。
どこにも、親は遊びに連れて行かなかった。家には80代のおじいちゃんがいるし、何かあっては父、母は兄姉、義兄義姉に何を言われるか分からないので、おじいちゃんの在宅介護に力を入れた。
母はその頃は、近くの老人ホームの介護士をしていた。
トラック運転手で父夜はいないし、母は夜勤もあるので、僕らは自分の食べ物は自分達で作っていた。
おじいちゃんには、ちゃんとお粥が準備され、それをおじいちゃんに食べさせる為に、食事介助をして、おじいちゃんをお風呂に入れた。
おじいちゃんの体を隅々まで洗い、湯船に浸けた。
僕は冷蔵庫の麦茶を飲んで風呂場に戻ると、おじいちゃんは湯船で溺れていた。
僕は入浴介助の難しさ、責任を覚えた。
ある日、僕は弟を誘い一緒に魚釣りに行った。
ブルーギルが大量に連れた。しかも、大きなサイズを。
ブルーギルは、いずみ鯛とも呼ばれて、結構美味しいのだ。
ウロコと内臓を取って、バター焼きしてワサビマヨネーズで食べた。
おじいちゃんのベッドに運び、いずみ鯛を食べさせる。
おじいちゃんは喜ぶ。これが、最後の川魚とは知らずに。
父は毎朝、5時には帰宅する。僕は2時まで勉強していた。
父は寝ている、僕らを叩き起こし、
「お前らは、いつまでも寝やがって!寝るな!起きろ!」
と、怒鳴り散らすのだ。弟はサッカーの深夜放送見て、僕は勉強している。6時半なら起きても何も問題ない。だが、5時前から叩き起こされるのが常であった。
早い、朝ごはんを食べていると、酒乱の父は、
「飯ばかりは、いっちょ前に食べやがって!健太、大学合格しなければ半殺しにするからな」
と、とても父親が言うような言葉ではない。
僕と弟は茶碗にご飯が残っているのに、箸を置いた。
母は、悲しくて、
「とーちゃん、それはあんまりじゃない?」
「アイツラは甘やかすと頭に乗るから、厳しく育てないと!」
と、会話しているのが聞こえた。
弟は自転車通学なので、7時には家を出て、お小遣いと言っても、僕が毎月1万円渡したモノだが、それで、朝コンビニでパンと牛乳を買い食いしていた。僕は6時半にはバイクで学校に向かい、ベーカリーでパンとアイスコーヒーを買い食いしていた。
高校2年生にもなると、彼女が出来る。
付き合って半年後には深い仲になる。
そのウワサを聞いた父親は別れろっ!と、怒鳴りだす。
その子の父親とケンカした過去があるらしい。また、例の被差別地域の子供である。
僕の知った事か!僕はそれから9年間付き合ったが、父親が嫌う家庭の子と結婚しても、彼女が苦しいだろうから、26歳の時に別れる事になるのだが。
この父を殺したい!と、僕は思っていたし、弟も同じだと言う。
神経質で、酒乱で、母子共に暴力を振るう。
最悪の家庭である。
僕たち兄弟がグレなかった事は奇跡ではあるまいか?
弟はちょっと、高校時代からチャラ男でケンカばかりしていたが。
おじいちゃんは、その頃はすでに老人ホームにいた。
ある日、おじいちゃんをお見舞いに行ったら、
「おはんは、誰ですか?」
「健太だよ!おじいちゃん!」
「初めまして」
僕のおじいちゃんは等々、認知症になったのかと肩を落として部屋を出た。
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