第3話 呪い

 その帰り道、電車内での事である。学校の知り合いからメッセージアプリにカラメッセージが届く。


 すると、カラメッセージの送信が表示される。


????


 なんだ、これは?


 ズシ!!!


 突然、体が重くなった。まるで呪いでもかかった気分だ。


 美紀にもカラメッセージを送信したようだ。嫌な気分だな。でも、対処の仕方が解らないし。


 私は電車の車内の椅子に座り、手のひらを眺める。その手のひらからは落ち着きが無い様子が感じられた。


「君は呪いを信じるかい?」


 太太がスマホの中から話かけてくる。


「えぇ、信じるわ、この世界には悪意が満ちている。呪いが有っても不思議ではないわよ」

「そうですねん。イヤ……これ以上は止めよう」


 すると、太太はスマホの画面の中で寝てしまう。


『くくくっく……』


 謎の声が頭をよぎる。私は早く家に帰りたいと、そんな気分で車窓を眺める。


 週末、私と美紀は駅前の書店に来ていた。


「美紀さん、参考書コーナーに行きましょうよ」

「はい、ちょっと待って、欲しい小説があるの」


 美紀は小説コーナーで固まっている。私は少し距離を取り雑誌コーナーに行く。


 ふと、振り返ると。美紀がハードカバーの小説をバックに入れる。


 万引きだ!


 私は迷った末に美紀の腕を掴んで店員さんの前に行く。


「ごめんなさい、私の連れが万引きをしました」

「え?ぇ?」


 店員さんは戸惑った様子でいる。これが問題になったら停学?ひょっとしたら退学かもしれない。


「今度、からは絶対に止めてよ」


 美紀が本を返すと書店から出される。


「わ、私……」


 美紀は泣き崩れてしまった。それからである、私と美紀が親友になれたのは。


 そうこれが『ニンゲンのトモダチ』であった。


 その夜、私は関係の薄い知り合いのメッセージアプリの登録を削除していた。美紀が『ニンゲンのトモダチ』の親友になれたのだ。挨拶替わりに交換した登録を削除作業することにしたのだ。


 ホント、友達が居ないとは思っていたがこんなにも少なくなるとは。


 さて、美紀からのメッセージは何時くるのかな?


「君は楽しいそうですねん」


 太太が私の部屋に引いた布団の上から声をかける。


「ショタには分からないでしょうけど、私は幸せの絶頂なの」

「僕は君に興味が有って一緒にいるけど幸せでないのかい?」

「当たり前でしょ、ショタだもの」


 すると、太太は黒いシルクハットを手でグルグル回し始め語り出す。


「この世には呪いのネットワークなるモノが存在するですねん。呪いが入力されると、呪いが溜まり、更に繋がっている相手の全てに出力する。そして、出力先の相手は呪いが入力されて呪いが溜まり、また、繋がっている相手全てに呪いを出力するですねん」


???


「ショタ!難し過ぎるよ」


 わたしはバカだから理解できないでいると。


「しょげるでない、普通は理解できないですねん、簡単に言えば繋がりの多い人ほど呪いが溜まっていくですねん」

「もう、寝る!」


 私が布団をかぶると、太太もシルクハットを置くと寝てしまう。

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