買い物。

 あの後、ハンバーグを作ると意気込んだものの、アタシは冷蔵庫がすっからかんだったことを思い出した。家にあるのは安いカップラーメンしかない。仕方がないので黒澤と買いに行くことにした。


「黒澤ー、ハンバーグの材料ないから買いにいこー」

「……行かない」

「え?」

「……行かない」

「………」


 コイツ…


「ハンバーグ食べれないよ?いま家にカップラーメンしかないし…」

「カップラーメンでいい」

「…黒澤って普段何食べてる…?」

「……カップラーメン…」


 うん!不健康!

 アタシは黒澤を羽交い締めして部屋から引きずり出そうとすると黒澤が両手を思いきり振って抵抗の意を見せる。


「ちょっ!朝比奈さん!?」

「部屋にいたら不健康!材料買いに行くよ!」

「わ、わかった!わかったから離して!…ひゃ!アンタどこ触ってんのよ!」

「は、はぁ…?ちが、今のは…」

「朝比奈ってほんっと変態!最低!」

「だから違うってば!もー!!」


 結局、家を出たのは10分後だった。ほんと黒澤しつこい…。

 ちなみに、黒澤のは…小さいけど柔らかかった。






 アタシたちは家から歩いて5分くらいのスーパーマーケットに来ていた。

 ハンバーグに必要なものをカゴの中にぽんぽん入れていく。後ろをちらと見ると、黒澤は黙ってアタシについてきているようだ。…俯いているけど。

 黒澤の、その、胸を触ったのは許して欲しい。あれは事故だから…だ、大体外に出ようとしない黒澤が悪いんだから!

 ……駄目だ、未だに腕に黒澤の感触が…って!ほんとなに考えてんだアタシ!

 アタシはぶんぶんと頭を振って雑念を消す。


「…朝比奈さん?顔赤いけど…?」

「んなっ!?な、なんでもない!なんでもないよ!」

「……?」


 うう、ほんとアタシどうしたんだろ…。





 …よし!必要な材料は入れ終わったはず…アタシはカゴの中を見る。すると、山盛りになった食材の上に、入れた覚えのないチョコレートが置いてあった。

 ………。


「…黒澤~?」

「…ッ!いいじゃん…お金だすし…」

「…まぁ、いいけど…黒澤ってチョコ好きなの?」

「…好き、だけど」

「へぇ~、黒澤って和菓子しか食べて無さそうだと思ってた」

「…私は朝比奈さんのなかでどういう人物なの…?」


 レジでお金を払った後、二人で袋に食材を詰め込んでいく。結構、高かったな…。うう、さらばアタシのお小遣い。そんな暗い想いも、食材と一緒に袋に詰めておさらばだ。

 スーパーを出て、家に帰ろうとするが、袋が重いのか、黒澤が息を切らしながら頑張って運んでいる。相当きついらしく、がさがさと袋が揺れている。あーもう!


「黒澤!袋貸して!」

「え?…でも、朝比奈さん二つ持ってるし…」

「いーの!重たいんでしょ?アタシが持つって!」

「…ありがと」


 黒澤から袋を受けとるとき、少し手があたってしまった。何か言われると思い黒澤の方を見たが、無表情だったのでアタシは安心して前を歩いた。


 だから気付かなかった。黒澤がちょっぴり嬉しそうに、アタシの手が当たった部分を撫でているのを。


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二人で一つ。 たまごやき @AkitaGaku

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