イチモツをゾンビに噛まれた男

あめがやまない

イチモツをゾンビに噛まれた男

ジャック

「クソッ!いくらなんでも多すぎる!」



ブレッド

「大丈夫かジャック!」



ジャック

「あぁ!大丈夫…」


(ゾンビに腕を噛まれる)


「ぐぁぁぁぁ!腕がぁ…!」



ブレッド

「ジャック!このクソ野郎!うらッ」


(ゾンビをなぎ倒す)


「行こうジャック!俺が担いでやる!」



ジャック

「す、すまない…」



ブレッド

「にしても酷い傷だ…早くしないと。」


(逃げ切った後)


「はぁ、はぁ、ここまで来ればとりあえずは大丈夫だろう。」



ジャック

「う…うぅ…」



ブレッド

「ジャック。痛いのはすごく分かる。

分かるんだ。だが、苦しんでいる場合じゃない。」



ジャック

「あ、あぁ。分かってる。

早く、肉を削ぎ落とさないと俺がゾンビになっちまうからな。」



ブレッド

「これを使ってくれ。怖いかもしれないが、応急処置は任せてくれ。」



ジャック

「へへ。ゾンビになるくらいなら、簡単なことさ。」



ブレッド

「すまない…何も出来なくて。」



ジャック

「そんなことねーよ。やるぞ…!」


(ゾンビに噛まれた腕の肉を削ぎ落とす)


「うぐああああああああ!んぐおおおおおお!」



ブレッド

「ジャック!」



ジャック

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。これで…大丈夫…だよな。」



ブレッド

「あぁ!よく頑張ったジャック!

すぐに手当をする!じっとしててくれ!」



ジャック

「あ、ありがとう…。」




ブレッド

「にしても、酷い有様だな。」



ジャック

「アマンダは大丈夫だろうか…」



ブレッド

「君の愛人なら簡単には死なないだろうよ。」



ジャック

「それもそうだな…はは」



ブレッド

「僕は独り身だし、ガールフレンドもいない。

両親も既に他界してるからな。失うものなんてないよ。」



ジャック

「おいおい、そんな悲しいことはよせよ。

少なくとも、俺はお前が一番の親友だと思ってる。」



ブレッド

「あはは。親友なら、君の愛人を僕にくれよ。

ガールフレンドがいないんだ。」



ジャック

「冗談言うなよ。」



ブレッド

「面白いジョークだろう?」



ジャック

「あぁ、笑えないジョークだ。」



ブレッド

「そりゃ、どうも。」


(ゾンビが追っていたことに気づく)


「…!まずい、場所がバレちまったか!」



ジャック

「ブレッド。お前はここにいろ。俺がやる。」



ブレッド

「ジャック何を言ってるんだ!」



ジャック

「頭に血がのぼってるんだ。おそらく数も一体だろう。ぶち殺してやるよ。」



ブレッド

「おいジャック!今は安静にしておくんだ!早く逃げよう!」



ジャック

「俺の気がすまねーんだよ!うおおおお!」



ブレッド

「おいジャック!待て!」



(ゾンビと戦うジャック)



ジャック

「オラッ!クソゾンビ!さっきはよくも俺の腕を!クソが!オラぁ!」



ブレッド

「ジャック!」



ジャック

「大丈夫だブレッド!安心し…」


(ゾンビに噛まれる)


「うぐあああああああああ!」



ブレッド

「ジャック!この野郎!オラッ!オラッ!」


(ゾンビは倒れる)


ブレッドお

「い!ジャック!しっかりしろ!」



ジャック

「うぐあああああ。」



ブレッド

「いったい、どこを噛まれて…」



ジャック

「うぐあああああ。」



ブレッド

「と、とりあえず場所を移そう!」



(移動後)



「ジャック!意識はあるか!」



(悶え苦しむジャック)



ジャック

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」



ブレッド

どこを噛まれたか、分かるか?



ジャック

「あぁ。俺の…リトルジャックだろう?」



ブレッド

「そうだな。リトルジャックだ。」



ジャック

「はぁ、はぁ、クソ。

よりにもよって俺のリトルジャックを噛みやがって。」



ブレッド

「ジャック。痛いのはすごく分かる。

分かるんだ。だが、苦しんでいる場合じゃない。」



ジャック

「あぁ。そんなこと分かってる。」



ブレッド

「これを使ってくれ。怖いかもしれないが、応急処置は任せてくれ。」



ジャック

「ちょっと待て。」



ブレッド

「ど、どうした。早くしないとゾンビになっちまうぞ。」



ジャック

「なんでお前はさっきと同じノリなんだ?」



ブレッド

「え?」



ジャック

「俺のリトルジャックだぞ?」



ブレッド

「あぁ。分かってる。だから早く」



ジャック

「無理だろ!無理だろ!なんですぐ出来ると思ってるんだよ!」



ブレッド

「だって、さっきすぐに腕の肉を切ったじゃないか。」



ジャック

「腕だったからな!だが今回はリトルジャックなんだ!

男の生命線だぞ!切れるわけないだろ!」



ブレッド

「だけどジャック。君はさっき、ゾンビになるくらいなら簡単なことさって言ってたじゃないか。」



ジャック

「待て待て。規模が違う。事の重大さが違うんだ。足ならいい。腕ならいい。腹でもいい。だが、リトルジャックは別だろう。」



ブレッド

「ジャックは、ゾンビになりたいのかい?」



ジャック

「そういうわけじゃない!でも…決めきれないんだ。」



ブレッド

「分かったよ。」



ジャック

「どうしたんだ。」



ブレッド

「僕が切ってやるよ。」



ジャック

「待て待て待て!やめろ!やるなら自分でやる!

リトルジャックとのお別れは自分でやる!」



ブレッド

「じゃあどうしたらいいんだよ。」



ジャック

「俺に…覚悟さえあれば。」



ブレッド

「なら、僕が説得しよう。」



ジャック

「どういうことだ。」



ブレッド

「ジャックが安心してリトルジャックを切れるように、説得する。」



ジャック

「いったいどうやって。」



ブレッド

「時間がない。始めよう。

リトルジャックを切らなかった場合。君はどうなる。」



ジャック

俺が、ゾンビになってしまう。



ブレッド

「そうだね。ジャックはゾンビになってしまう。

つまり、死ぬんだ。ゾンビになった君は、もはや死んでいるのと一緒だ。」



ジャック

「あぁ。」



ブレッド

「じゃあ、リトルジャックを切った場合。君はどうなる。」



ジャック

「生き残る可能性がある。」



ブレッド

「そうだね。生き残るかもしれないんだ。

ジャック、君は生きたいだろう!死にたくないだろう!」



ジャック

「当たり前だ。死にたくない。」



ブレッド

「じゃあ切ろう!さぁ!リトルジャックを切るんだ!」



ジャック

「だから無理だって!」



ブレッド

「なんでさ!」



ジャック

「そんなこと分かってるんだよ!分かってても出来ないから困ってるんだ!」



ブレッド

「僕ならすぐに切ると思うんだけど」



ジャック

「お前には失うものがないからな!」



ブレッド

「生きたいなら早く切るべきだ!」



ジャック

「だから、そういうことだけど、そういうことじゃないんだって!

考えたことあるか!?お前のリトルブレッドがない生活を!」



ブレッド

「そんなのあるわけないだろう。」



ジャック

「そうだよ!俺たちについてるリトルジャックや、リトルブレッドがあるのは当たり前のことだったんだ!この当たり前を失ってしまう恐怖がわからないのか!?」



ブレッド

「でも!ゾンビになりたくないんだろう!」



ジャック

なりたくないよ!それでも…できないくらい恐ろしいことなんだよ!」



ブレッド

「…分かった。」



ジャック

「なんだ?」



ブレッド

「痛みを小さくしよう。」



ジャック

「どういうことだよ。」



ブレッド

「相対的に痛みを小さくするんだ。」



ジャック

「は?」



ブレッド

「まぁ聞いてよ。足を切り落とすのは、太いし時間もかかって痛いだろう?」



ジャック

「そうだな。」



ブレッド

「でもリトルジャックは足みたいに太くないから、痛みは一瞬だよ!」



ジャック

「そんなので納得するわけないだろ!」



ブレッド

「出産の時の痛みより全然楽かもしれない!」



ジャック

「そんなの知るか!俺は切りたくないんだ!」



ブレッド

「さっきは腕の肉を切り落としたじゃないか。

2回目なんだから上手く切れるよ。」



ジャック

「2回目で上手くいくほど器用じゃねーよ。さっきも言ったが、もう腕とか足とかいうレベルの話じゃないんだ!リトルジャックを!切断するんだぞ!」



ブレッド

「わ、わかってるよ!」



ジャック

「リトルジャック以外だったらどこでも切ってやるよ!どこだっていいさ!

けど…男として一番切りたくないところを嚙まれてしまったんだよ!俺の中で、リトルジャックは、最優先されるべき体の部位なんだよ!」



ブレッド

「どこの体の部分だって大事だよ!」



ジャック

「わかってる!腕はいらないとか、足はなくていいとか、そういう差別をしてるわけじゃない!だけど…リトルジャックだけは…なんか違うんだよ…。」



ブレッド

「どう違うんだい。」



ジャック

「あのなブレッド。リトルジャックを切断するってことは、痛みとか利害関係じゃないんだよ。」



ブレッド

「どういうことだい?」



ジャック

「ここ。気持ちなんだよ。世の男に聞いてみろ。

もしゾンビにあなたのロマン砲を噛まれてしまった時、ゾンビ化を防ぐために、すぐあなたのロマン砲を切り落とせますか?」って。

すぐには出来ないって答えるよ、きっと。世の男はそう答えると、俺は信じてる。」



ブレッド

「ジャック…。」



ジャック

「すまないなブレッド。決断するのが怖いんだ。情けないよ。」



ブレッド

「僕は…ジャックに生きてほしい。」



ジャック

「ブレッド…。」



ブレッド

「僕には失うものなんてないって言ったけど、ジャックを失ったら

僕は…僕は…。」



ジャック

「…。」



ブレッド

「アマンダにも会うんだ。彼女には君が必要なんだ。

だから、彼女のためにも、生きよう。」



ジャック

「ブレッド、ありがとう。」



ブレッド

「ジャック・・・。」



ジャック

「俺は、下らないことで悩んでたのかもしれない。自分のことなんてどうでもいい。人のために生きるんだ。そのために、俺はリトルジャックを切る。」



ブレッド

「ジャック、これを使ってくれ。怖いかもしれないが、応急処置は任せてくれ。」



ジャック

「あぁ、お前のためにも、アマンダのためにも。俺は生きる。」



ブレッド

「頑張れ!ジャック!」



ジャック

「リトルジャック…さよならだ。」


(ジャックはリトルジャックを切る)


「うぐあああああああああああ!」



ブレッド

「ジャック!!がんばれ!ジャック!」



ジャック

「うぐおおおおおおおおおおお!」



ブレッド

「切り落とせ!切り落とすんだ!ジャック!」



ジャック

「うああああああああああああ」


(リトルジャックはジャックの身体から離れた)



ブレッド

「ジャック!やったよ!ジャック!」



(痛みながら叫ぶ)



ジャック

「うぎあああああ!やっだああああああ!」



ブレッド

「よくやったよ!よくやった!すぐに手当てをしよう!

…くそ、こんな時にゾンビが…!」



ジャック

「あ、あぁぁ…」



ブレッド

「ジャック!このままじゃ僕たちやられちゃうよ。」



ジャック

「ど、どうすりゃいいんだ…。」



ブレッド

「ジャック…。」



ジャック

「な、なんだ。」



ブレッド

「リトルジャックを、ゾンビたちに投げるんだ。」



ジャック

「は?」



ブレッド

「やつらの餌としてリトルジャックを投げるんだ。

そして、時間を稼いでる間に逃げよう!」



ジャック

「俺の、リトルジャックが…餌に。」



ブレッド

「それしか逃げる方法がないんだ!少しでも時間を稼ごう!お願いだ!

ジャック!君のリトルジャックにすべてがかかってる!」



ジャック

「リトルジャック…。」



ブレッド

「やるんだ!ジャック!」



ジャック

「…今までありがとう。お前と過ごしてきた日々、絶対に忘れない。

愛してるぜ…リトルジャック。」


(ゾンビの群れに向かって投げる)


「俺のリトルジャックを受け取りやがれ!くそったれどもが!」



ブレッド

「よし!行こうジャック!僕が担ぐよ!」



ジャック

「あ、ありがとう。」



(逃げてる最中)



ブレッド


「はぁ、はぁ、はぁ。なぁジャック。」


ジャック

「どうしたブレッド。」



ブレッド

「君のリトルジャック。最後まで役に立ったじゃないか。」



ジャック

「はは…そうだな。」



ブレッド

「もう君に、リトルジャックはついてないんだね。」



ジャック

「あぁ。情けねーよ。こんなのジャックじゃない。」



ブレッド

「そうか…。」



ジャック

「アマンダ。俺の姿見て何て言うかな。」



ブレッド

「きっと幻滅するかもね。」



ジャック

「やっぱりそっか。」



ブレッド

「その時は、僕がアマンダを幸せにするよ。

僕にはリトルブレッドがついてるからね。」



ジャック

「おいおい、まさか人の愛人を奪うのか?」



ブレッド

「僕の親友なんだろう?それくらい、いいじゃないか。」



ジャック

「冗談はよせよ。」



ブレッド

「冗談じゃないよ。」



ジャック

「あぁ。笑えな…え?」



ブレッド

「僕は君と違って、リトルブレッドがついてるからね。」



ジャック

「お前…まさかそのために、俺のリトルジャックを。」



ブレッド

「面白いジョークだろう?」



ジャック

「あぁ、笑えないジョークだ。」



ブレッド

「そりゃ、どうも。」

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