夏だった

@mnkryoru

この夏

夏は嫌いだ。


別に特別何があったとかではない、多分。

僕にとっては、四季が移ろうが、いくつ年を重ねようが、ただ日々が過ぎていくだけで。


青春のたった二文字すら見つけられず、日々を浪費して、そんなときに見つけた君は、普通の人間だった。


僕は目が悪い。思考することを放棄して、ぼんやりとブルーライトを浴びすぎたせいだ。だから、眼鏡をかけて、世界に一枚レンズを挟まないと、なにもはっきり見ることすらできない。

そんな僕を見て、次の日サングラスをかけてきて、「お揃いだよ」と笑った君は少し変わっていたかもしれない。



僕は、体力がない。普段の生活のせいだろう。なのに、君は急に輝いた目で僕に向かって「一生に山に行きたい。世界のてっぺんを見たい」と言った。子供の僕らに、結局行けたのは、地元の人しか行かないような、しかもそれほど高くはない山だった。

そこの頂上の古びて誰もいないような神社で、「誰もが幸せになれますように」なんて祈っていた君は、変わっているのかもしれない。


なぁ、そっちの世界は楽しいのかな。

いつも僕のことを「変わってる普通の人間」なんて矛盾した形容をした君は元気なのかな。


やっぱり、夏は嫌いだ。

今日も、過去の君が僕の生活を邪魔するから。

過去の僕も君の生活を邪魔していますように。






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