第32話 セオside 伝えたい。

「一勝一敗。引き分け。今は、もらっておくけど、もう一回戦う。それと、話をしたいから、後で、、その、、、俺の部屋来い。っ、これでいいか?」


 俺がこう言ったのは、気まぐれだ。


 それ以外のなにものでもない。


 その、、、話したいのも、気になっただけだ。


 クリスが俺にかまう理由が。


 俺は、自分にそう言い聞かせた。


 俺が言うと、クリスは、うなずいた。


 なんでかは、知るはずはない。


 俺は、顔がそっくりとか言われるけど、クリスとは、別の人だ。


 でも、あの言葉がフラッシュバックする。


 あの時のことを。


──『第二王子が王になるべきだ。』


──『第一王子に任せたくないな。』


──『本当に双子なの?』


──『顔しか似ていないじゃん。』


──『第一王子は、捨て駒じゃないの?』


──『優秀な弟にプレッシャーがあるなら、弟に勝てばいいだろう?』


──『なんでできないのさ?第二王子は、できたんだよ。』


──『王は、クリスに任せたい。セオは、無理だろう。』


──『そうだね。セオの下には、就きたくない。』


 身近な人の言葉だった。


 俺とクリスに勉強を教えていた教師。


 俺の使用人。


 たくさんだ。


 父上も。


 クリスも。


 信用できない。


 裏で何言っているかなんて、わからない。


 母上と執事しか、、、信用できない。


 ねえ、なんで?


 婚約者は?



──クリスが1番なんだろう?



 ロイ、ルイス。


──友達って、俺が思っているだけだろう?

  どうせ、クリスに仕えるのだろう?

  俺に勝ってイキっているんだろう。



 母上、俺の執事。


──絶対、味方だよね?

  俺、知っているよ。

  母上の不倫。

  執事が国のお金とっていること。

  信用していいの?



──『味方だよ。』


 そう言って、裏切る。


 あの子がそうだった。




 頭がいたい。


 どうせ。


 俺は、第一王子。


 どれだけ言っても目上の人。


 俺に砕けた話し方は、してくれない。


 クリスにはするのに。


 そうだった。



────『おまえには、人望がないんだろう?』



 前に、言われたな。


 あの子は、今は、大丈夫なのかな。


 なんでかな、頭がもっと痛くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る