第4話 3-2.ライター講座へ

 寮の部屋へ帰り、封筒の中味を見た。

 東京出版学校には全日制で二年間みっちりと通うコースもあれば、働きながら夜間通えるコースもある。和彦が現時点で通えるようなコースがあるとは思わなかったが、ライター講座という夜間講座は週一回らしい。学費の表を見てみると、何とか払える金額だ。

 岡村は、春から大阪の専門学校へ入ると言う。東京へは音楽を学びに来た。見切りをつけて関西へ帰り、今度は語学学校に入って通訳・翻訳の仕事に就こうと考えている。親の援助も得られるようだ。岡村は二年前にアメリカへ旅行して以後、海外と関われる仕事を模索しており、決めた、と言う。

 俳優志望の高倉は劇団の研究生となることが決まり、春から連日稽古へ通うこととなる。三人の溜まり場となっていた岡村の部屋は岡村の大阪行きと同時に引き払うこととなるが、和彦がある日、寮の部屋を出たい、とこぼすと、じゃ、俺のとこしばらく住めや、と気軽に言う。実際、二人で家主に会いに行き、代理で友人が住みます、と岡村が言うとあっさり許可が下り、和彦は敷金礼金等なしで岡村の部屋に移れることとなった。

「その方が俺も助かるねん。荷物、置いて行けるし、たまに東京遊びに来た時は、泊まれるし。あ、でも出たい時は言うてや。荷物、引き上げに来るから」

 和彦はいずれパチンコ屋を辞めるつもりだったから、風呂・トイレ付きで巣鴨駅徒歩一分、と立地も良い岡村の部屋に住むことで跳ね上がった七万三千円の家賃を払い続けられるかは分からない。四月から通うことに決めた週一回のライター講座は専門学校としては心もとないが、就職の斡旋もあるらしい。夏のボーナスで辞めるか、冬にするかと思っている。「何ヶ月もおらんで」とは言っておいた。

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