母(別の名を、正妻)
「あさかやま」
「ほら、また筆が寝てしまっているわ」
母は娘を抱えるようにして手を、筆を持つ
「あさかやま かげ
「
「
ここは
「
「
言うと、女房は、
女房は戻り、しばしあって(しばらくして)、もう一人、女房を連れて、紀望行と共に来た。
御簾の外に女房二人は座り、望行も座る。几帳から娘は顔を出し、来たのが父と知ると、声を上げた。
「ちちぎみ~」
几帳の内から出て行こうとするが、母に抱えられて止められた。
女房二人は御簾を
望行は、几帳の前に座る。
「ちちぎみ~」
声を上げる娘を妻は抱えて、
「――
昨日の試みのことを聞くのに、「『
「
沈んだ声で言う
「お喜び申し上げます」
「……………」
望行は口閉じて、長く
「喜んではいないんだ」
几帳の内、妻は唇を噛む。けれど、
「――私に、気をお遣いにならなくていいのですよ」
「
紀望行は、
「試みのたびに、吾が子に才がなくて、よかったと思っていた。だから、子に才があって、喜んではいない」
「――……それを、
妻は聞いた。
「言っていたよ」
望行が答えた。
しばしあって、几帳の内から、娘の声が聞こえた。
「はは~、
娘は、人が泣くのは、痛い時だとしか知らない。
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