第22話 11-2.SNS上の旧交

 吉田茂からのLINEメッセージを読んでいると、新しいLINEの受信音が入る。岡村からで、開けると、インスタグラムへのリンクが貼られていた。

 岡村は、毎日のように投稿している。難波へ飲みに行ったらM1の決勝に残った芸人がいて店の前で一緒に写真を撮らせてもらったのを載せたり、手作り餃子の写真をアップしたり、子供の誕生祝いの様子を伝えたり、と大多数のSNS利用者と同じような使い方だが、和彦の友人の中では断トツの投稿数で、相変わらずの旺盛なエネルギーだ。岡村は語学学校を出た後、音楽関係の通訳・翻訳者となった。結婚もして、子供が二人いる。


 二〇一〇年頃のフェイスブックに始まるSNSの普及のおかげで、長く消息の分からなかった以前の友人達と、ぽつぽつと、交流を再開するようになっていた。

 もともとは岡村からフェイスブックの誘いがあり、とりあえずアカウントを作ってみたが、自分から投稿したことはなく、もっぱら誰かの投稿を見ているだけだった。やがてツイッターやインスタグラムの方がSNSでは主流となり、岡村もそちらへ乗り換え、変わらぬ旺盛さで発信している。

 高倉もここ数年のSNSで消息が分かった一人だ。俳優は諦めて、実家へ帰っているようだ。

 パチンコ店の元同僚達は何をしているのか、まったく分からない。パチンコ店も二十一世紀に入ったあたりから大学新卒の新入社員を募集したり、接客マナーも徹底して教育され、人に堂々と言える仕事に変わってきている、と聞く。

 ただ、新型コロナウィルスの流行や昨今の物価上昇のあおりを受け、パチンコ人口は減っているようではある。和彦もほぼ三十年ほどパチンコをしていないので詳しくは知らないが。


 職場の介護施設から自宅への帰り道、琵琶湖を望むカフェへ立ち寄り、コーヒーを注文し、勉強する若者達や談笑する中高年の人達に混じって、一人スマートフォンをいじくり、LINEやメールのチェックをしたりネット検索をしたりニュース記事を読むのが和彦の息抜きで、気が付けば結構時間が経っていて窓の外を闇が包み始め、はっとなって表へ出て原付バイクにまたがる。

 夕方を過ぎると琵琶湖からの風が強く冷たくなり、冬はこたえる。夏はこの風が心地良かったが、ここ数年は熱風に変わってきている。

 

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