第3話 戦場 (小学校)
「ユカが高橋くん好きって知ってるよな」
5年のクラスの女子五人に囲まれてそう言われた。
「知らんけど……」
答えると、信じられへん、何その態度と口々に責められる。
知らんもんは知らん。勝手に周知の事にされても、そもそもアンタらと喋るのなんか挨拶ぐらいやん。
「高橋にすり寄るん やめーや」
女子の一人が睨みながら詰め寄った。
「すり寄ったことないけど」
と返すと、しらじらしー とまた口々だ。高橋くんに言えば、という台詞は幼稚園の失敗で懲りていた。
「高橋くんてユカちゃんのこと好きなん?」
と質問した。そもそも当のユカちゃんがここにいないのは何故だろう。
「アンタ サイテーやなっ!」
女子の一人がそうなじると、そうだそうだと言わんばかりに周りの子もうなづく。
どの辺がサイテーなのかわからなかった。
「私から高橋くんに話しかけたことないけど」
更に言うと肩を突かれた。
「可愛いからって調子のらんときっ!」
絶対に調子にのれなさそうな女子が鬼の形相で食ってかかる。
「どうしたら良いん?高橋くんがなんか言うて来ても無視しとけば良い?そしたら高橋くんはユカちゃんを好きになんの?」
女子たちが唖然とした顔で私を見る。
そこへユカちゃんが走って来た。
「みんなやめて、そんなんせんとって」
泣きながら私を取り囲んでいる女子をかき分ける。
「石田さんごめんな、こんな事やめてホンマに」
泣きながら女子たちに縋りつくと、女子たちはユカちゃんの背中を摩りながら振り向いてコチラを睨みつつ散っていく。
女子が散った視界の先に、ランドセルを背負ったままでこちらを見ている高橋くんの姿が見えた。
あーなるほど。高橋くんが登校して来たから慌てて良い子アピールした訳ね……
ユカちゃんは女子に囲まれて、机に座り顔を両手で押さえて泣いている。涙が出てないのを隠しているのかも知れない。
女子 こわー 男子の声がする。
男子にとって怖いのは、私に詰め寄った女子達なのか、ユカちゃんなのか、それとも私なのか、全員か?
今更何を言うとんねんと呆れる。
男子はアホだ。なのにいつも男子のせいで、私が女子から責められる。
自分の席に戻りながら、小学校のこのクラスでも友達は出来そうにないなーと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます