【悪友時代】とある寝込んだ日のこと。
「よお、元気に死んでるかー?」
「何その矛盾した文章……」
「ツッコミ入れる気力があるならまだダイジョーブだな」
「何も大丈夫じゃないし
「聞いてたが言うとおりにするとは言ってない」
「屁理屈ですらない科白振りかざしてないで帰れ」
「強がんなって。コトバの切れ味落ちてんのに口は減らないのな」
「か・え・れ」
「ヤ・だ・ね」
「ホント帰って。今アンタに付き合える体力残ってない」
「別に相手させるつもりで来たんじゃねぇし」
「じゃあ何しに来たの……」
「モチロン見舞いと看病のためだっての」
「頼んでないし
「空気感染じゃねーんだしイイだろ?」
「そういう問題じゃない……」
「
「…………もう好きにすれば……」
「……おう、思ったより重症だな。好きにするから寝てろ」
あいにくと舌戦を続けられる気力もない。レンもイイ歳なので自己責任ということで放置することにする。
本当に好きにし始めたレンが台所で病人食作ってるんだろう音をBGMにうつらうつらしているうち、本格的に寝入っていたらしい。
ふと目を覚ますと、わりと至近距離にレンの顔があった。
「何してんの……」
「いや、生きてっかなと思って観察してた」
「空気感染じゃなくても接触感染はするんだからあんまり近づくな」
「大丈夫ダイジョーブ、ちゃんと手洗い消毒殺菌はする」
「半径1m以内に近づくなって言っておけばよかった……」
言外に感染経路になりそうな場所に接触したと言われて後悔する。体に触ったのか寝具に触ったのかは知らないけれど、どっちにしろもっと強く言っておくべきだった。
「粥作ったけど食う?」
「食べる……」
「スープも作ったからローテーションな」
「……ありがと」
「スナオに礼まで言うなんてよっぽどだな」
「普段が素直に礼すら言わない意地っ張りみたいな言い方やめてくれない……」
「そうだな。お前そーいうところはきちっとしてるもんな」
改まっては言わないけれど、感謝の意は伝えてる……はずだ。レンがあっさり納得したので、そう思ってるのは自分だけ、ということはないはず。
「対症療法で自然治癒待ちするしかないんだろ? 栄養あるモン食ってゆっくり休んでさっさと治せよ」
「言われなくても」
「それまでは誠心誠意看病してやるから覚悟しとけ」
「意味が分からない……」
「まー、俺の気が済むように世話されとけってコト」
そう言うレンに、一人で寝てるしかなかった心細さみたいなのが紛れたのは、悔しいことに認めるしかなくて。
お粥を取りに行った背中にもう一度感謝を投げかければ、レンは肩だけで笑った。
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