余談 (6)


 久我山は考える。


 どうすれば良いんだろう、と。


 喜多見の懸念は考え過ぎとは言えない。彼女の言う通り人生何が起こるのか分からない。あのような震災がまた降りかかるかも知れないし、あるい大規模な災害でなくとも何らかの事件事故に巻き込まれ〝選択〟を迫られるかも知れない。


 これからどんな禍が降り掛かって来るのか、それは誰にも分からない。予測は出来ない。


 だから喜多見の言うような事態には陥らない、と断言する事は出来ない。その可能性は十分ある。


 そして、もし。


 もし、そんな事態に陥った時。喜多見が懸念する事態に陥った時。


 どちらか、という選択肢を取る事は、彼女の言う通り出来ないだろう。そうなれば待ち受けているのは不幸しか残らない結末。どちらも死ぬと言う結末だ。


 確かにそれは避けなければいけない。


 避けなければいけない、が……。


 久我山は自身のこの考えは、とても変えられそうにないと思えてしまう。喜多見を同じ人間ではなく単なる機械と考える事は出来ないし、彼女を犠牲にして自分が助かるという選択肢を取る事など到底出来そうにない。


 そして……これは。この考えは。喜多見も同じだろう。彼女も自分の考えは変えられない。自身は機械であると考え、久我山を犠牲にするという視点にはどうしても至れない。


 それは好きだからだ。


 二人とも互いを愛しているから。存在して欲しいと切望しているから。


 愛が強いが故に、譲れない物がある。

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