5-3



 それからのことはよく覚えていない。

 ……ありきたりな表現って現実にありふれた現象だからこそありきたりなものになるんだろうなあ。とりあえず警察とのやりとりとかはろくに覚えていない。私の母は訃報を聞いて卒倒して一日寝込んでしまったと、母の復活を待って帰国した父が言う。

 それから検視が終わって、他殺ではなく自殺と確定される。遺書のようなものはなかったのかと確認すると、一葉の写真を渡される。

 それは弟の自殺現場の写真で、弟の遺体は写っていない。砂の上に棒か何かで書かれた、たった一文がそこにあった。


 あいしてごめん


 警察によると、遺体の近くに弟の指紋のついた長い木の枝があったからそれで書いた可能性が高いとのことだった。

 両親はその遺文の意味を測りかねるようだったが、私には判って、でも言えないな、と思った。

 弟は本当に増田くんを愛していたのだ。

 増田くんが愛と思っていなかっただけで。

 でもきっと、それだけじゃないんじゃないかと思う。増田くんに愛をわかってもらえず、振られてしまっただけじゃなくて。

 私のせいでもあるのだろう。

 私が仕事を休んでいる間も、弟と増田くんはきっとちゃんと大学に行っていたはずだ。そこで何か言われたのかもしれない。弟はもしかしたら、自分が増田くんと付き合ったりしなければ、増田くんが私と関わるようなこともなく、アウティングの被害を受けることもなかったと考えたのかもしれない。

 私が私のせいだと考えるように。

 弟も自分のせいだと――考えたのかもしれない。

 わからない。私と弟は姉弟だが、違う人間だ。分かり合えないことだって多かった。それに私と違って、どう考えても弟は直接増田くんのことをアウティングしたり加担したりはしていない。大学の人にバレてるとも限らない。私が思うようなことはなかったかもしれない。あいしてごめん、だって、何か別のことを指しているかもしれない。

 けれど、私の想像通りだったとしたら。

 私はこの遺文の意味を墓まで持っていかないといけない。

 遺文の意味がわからず、わからないという事実を己の無力さに結び付けて嘆き始める両親に、私の推測を伝えて少しでも楽にしてあげたいけれど、それは弟がついぞ両親に伝えなかった性的指向を暴露する免罪符にはならない。同じ罪を重ねてはならない。

 と思っていたら母が、

「もしかして彼氏くんと何かあったのかな」

 と言うので、私の放送を両親も聞いていたのだといまさら気づく。そういえばピアノを弾くだけだった放送も聞いていたのだ。それでもなお、両親はここで私に何か問い詰めたり、解散のことを訊かずにいてくれているのだ。ふたりもそんな余裕はないのかもしれないが、私のことを慮ってくれているのかもしれない。

 胸が痛い。ひりひりと痛い、唾が臓器を直接撫でているような感覚がする。私は弟の秘密を守ることなんて、もうできないのだ。弟が秘匿していた相手にばっちり伝えてしまったのだから、私はなんのリカバリーも、せめてこの一戦は守れた、みたいなこともできないのだ。

 警察が帰ってから、私は両親に頭を下げる。「守一郎は私が殺したんだよ。私のせいで、守一郎は自殺を選んだんだ」それだけを言うと涙が出てしまって、細かい説明ができなくなる。母は何も言わず抱きしめて私を撫でる。

 哀れに見えるかもしれないけれど、どうか憐れまないでくれ、と思いながら私はされるがままに抱擁される。抱き返す資格はないと思った。

「僕もママも、薊に何か、気の利いたことを言えるわけじゃないけれど」と父は言う。「でもね、薊。自分のことを表す言葉を印象で引っ張ってくるとき、いつも直喩で語りなさい。隠喩は暴力で、認識を蝕むから」

 父の言葉の意図はわかる。《自分は人殺しだ》と《自分は人殺しのようなものだ》には違いがあって、一回思うたびに感じる自傷が後者だと少し浅い気がする。

 でも私はたとえ真の人殺しでなくても、真の人権侵害者であることには変わりなかった。アウティングは裁判を起こされたら負けるような行為ではあるのだ、データだけで考えても。

 結局のところ、私は罪人なのだ。のようなもの、じゃなくて。

 諸々の準備を手伝いながら毎日出勤をする。葬儀当日は忌引きをとっていて、何回も突発的な休みを入れてしまう私に店長も同僚も優しい。もっと休んでいいと言われるけれど暇な時間があると死にたくなるからこのほうがいいし、私はそんな風に権利をフルで行使する気分になれない。でも優しさを撥ね退けているようで申し訳がなくて、そっちの罪悪感に心を傾けることで罪から少し逃げて、そのおかげでやり過ごせる。

 その場しのぎの逃避も自己嫌悪の材料で、その日の忙殺が途切れたとき、お風呂のなかや寝る前に、一気に押し寄せる。自己批判の益体のなさにはもういい加減気づいているけれど、それでも止まるものじゃないので、私はそのたびにノートに意識して書きつける。

 自己暗示のように繰り返し書く。

 死ぬな。

 死ぬな。死ぬな。死ぬな。死ぬな。死ぬな。

 だって私は、仕事のある社会人だから、急に死んだら周りに迷惑がかかる。だって私は、こんな私なのに両親に愛されているから、私まで死んだら悲しませてしまう。弟の死で気を失った母を、また倒れさせるわけにはいかない。葬儀の準備だって新しくやるのは大変だろう。私の命の終わりは私だけの事件にはならないのだ。

 私は生きないといけない、私以外のために。

 私なんかのためじゃなくて。

 DEEZ NUTS JOKERのあれやこれも聴いて頑張ろう、と思って試してみるけれど、精神的に疲弊しすぎているのか音楽に浸ることができず、雑音にしかならなかった。

 ある日の夜に木村ちゃんがメッセージが来る。

《無事? 守一郎くんのこと、聞いたよ。ご愁傷さまです》

 増田くんから聞いたのだろうか。増田くんの大学にも連絡が入ったのだろう。増田くんは大丈夫だろうか。私は返信する。

《無事。増田くん、どんな感じ?》

《元喜くんは今日会ったけど、ぱっと見では大丈夫。リスカも増えてないみたい》

《そっか。よかった》それから私はちょっと耐えられなくなって送る。《私の暴露が弟の死に繋がっていて、それが苦しくて、増田くんまで死んだら私はいよいよ無理かも》

《いまは無理じゃないの?》

《無理だけど、無理矢理、無理じゃないってことにはしてる。表面上》

《そっか》それから木村ちゃんはまた送る。《温かくして寝てね。ちゃんと食べてね》

 そういえば私は弟の死からずっと一日に一食しか食べていなくて、食べているものもサラダとパンだけで、見透かされてるな、と思った。でも食欲がないのだし、肉を食べると命を奪っている感じがして気持ち悪いのだ。それでもパンのおかげで働けているのだからいいじゃないか。

《心配してくれてありがとう。大丈夫大丈夫》

 大丈夫って何を指すのか知らないけれど。

 葬儀がある。親族だけでやる。私たちに余裕がないからだけれど、弟にも大学の友達がいたとしたら申し訳ない。弟はどんな学生生活を送っていたのだろう。増田くんと付き合うまでは悩みの相談などしてくれていたけれど、大学に入ってからはどんな風にやっているかを聞くこともなかった。増田くんづてに聞けばよかったかもしれなかったけれど、私はなんとなく興味のないふりをしていた。どうしてだろう? 私はどうして弟のことをもっと増田くんに訊かなかったのだろう。増田くんと関わることのできないいま、私は弟がどんな大学生であったのか、よくわからない。

 私は酷い姉だ。

 弟のことなんて、亡くすまでこんなに考えていなかったのだ。興味を持っていなかったのかもしれない。ただ、弟の過ちに腹を立てるばかりで、大学に合格したときも、木村ちゃんのように泣いて喜んだりしなかった。よかったなあ、と思うだけだった。上から抑えつけるばかりで、お前って呼んで叱るばかりで、私はどれだけ自分を弟より上位に置いていたのだろうか。そのくせ最後に弟に与えたのは私の迂闊さが招いた過ちだと言うのだから笑える――にこりともしない。

 木村ちゃんが弟の姉だったらよかったのに。私のような欠け落ちた人間じゃなくて。

 諸々が終わって、両親に用事があって私は独りで帰る。電車に揺られながら、忙しさに一段落がついたせいか力が抜けて、人と人の間で、電車の座席で泣き出してしまう。拭う気にもなれなくて流しっぱなしだ。

 次が恋川駅だから降りたらトイレで泣き止むまで待って帰ろうかな、と思っていたら、私の前に立っていた人に声をかけられる。

「大丈夫ですか。ティッシュ、使いますか」

「……ありがとうございます」

 親切は受け取っておこう、と顔を上げて、その人が増田くんのお母さんであることに気がつく。

「あ……」

「……遊井さんですよね」と増田母が言う。前に会ったときから時間も経ったし、格好も割と違うから確信を持つまで時間がかかっただろうか。「お久しぶりです」

「はい、お久しぶりです……お座りになられますか」

「いいえ、次の次の駅ですから」

 と増田母は笑う。それを言うなら私は次の駅で降りるから余計に座っていなくていいのだけれど、それでも固辞されるので、従うほかなかった。

「あの、もしも勘違いでしたら申し訳ないのですが……」

「合ってます。葬式から帰るところです」

「そうでしたか」増田母はそれから、噛みしめるように言う。「お悔やみ申し上げます」

「ありがとうございます」

「もしかして、弟さん……守一郎くんのご葬儀でしたか」

「はい」

「やはりそうですか。元喜の大学の友人から聞いていました。生前は大変お世話になりました、……と、いま、遊井さんに申したところで、……すみません」

「いえ。次のときに弟に伝えておきます」

 増田母はどこまで知っているのだろうか。この感じだと、私のアウティングは届いていないのかもしれなかった。訃報の話題だからか複雑な表情をしているからよくわからないけれど、純粋に死を悼み、悲しんでいるように思える。増田くんは増田母にあまり胸中を明かすタイプの息子ではなかった印象だし、そういう相手に増田くんの性的指向を勝手に教えてしまっていないのであれば、ちょっぴりマシだ。

「遊井さんも、いまはとてもお疲れだと思います。どうかゆっくり、ご自宅でお休みください」

「ありがとうございます」温かい言葉に、どこか罪悪感が疼く。

「……遊井さんは、何か、いま、誰かに言いたいことがあるのではないですか」増田母は、ふいにそんなことを言った。「息苦しそうに思えます。わたしでよければお話お聞きします」

 迷ったけれど、自分はいよいよ限界が近いことがわかっているので大人しくお言葉に甘える。生きないといけない。喫茶店に入って、テーブル席で増田母と向かい合う。コーヒーが届いて、私はゆっくりとふたくち飲んで、それから話す。

「弟が死んだのは、私のせいだという思いが、消えません」

 増田母は言葉を受け止めるように沈黙を挟んで、それから、

「まずはお聞きします」

 と言う。

「私は」

 増田くんと弟の秘密をインターネット上で暴露してしまいました、と言おうとして、増田母がアウティングの件を知らない可能性を思い出す。だとしたら、増田くんが暴露されて困る秘密を抱えていること自体、伝えるべきではないように思えた。

「弟の秘密を、インターネット上で、漏らしてしまいました。うっかり、口が滑って、なんて言葉で許されないほど、尊重されるべきプライバシーでした」

 増田母は何も言わず、真剣にこちらを見つめていた。私は続ける。

「弟はその暴露に苦しんだんじゃないかと思います。ご存知かもしれませんが、弟は、守一郎は、自害しました。遺書は簡潔なもので、具体的なことは書かれていませんでしたが、私が暴露してしまったプライバシーに関連していることは明らかでした。葬儀が終わり、忙しなさから解放された途端、自責の念と喪失感がどっと押し寄せてきて、泣いてしまいました」

「……そういうことだったんですね」

「はい」

「さぞや……お苦しかったことでしょう」

「……当然の苦しみだと思っています」と返して、それから訊く。「でも私は、いつまでも自分を責めてばかりではいけないと思います。このままではいずれ限界が来て、私も自らの命を手にかけてしまうかもしれない。そうなったら、私の職場や両親に迷惑をかけてしまいます。だから、……どうにかして前を向けるようになりたいんです。もしよかったらでいいのですが、いい方法を知っていたら教えていただけますか」

「……わたしも」増田母はブラックコーヒーを見つめて言う。「昔、私の行動によって、人の命を奪ったことがあります」

 まだ元喜も生まれていない頃の話ではありますが、と前置きして増田母は語る。

「当時のわたしは若く、せっかちな性格でした。ある日、大事な友人との待ち合わせの朝に寝坊をしてしまい、駅までタクシーで急ぐことになったんです。友人を待たせたくない気持ちでいっぱいでしたので、運転手の方をついつい、急かしてしまいました。裏道などを使っていただいたのですが、それでも足りないと感じ苛ついてしまい、もっと早くしてください、と怒鳴ってしまいました。運転手の方もお疲れだったのでしょうか、それなら急いでやってやる、とムキになったように法定速度を超えたスピードでタクシーを走らせました」

 増田母はそこでコーヒーをひとくち飲んだ。カップを持つ手が少し震えていたような気がする。

「タクシーは親子連れを撥ねました」

 私は息を呑む。

 増田母はうつむいたまま、親子は亡くなりました、と続けた。

「わたしはいまでも、あのとき寝坊をしたり、あんな風に運転手に怒鳴ったりしなかったら、事故は起こらなかったのではないか、真に命を奪ったのはわたしだったのではないか、と後悔しています。運転手の方の人生も、わたしのような客がいなければ前科者の道に逸れることはなかったでしょう」

「それは……」あまりに思い詰めているように見えて、何か否定をしようとしたけれど。私が何かを言う話じゃない、ずっと抱えている感情に軽率に触れてはいけない、と思って、「それは、すごく、……その」結局、うまく言えなかった。

「わたしはそれから、タクシーを使えなくなりました。何かに遅れそうで焦れる気持ちになるたびに、思い出して寒気がするようになりました。元喜を妊娠したときも、こんな人間が命を産み育ててよいのかとさんざん悩みました。いまでもそれは変わりません。……法律に裁いてもらえていたら、どんなによかったかと思います。もしかしたら、おこがましくも過去の罪として清算を終えたような気持ちになれたかもしれません。あるいは被害査遺族にわたしの行いが伝わり、報復を受けられたらどんなに爽快かと思いました。でもそのようなことはなく、わたしはずっと、ふたりの人間の命を奪い、ひとりの人間の人生を狂わせた罪をまるのまま背負ってきました」

 増田母はコーヒーに沈めるように言い切ると、カップから顔を上げて私を見る。

「罪は消えません。被害者が自分の意志で許すようなことがない限り、背負い続けるしかありません。命を奪うということは、許されることができない罪です。許されてはいけない、ではなくて、許されることができない、です。誰がなんと言おうと、被害者自身に対しての補填など何もされない行いです」

「……そう、ですよね」

「だから、罪から解放されようなどとは思わないでください」と増田母は言う。「死ぬことで逃げようなんて、考えないでください。ずっとずっと呪われながら、苦しみながら思い出しながら、生き続けてください。自分を責めながら、誰かに責められているように感じながら、傷つきながらひび割れながら、生き続けてください。それが罪に対する真摯な姿勢だと、わたしは思います」

 増田母のように。

 罪を背負いながら、罪に蝕まれながら、罪と生きていく。

「ありがとうございます」私はどこか、楽になったような気持ちになる。前なんか向かなくてよいのだと、言ってもらえたように感じた。「そうします。後悔しながら生きます」

「それはよかったです。お互い、生きていきましょう。いつかきっと、わたしのように、それでも笑える時間が増えるかもしれません」増田母はそう言って微笑んだ。

 会計のとき、私がふたりぶんを奢ろうとすると、増田母は強引に自分のぶんを支払った。なんだか増田母への気遣いが固辞されてばかりだな、と思いながら、隣駅に行かないといけない増田母を改札まで送る。

 改札の前で増田母は言う。

「ところで遊井さん、謝らないんですね」

「え?」

「わたし、知っていますよ。元喜があなたに傷つけられたこと。この前、元喜が沈んだ様子だったので訊いてみたら、あなたに秘密を言いふらされたと聞かされました。それによってバンドをお辞めになったとも。どのような秘密かは言われませんでしたし、ならば知るべきではないと思ったので聞きませんでしたけれど。どうして、そのことについて、母親であるわたしと話しているのに、謝らなかったんですか」

「それは――その」

「別にいいんですよ。いまさら懺悔されたって、許しませんもの。信頼していた大人が自分の子供の心を傷つけたのですから」

 自分の判断すら許せないくらいです。

 増田母は言い切ると、さっさと改札を通って行ってしまった。

 私はしばらく立ち尽くしてしまっていたけれど、改札から出てきた人にぶつかられて、返らなきゃ、と思う。とにかく帰ろう。バス停まで行こう。駅を出て、バス停までの経路にある横断歩道の信号が青になるまで待って、両足が白線の上に乗ったときに、また止まってしまう。

 ここで赤になるまで待っていればいいんじゃないだろうか?

 そしたら、もう誰も傷つけないで、怒らせないで済むんじゃないだろうか?

 さっき、私が余計な気を回そうとしたから増田母に不愉快な思いをさせてしまった。私の生が続いているから、余計なことをして、人を嫌な気持ちにさせてしまうんじゃないか? 私みたいなやつは物言わぬ死体となることが一番いいんじゃないか?

 私が死んだら職場に迷惑はかかるかもしれない。でも人が急に休んでしまったり、いなくなったりしても大丈夫なように人員や仕組みが備わっている職場でもあるのだ。バイトの子が急にバックれたり社員が一か月入院になったり引っ越すことになったりすることなんて、ままあることだから。素晴らしいことに、あの職場には私の代わりなんていくらでもいるのだ。

 親は悲しむかもしれない。でも、例えばもうしばらくして立ち直りかけたときに私が事故か何かで死ぬくらいだったら、いま死んだほうがマシだったりしないだろうか? 人はいつ死ぬかわからないのだから、まとめて死んでおいたほうが時間のロスがないかもしれない。

 なんだ。

 死ななくていい理由なんて、案外簡単に、否定できるもんだね。

 青信号が点滅して、でもこれって私がここに立っていることは歩道の傍に停車している車にはまるわかりなのだから私が退くまで進まないんじゃないかな、と気づく。じゃあそうだ、赤になったら歩道の続きを渡ろう。それでダメだったら、諦めてビルか何かに侵入して飛び降りようか。誰かを巻き込まないように、夜更けとかに――。


「遊井!」


 声がして、コートの襟を誰かにぐんと引っ張られる。私は勢いよくお尻をコンクリートに叩きつけられる。一瞬、そういう撥ねられかたもあるのか、と思っていたけれどそうじゃない。

 私は横断歩道から、手前の歩道に引き戻されていたのだ。

「何してんの……! 危ないじゃん!」

 木村ちゃんが泣きそうで、本当に申し訳ないな、と思う。

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