第74話 火だるまのライオス

俺達は大樹の庭園へと向かっていた。


大樹の庭園は世界樹クレスティアを登っていた場所にあり、ルスタニア法国にある聖域の一つとして有名であった。


世界樹クレスティアには大樹の庭園まで続く道があり、俺達はその道を登っていった。


ミリーが俺に尋ねてきた。


「ライオスは大樹の庭園にいるの?」


「恐らくね。ルスタニア法国にとって大樹の庭園は聖地だからみんなおいそれと入ろうとはしないからね。身を隠すにはうってつけの場所だ。」


「なるほどね。」


俺達は世界樹クレスティアを登っていくと、途中で行き止まりになっていた。


「はて、上への道はないみたいじゃが?」


「オリヴィア、ここで世界樹の印をかざすんだ。」


俺はアイテムボックスから世界樹の印を取り出した。


そしてそれを世界樹に向けて掲げたのだった。


すると閉じていた上への通路がすっと現れたのだった。


「さあ、この登っていた先が大樹の庭園だ。」


「クリード、いよいよだね。」


「ライオスと決着じゃな。」


「ああ、必ずライオスを捕まえる。」


「さあ、行こう!!」


俺達は道を登っておき、大樹の庭園へと入ったのだった。


大樹の庭園は美しい庭が広がっており大きな泉もあった。


大樹の庭園からは下を見下ろせるようになっており、絶景が広がっていた。


「すごい場所ですね、雲の中にいるみたいです。」


「大樹の庭園からの眺めはすばらしいからね。でも大樹の庭園内にはだれもいないみたいだね。」


マリーの言う通り、大樹の庭園内には人の姿は見られなかった。


「やはりライオスの奴は隠れているみたいだな。」


俺は大樹の庭園全てに聞こえるように大きな声で呼びかけた。


「ライオス出てこい!!隠れても無駄だぞ!!」


どこからともなくライオスの声が響いてきた。


「その声はFランクか?」


「ああ、そうだ!!ライオスおとなしく出てこい。」


「どういう事だ、なぜFランクがここにいる?そうかこのライオスのパーティーに戻ってくる気になったんだな!!破壊将軍バグロッサに降伏して、このライオスの為に働いてくれる気になったんだな!!」


「そんなわけないだろうが!!」


「ならばダルカンに降伏したのか?」


「違うに決まってるだろうが!!」


「馬鹿な、ならばどうやってここまで来た?このライオス様はFランクを倒すようにバグロッサに命令したんだ。お前が降伏する以外の方法でここに来られるわけないだろう?」


「破壊将軍バグロッサを倒したに決まってるだろうが。」


「破壊将軍バグロッサまで倒してしまったのか?」


「ああそうだダルカンもな。お前が使っていた改良版の魔物はすでに全滅しているし、すでに聖都はこちらが奪還しているぞ。」


「聖都を奪還しただと!!下にはライオス軍の兵士達がいたはずだ。」


「ルスタニア法国の僧兵達と一緒にライオス軍はほぼ捕縛した。この聖都で残っているのはお前だけだ。ライオス!!」


「馬鹿な!!そんなわけないだろうが!!連中は石になってるんだぞ!!」


「ああ、石化なら解除させてもらったぞ。テスタロッサに協力してもらってな。」


「Fランク、テスタロッサが王国内にいる事に気がついていたのか?」


「ああ、もちろん。石化を解除させる方法も見当はつけてたからな。」


悔しそうなライオスの声が響いてきた。


「Fランク!!なんでこのライオス様の邪魔ばかりするんだ!!この計画は練りに練ったこのライオス様の最高の計画だったんだぞ!!何の為にお前を追放したと思っているんだ。」


「俺を追放しておいて勝手な言いぐさだな!阻止するに決まってるだろうが!!それよりもさっさと出てこい!!」


「仕方ない!!Fランク、このライオス様は決断した。絶対に出て行かない。」


「隠れても無駄だって言ってるだろうが。痛い目みるだけだぞ。」


「痛い目にはあいたくない。」


「だったら出てこい。」


「なあFランク、そう言わずにこのライオス様を見逃してくれないか。俺達は一緒に旅をした仲間だろう?」


「ライオス、お前にとって俺は仲間じゃなくて奴隷だって言ってたよな!!だったら別にライオスを気にしなくていいだろうが。」


するとライオスの気弱な声が響いてきた。


「わ・・悪かった、あ・・謝ります。Fランク・・。いや・・クリード、ふざけた事を言ってすまなかった。このライオスはクリードがとても優秀な人間だったと思い知らされて今とても後悔している。」


「ライオス、いいからはやく出てこい。」


「このライオス様は出て行かない。クリードが見逃してくれるなら出て行くが?」


「見逃すなんてできるわけないだろう!!ライオスこれで最後だ、はやく出てこい!!」


「出て行かない、このライオス様を見逃すと言わない限り姿を現さないぞ。」


「そうか、仕方ないな。」


ライオスの声が響いてくる。


「クリード、このライオス様の透明魔法インビジブルを使っている。どこにいるか全然わからないだろう。それにこの聖域では闇雲に魔法を使ったりはできないだろう。世界樹を傷つければ一大事だからな。」


ライオスが姿を現さないなら痛い目にあってもらうだけだ。


「心配無用だ。お前の隠れている場所はもう分かってる。それにライオスお前だけを魔法の対象にすれば世界樹を傷つける心配もない。」


俺は発動探知のスキルをすでに発動していて、インビジブルが発動されている場所からライオスの位置を割り出していた。


俺は炎系の下級魔法フレイムの詠唱を始めた。


「その炎によってかの者を包み込め!!フレイム!!」


俺はライオスが隠れている場所に向けてフレイムを発動した。


するとその場所からライオスが火だるまになって現れたのだった。


ライオスの悲鳴が大樹の庭園内に響いた。


「うあああああ!!!、あ・熱い・・・!!」


ライオスは火を消そうと、地面を転がり回っていた。


「熱い・・!!熱い・・・!!火を消してくれ!!」






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