第2話 『ニンゲンのトモダチ』

 教室に帰ると太太はスマホの中に入り、コンビニで買ったおにぎりをハムハムと食べている。


 何処の育成ゲーだと勘違いするほどだ。イヤ、おにぎり代がかかっているので育成ゲーだ。


 おや?太太の着物が少し着崩れている。セクシー路線に転換か?


「おっと、これは失礼、僕の貞操が危ないですねん」


 私はスマホの電源を『ブチっと』切ると昼食に戻ると普通に食べ終わる。


 さて、美紀はどうしているのだろう?少し探すと机に向かいカツカレーを食べている。女子にしてはガッツシと食べているな。私は美紀に近寄り話しかけることにした。


「美味しそうですね」

「はい、朝ご飯が忙しくて食べられなかったので」


 それでもカツカレーは重いなと感じる。


「お友達に見られていると恥ずかしいです」


 美紀は照れながら私を見ている。


『お友達か……』


 私にも美紀が心を開いていないのが感じ取れた。


 放課後、私は校舎の屋上にいた。黄昏が闇に落ちる瞬間の事である。今日は母親が遅番のなで、ゆっくりと家に帰れる。


 父親?そんな生物しらね。そして、スマホを見ると美紀の名前が入っている。

『ニンゲンのトモダチ』ができた。


 しかし、少し寂しい、それは美紀が心を開いてくれないのだ。スマホでメッセージを送るが答えはいつも『ゴメン、忙しいの』であった。


「ねえ、太太、私、美紀への接し方が間違っているのかな?」

「僕は願いを叶えることが出来きる神社の御神体ですねん。でも、癒す力は無いですねん」


 そうか……美紀は病んでいるのか……。


 私は癒すメロディーで検索をかける。


 ダメだ、数が多すぎる。


 この世界は情報が溢れすぎている。それでいて、偏った情報は沢山得られる。


 つまり、私と言う存在が癒すメロディーに触れていなかった証拠だ。


 あああ……歯がゆい。


 そうだ!


 今度、駅前の書店に誘ってみよう。すると、げ、母親からのメッセージだ、今は高校にいるから怒られないが。早く帰るように言われた。少しは子離れして欲しいものだ。


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