【悪友時代】クリスマス、後夜。



「……何してんの」


「忠犬ヨロシク待ってる」


「聞きたくないけど一応聞く。何を?」


「お前」


「……色々言いたいことはあるけどとりあえず。さっさとその雪払って部屋の中入れ」


「仰せのままに、ご主人サマ?」


「気持ち悪いから黙れ」




「アンタいつから待ってたわけ」


「そんな待ってねーよ。多分」


「信用ならないコトバだことで。とりあえずこれ飲んでさっさと体温めなよ。風邪ひいても看病しないしましてやここでダウンとかされても困るし」


「冷てーの」


「飲み物用意してやっただろうが」


「そんだけじゃ忠犬のココロは満たされないって」


「見返りを求める時点で忠犬じゃないと思う」


「まーいーけど。会えただけで」


「やめろ鳥肌立った」


「俺の正直な気持ちってヤツなんだけどヒドくねぇ?」


「寒さで頭やられたの?」


「真顔で訊くなよ。……お前が絶対クリスマスは来んなっつったから来んの我慢してたんだっての」


「だってクリスマスにアンタと接触するとあらぬ誤解を受けるし。あとバイトみっちり入れてたし」


「クリスマスをかきいれ時としか思ってないよなお前」


「事実そうだし」


「それでいいのか花の女子大生」


「本人とかけ離れた呼称を口にするな寒い」


「肩書きは間違ってねぇだろ」


「違和感やばすぎて寒気がする」


「そこまで言うなよ……」


「で、何? まさか本気で顔見に来ただけとか言ったらとりあえず頭の病院探してあげるけど」


「いい加減頭おかしくなったネタから離れろって。……とりあえずこれ」


「……? なにこれ」


「いわゆるクリスマスプレゼントだけど文句あるか」


「文句はないけど呆れてる。こういうのがアンタの彼女と彼女候補さん達の誤解を招くんだって何度も何度も言ったと思うんだけど」


「やりたい奴にプレゼントやって何が悪い」


「嫉妬の矛先になる身としては何もかも悪い。……って言いたいけど、まあ、確かにプレゼントなんてあげたい人にあげるものか。ってことで、はい」


「……なんだこれ」


「さっきの言葉をそっくりそのままお返しする。中身が貧相でも文句言うなよ」


「言うわけねーだろ。……ヤバ、これはちょっと予想外だった」





 そう言うヤツの顔がみっともなく緩んでるのに呆れるべきか喜ぶべきか。

 少し悩んで、とりあえず二杯目のホットミルクを淹れに立った自分も、多分誤解を増長させる土壌を作ってるんだろうけど、まあ。


 なんだかんだ言っても、この関係が心地いいと思ってしまってるのだから、どっちもどっちなのかもしれない。




 二杯のホットミルクを手に戻った先で、「不意打ちマジやばい。なあ惚れていい?」とかほざいたヤツに真剣にカップの中身をぶちまけるか考えたのは、できれば忘れたい余談だったりする。



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