第25話 驚愕

 収穫祭は終わりに近づいていた。

 園内の保育園の子どもたちが、お散歩がてら近くの公園に行くというので一緒について行った。

 子供達を乗せる大きな柵付きの台車を桜木武士がゆっくり押す。

 帽子を被った園児たちが可愛い。わいわい言いながら近くの公園で遊んだ。

 砂場で穴を掘りながら桜木武士はまた園児たちによじ登られている。


 しばらく遊んでそろそろ帰ろうとみんな台車に乗り込んだが、ミユちゃんという女の子が台車に乗るのを嫌がった。

 どうしても嫌だと駄々を捏ねるので私が手を引いて台車の後ろを一緒に歩いた。

 ミユちゃんはご機嫌で、よくわからなかったが何か一生懸命お話ししていた。うんうんと聞きながら歩いていると園児の台車から少し遅れてしまった。

 

 まあ良いかゆっくり行けばと思った時、ミユちゃんが私の手を振り解いて走り出した。

ちょうど横断歩道でとっさに、

「走ったらアカン!」

とミユちゃんを捕まえた時、左折車がこちらに突っ込んで来た。

 危ないっ!とミユちゃんを抱き抱えて車に背を向けた。

 衝撃があった。身体が地面に倒れ込む。

 ミユちゃんを下敷きにしない様、必死で抱えたミユちゃんが上向きになる姿勢に身体を捻った。


 気がつくと誰かの腕の上に頭を乗せた腕枕の状態で地面に寝転んでいた。

 ミユちゃん!と腕の中のミユちゃんを見る。ミユちゃんはキョトンとしたまま私と誰かの身体に挟まれていた。泣いていない。怪我はしていないのか…

 安心して横を見ると桜木武士が目を閉じて倒れている。

 頭の中が真っ白になって動けなかった。

 ミユちゃんの小さい手が桜木武士の頬を撫でた。

 桜木武士の瞼が薄っすら開く。

「桜木君……」

 声が掠れて震えた。

 桜木武士は私を見てからミユちゃんを見て薄っすら微笑んだ、様に見えた。

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