第73話 聖都解放作戦
俺達は他の冒険者達と共に一路聖都ルスタニアへと向かっていた。
「すごい数が集まったな。」
「みんなクリードを支持してくれているって事だよ。」
ルーテシアが俺に尋ねてきた。
「クリード、王国軍にも参加してもらった方が良かったんじゃないの?」
「いくらライオス達を排除するためとはいえ王国軍がルスタニア側に入れば国境侵犯になる。その点冒険者ならルスタニア法国内にも自由に出入りができるし、戦力としても申し分ないからね。それに聖都さえ解放できればすぐにルスタニア僧兵隊も動いてくれるだろうから王国軍は動かない方がいいはずだ。」
「そういう事なのね、分かった。」
「それにしてもライオス軍の抵抗はほぼないのう。少しは抵抗してくるって思ったんじゃが。」
「ライオス軍は相当に混乱しているようだな。よしこのまま聖都付近まで進もう。」
俺達はほとんど抵抗を受けずに聖都ルスタニア近くまでやってきたのだった。
俺はダンジョン探知のスキルを使って聖都内の様子を探った。
「特に聖都内には魔法の設置はされてないみたいだな。」
「よし、じゃあ作戦通り聖都の中に侵入してくる。」
「クリード様、お気をつけて。」
俺達のパーティだけで聖都の中に入っていった。
「クリード、どこに行くの?」
「聖都中央広場だよ、あそこがこの聖都の中心部だからな。あそこで暗黒魔法を発動して聖都の人達の石化を解除しようと思ってる。」
「分かった。」
聖都ルスタニアは神アルカディオスを崇めるアルカディオス教の中心地であり、ルスタニア法国の首都でもあった。
聖都はとても大きな町できれいな石造りの街並みは見事なものだった。
だが町のあちこちに石にされた人々がたたづんでいた。
「ライオスの奴、ひどい事をするな。」
「みんな、クリードが元に戻してくれるからもう少し待っててね。」
「はやく聖都の人達も元に戻してあげよう。」
「うん。」
するとルーテシアが前を指さした。
「クリード、前から誰か来るわ。」
ルーテシアが指さした先にはライオス軍の兵士達がいて、向こうも俺達を見つけた所だった。
「なんだ、あいつらは!!」
「分からねえが侵入者だろう!!」
「侵入者なら、やっちまえ。」
「おお!!」
ミリーが俺に尋ねてきた。
「あいつらどうするクリード?」
「正面突破するだけだ。」
俺はすぐに詠唱を始めた。
「鋭き風の刃よここに現れろ!ガスト!」
俺は風魔法のガストでライオス軍の兵士達は吹き飛ばしてやった。
「がはっ。」
ライオス軍の兵士達はそのまま全員伸びたのだった。
「さすがクリード。」
「お兄ちゃんさすが。」
「このまま聖都中央広場に向かうぞ。」
「うん。」
俺達は聖都中央広場までやってきた。
「聖都の中央広場ってやっぱり大きいね。」
「ほんとだね。」
「中央広場にもたくさんの人達がいたんじゃな。みんな石にされておる。」
「ここはみんなの憩いの場だからね。」
俺はすぐに恩恵の流れの確認を始めた。
「こうやって恩恵の流れを見てみると、聖都っていうのはすごいな。」
「そうね、すごく大きな恩恵の力がこの聖都に流れこんでいるわ。強力な結界が張られている聖都なだけあるわ。」
「それじゃあテスタロッサ始めるぞ。」
「ええ。」
俺はすぐに暗黒魔法の詠唱を始めた。
「とこしえなる深淵の闇よ、この世界を全て漆黒の闇に塗りかえたまえ!!ダーク・エターナル!!」
聖都の上空に大きな闇の空間が現れた。
そしてそれは聖都の空をどんどん黒く染めていき、真っ黒な暗闇が聖都全域を染めていったのだった。
「もう真っ暗だよ。」
「すさまじい魔法の威力ね、もうここまで使いこなしているなんて。」
しばらくしてダーク・エターナルの魔法効果が終了して徐々に明るくなっていったのだった。
「さてと、どうだ。」
聖都は空は完全に明るくなった。
すると石になっていた人々が元に戻っていたのだった。
「あれっ、動ける!!」
「やったー、動けるわ!!」
「やっと動けるようになったわ!!」
中央広場で石にされていた人々が元に戻ったのだった。
「クリード、成功よ。」
「さすがお兄ちゃん。」
「クリード、本当にありがとう。」
「ああ、すぐにルビス大司教様の所に向かおう。ミリー大司教様はどこに?」
「通常であればルスタニア大聖堂にいらっしゃる事が多いわ。」
俺達はすぐにルスタニア大聖堂へと向かった。
ルスタニア大聖堂に向かう途中も聖都の人々が自由に動けるようになり、大喜びをしていた。
俺達が大聖堂に入ると、すぐにルビス大司教を見つけたのだった。
「ルビス大司教様。」
「おおクリード殿、ミリーではないか。なぜここに?もしや我々を石から元に戻してくれたのはクリード殿なのか。」
「はい、そうです。」
「おおそうだったのか、まさか魔王クレスタにこれほどの力があるとは思っていなかった。ライオスが魔王クレスタが聖都を狙っていると言っておったから、聖都から誰も出ないように警戒令を出したのだが、それが裏目に出てしまったな。聖都ごと全員が石にされてしまうとは夢にも思わなかった。クリード殿ほんとうに感謝いたします。」
「大司教様、聖都の人々が石にされたのは魔王クレスタのせいではないのです。」
「なんと、では誰がこんな事を?」
「ライオスです。ライオスが至宝の一つであるヒスイの宝玉を魔法都市ブリテスクから盗んで聖都ルスタニアの人々を石にしたんです!!」
「なんだとライオスがか!!それは真なのか?クリード殿、ミリー?」
「はい、間違いありません。」
「はい、大司教様。クリードの言っている事は全て真実です。」
大司教は怒り心頭の様子だった。
「おのれライオスめ!!我々を騙したのだな!!」
「大司教様、俺達も協力させて頂きます。それと聖都の外で冒険者達も待機しています。」
「おお、ありがたい。是非とも頼みます。」
大司教がすぐに指示を出してくれた。
「全ての僧兵達に命じる。クリード殿と協力してライオス及びライオス軍を捕縛せよ。ライオスは大罪人である!!」
「はっ!!」
大聖堂の中にいた僧兵達が慌ただしく外に出て行った。
俺は聖都の外で待機している冒険者達に知らせた。
そして僧兵隊に加えて冒険者達も協力してのライオス軍の一斉捕縛が始まったのだった。
聖都に駐留していたライオス軍は次々に捕縛されていったのだった。
その中にはライオス軍の幹部であるベルーガの姿もあった。
俺は大聖堂にてベルーガを尋問していた。
「ベルーガ、なぜライオスに協力したんだ?」
「ライオスが俺を勧誘にきたんです。幹部として取り立ててやるってね。」
「そうだクリード様、ライオスの居場所知りたくありませんか?」
「いや聞かなくても予想はつく。どうせ大樹の庭園辺りに隠れているんじゃないか。あそこは世界樹の印がないと中に入れないからな。」
「はい、その通りです。いやクリード様は聡明なんですね。」
「ならヒスイの宝玉を渡しますよ。俺が持ってますから。懐から取ってください。」
俺はすぐにベルーガの懐を確認すると青く美しい宝玉を持っていたのだった。
「これはヒスイの宝玉で間違いないな。」
「でしょ。」
「えらく素直に協力してくれるんだな。」
「もうこうなったらライオスは終わりですからね。今さら庇ったところで意味ないでしょう。そもそもあんなライオスなんて庇いたいとも思わんでしょう。」
「確かにな。」
すると大司教が俺の所にやってきた。
「クリード殿、聖都の中にいたライオス軍の捕縛はほぼ完了しました。ただ肝心のライオスが見当たらないので、捜索の網を広げています。」
「それなら大丈夫です。ライオスの居場所の見当はついてますから。俺に任せてください。」
「そうなのか。ではクリード殿にお任せする。」
俺達は大聖堂を出たのだった。
「クリード、ライオスとの決着をつけに行くんだね?」
「ああ、そのつもりだ。」
俺達は世界樹へと向かった。
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