第31話 謎。

「セオ、決闘しよう。俺が負けたら、この前の腕時計やる。」


「は?あの、隣国との交流でもらったひとつしかないやつ?俺がこの前負けたからおまえが持っているんだろ?なんでだよ?」


「この前は、俺が得意な勉術でしょ?だから、セオの得意な剣術でも戦いたいなって。」


 勉術とは、勉強のことだ。


 どっちの言い方もする。


「わかった。おい、ロイ。審判しろ。」


 俺の名前を覚えられている?


「わかりました。では、始め!」


 お互いに剣を振るう。


 セオが勝つな。


 クリス様は、頭脳戦では、勝てるだろう。


 長期戦に持ち込みたいようだが、セオの攻撃は速い。


──クリス様、負けかな。


 そう思ったとき、クリス様が倒れた。


 セオがクリス様の肩の上辺りに剣を止めている。


「勝負あり。セオ様の勝ち。」


「─────────────────?」


 セオがクリス様に耳元でなにか言った。


 クリス様は、うなずいている。


 何を話したんだろう。


「ロイ、審判してくれてありがとう。」


「いえ。大丈夫です。」


 セオが素直になったのだろうか。


 そう言って立ち去った。


 セオの中でも何かが変わったのだろうか。


「ロイ、ありがとう。」


 クリス様が突然後ろから言ってきた。


「なんのこと?」


 俺は、察しているように見せて言った。


「セオと話す。言いたいこといっちゃおうかな。」


 クリス様がいたずらっ子ぽくでも、決心を決めた顔で言った。


「がんばれよ。」


──


 俺は、寝る前に、頭のなかを整理する。


 今日、たぶんクリス様とセオが話す。


 で、明日、セオが家に来る。


 そして、いい感じにレイナと話させたら、俺は、ヒロインと会う。


 ヒロインとの出会いイベントは、ヒロインが引ったくりと会い、そこでセオと会うことで発生する。


 俺は、セオの役割を取ろうと思う。


 ちなみに、セオはクリス様と喧嘩をして、勉術から抜け出してヒロインの近くで食べ歩きをしたり、遊んでいたらしい。


 俺は、明日がんばることを誓って、眠りに落ちた。

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