決意 (6)


 薄暗い部屋の中。


 すうすう、と。穏やかな息が聞こえる。


 久我山の隣では喜多見が横になり、気持ち良さそうに寝ている。正確に言えば彼女曰く、電源を落としているのとも違う待機モードと言う状態に入っているらしいのだが――それが具体的にどう言った状態なのか、説明書をあまり読み込んでいない彼からして見れば、ただ寝ているようにしか見えない。


 久我山の喜多見と同じように横になり、ぼうっと彼女を見つめている。


 今日は色々な事があった。初めての物事を色々と経験し、色々な苦労もした。恐らく充足した一日だった。とても良い一日であった。


 こんな日が何時までも続けば良い、と思う。


 楽しい、から。




 ――それで、僕はこれからどうするんだよ?




「――ッ」


 湧き上がった思考に吐き気を催し、久我山は目を瞑って布団の中に潜り込んでいた。


 身体を丸め込み、じっとする。


 良くない状況。宙ぶらりの状態の久我山は過去と折り合いを付けるべきなのに、それが出来ていない。どうすれば良いのかを考えずに、ただ楽しい日が何時までも続けば良い、と考えてしまっている。これは単なる逃げだ。


 向き合わなければいけないのだ。


 答えを見付けなければいけないのだ。


「…………」


 寝る事に、する。


 何時か折り合いを付けなければいけない。


 だが、それは今でなくとも良いはずだ。今、この時じゃなくても良いはず。この楽しい時間の中じゃなくても……良いはず。


 思考を強引に止め、早く明日を迎える為に眠る事にする。


 明日はまた喜多見と一緒にするイベントがある。それを楽しもう。


 とにかく、楽しむ事に、しよう。

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