【悪友時代】人をダメにするソファの話。
前触れ無く(わりといつものことではあるけど)レンが家に来たと思ったら、かつてない大荷物だった。もとい、大きい荷物を携えていた。
「人間をダメにするソファというものがあるらしい」
「ほー」
「というわけで買ってきた」
「なんでウチに持ってくるわけ」
「決まってるだろ。お前をダメにするためだ」
「何そのドヤ顔。常々アンタの買ってきたこの部屋に不釣合いなソファのおかげでスペースないっつってんのにばかなのしぬの」
「そこまで言うか」
「現状見ればわかると思うけどどう見ても場所がない。邪魔。無用の長物と化す」
「まー御託はいいから座ってみろって」
「御託じゃないし正当な意見だし少しは人の話を聞けこの自己中」
「聞いてる聞いてる。聞いてるから座ってみろって」
「信憑性が一ミリも感じられないんだけど」
「はいはい、ほーら座ってダメになれ」
「ものすごく座りたくないけど、気にならないわけじゃないから座らせてもらうわ」
「なんだかんだお前って自分の好奇心には従順だよな」
「まあね。……え、何これ。すごいフィットする」
「なんか面によっても座り心地が違うらしい」
「なるほど」
「どうよ。ダメになりそう?」
「さっきからなんでそんなに人をダメにしたがってるのアンタ」
「いや、お前がダメ人間になったら俺の諸々の厚意もごちゃごちゃ言わずに受け入れるんじゃないかと思って」
「……その思いつきで買ってきたの、これ」
「そのとおり」
「アンタはなんていうか、これに座らなくても既に人間がダメだよね」
「お前はなんつーか、俺に微塵の遠慮もなく罵倒するよな」
「罵倒されたくなかったらもうちょっと知性ある発言してくれない? 優秀らしい頭脳が泣くよ?」
「頭脳も才能も俺の所有物だからどう使おうと俺の勝手だし、そもそも泣かないだろ」
「そういう意味じゃない」
馬鹿が馬鹿な思いつきで馬鹿をやるのはわりといつものことで。
なし崩しにあいつが居座るのも、やっぱりいつものことだったりする。
そんなある日の一幕。
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