間章 強化期間
第26話 暗躍する黒/躍動する青
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次章へ向けてほんの少しだけ投稿です。
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影の正面に透明な板が浮かびあがった。
『ごめん、本体もやられちゃったみたい』
「残りの分け身は?」
『賢者、王女、騎士団長の三つ。全員自覚して、王国に回収されてると思う。予備の騎士が急に消えたから、たぶん身鏡反応もバレてる』
「分け身の自滅は期待できませんか……」
板から発された声に、影は唸るように呟くと目をつむる。
「召喚の失敗もおそらく……まったく、賢者は厄介なことばかりしてくれますね」
一つため息を吐きだし、影は新たに一枚の板を呼び出した。
「経過は?」
『悪い時期に上手いことやられたヨ。流石にもう少し時間を置かないと駄目。死ヌ』
「なるほど……計画を継続した場合の成功確率は?」
『ンー……五割くらいかナ』
「分からないということですね」
『モトから不安定な計画だったジャン。文句言わないノ』
長考の末に出された答えに、影はガクッと肩を落とす。
普段から百分率で数字を弾き出し、なんなら無駄に少数第一位までこだわる彼女にしてはあまりにもざっくりとした回答だった。
「それは別にいいんですよ。分からないなら分からないと答えてくださいと、前にも言いましたよね?」
『言われてナイ』
「言いました」
『百パーセント言われてナイ』
「……もういいです。引き続き休んでいてください」
『分かっタ』
諦めたように板を消した影は、深くため息をつく。
「まあこのまま継続しましょうか。どうせ時間の問題ですし」
頭痛を堪えるように頭をおさえた影は、背もたれに体を預け、大きく伸びをする。
座り続けて凝り固まった体をほぐすように。
◇◇◇
「ハッ…………ハッ…………」
「サトル様、あと五周です。頑張りましょう!」
「っ……はい!」
「何ベラベラ喋ってんだ!一周追加!」
「ごめんなさぁい!?」
「いやっ……どうせまたっ……追加されるから気にしないで……」
「返事聞こえねぇぞ!一周追加!」
「「はい!」」
城の訓練場で、聡はひたすら走っていた。
隣にはラフな格好の王女様。
汗ひとつかいた様子もない彼女と共にエリックの
端的に言えば、聡は現在リハビリを行なっていた。
「……事情は大体分かりました」
「申し訳ございません……!」
「いやいや、しょうがないですよ」
分身達が旅立ってから二日経過したころ、聡は目を覚まし、すぐに駆けつけてきた担当医から自分が置かれている状況を説明された。
不変の呪い。
体の状態を保存するだけの、本来なら特に害のない呪術。
それが傷だらけになった聡の体に強固にかかっており、治療ができないらしい。
その代わりというのもなんだが、これ以上容態が悪化することもないため、森を走り回ったことで体のあちこちに負い、今も塞がっていない擦り傷や切り傷からの出血、化膿も抑えられているのは不幸中の幸いである。
めちゃめちゃ痛いが。
「先生、ちなみに筋肉はつくんですか?今の状態だと起き上がるのもかなりキツいんですけど……」
「……筋肉量を増やすことはできません。ただ、魔法の並行行使可能数を増やすか、魔力は増えるのでレベルを上げて身体能力強化の魔法の強化幅を底上げすれば、以前と同様の動きができるようになるかと」
「なるほど……」
試しに黄色の魔法陣を両手に浮かべ、ベッドの上で立ちあがろうとして……よろけて再びベッドに倒れた。
「あー、確かに立ってるだけでもキツいですね」
「賢者様……起きたばかりなのですから、しばらくは安静に——」
そこで、バーンッと。
医者の言葉を遮るように、部屋の扉が勢いよく開いた。
「エリックさん!?」
「おう、動ける格好だな。立てるか?」
「は、はい、立てますけど——ってうわ!?」
「行くぞ」
「はい!?」
ズカズカと部屋の中に入ってきた大男は、頷いた聡を肩に担ぎ上げ、部屋の窓に直行する。
そして窓を開け、飛び出した。
「な、何なんですか急に!?」
「身体のことは聞いたな?」
静かに屋根に着地したエリックは、上から聞こえてくる医者の引き止める声を無視して走りだす。
「分かっているだろうが、今のお前は寝てようが何していようが、今以上に体調が良くなることは無い。安静にしている理由がねぇんだよ」
「………………まさか」
エリックの言葉を混乱する頭で噛み砕くこと約五秒。
聡は盛大に顔を引き攣らせた。
「今から訓練ですか……?」
「おう」
「……起きたばかりですし、今日くらいは——」
「お前さ、俺の結界魔法で俺の顔面をぶん殴ったこと、覚えてるか?」
「あ」
そうだ。
王女様を説得する際に、アドリブで自分の顔に岩をぶつけてエリックの
しかし待ってほしい。
あれのおかげで聡が本当に崖っぷちだというアピールと、王女様にすべて任せるという意思表示を同時に行い、王女様の背中を押すことができたのだ。
しかも敵を困惑させて時間を稼げたし、
普通に枕元まで近寄られて焦った末の
まあ、本当に死を覚悟して、どうせ死ぬなら訓練で頭を叩かれた分の仕返しをしとこう、という考えが無かったかと言われれば嘘になるが。
「正直に言え。個人的な恨みを込めてやっただろ」
「そんなわけないじゃないですか」
「嘘だな」
「根拠は何ですか根拠は!勘で済むなら騎士はいらないんですよ!」
「俺の魔法の発動条件は致命的な攻撃を受けることだ。手っ取り早く確実に発動させるんなら、顔より死ぬ確率の高ぇ頭とかデコに当てるほうがいいじゃねぇか。なんでわざわざ鼻を狙ったんだよ」
「……当たれば一番痛いかなって」
「よし覚悟しとけよお前」
終わった、と目をつぶる。
大抵の問題を力押しで解決しようとするものの、別に頭が悪いわけではない近衛騎士は、ドスの効いた声を出しながらも口の端を僅かに吊り上げるのだった。
「というか、防げなかったエリックさんも悪くないですか?なまりました?」
「うっせえ」
◇◇◇
「あれ?奇遇ですね。折角ですし、ご一緒させていただいてもいいですか?」
「えぇ……?」
訓練場に到着した聡に続いて訓練場に入ってきたのは、金に煌めく長髪を後ろでまとめ、半袖の青いトップスと濃紺のショートパンツ、そして黒のレッグカバーという動きやすい格好に着替えた第一王女……カトリーナ・テレーゼ・エリステラ王女だった。
タイミング的に、聡が起きたという報告が来てからすぐに着替え、ここに直行しないと間に合わない。
というわけで、訓練が行われると事前に知っていて止めなかったことがしれっと確定したのだが、王女様はあくまで偶然という風を装いながら、見本のような笑顔で言葉を紡ぐ。
「魔力がだいぶ回復して体調も良くなってきたので、なまった体を元に戻したいんです」
「それ別に僕と一緒じゃなくても……いやまあもちろんいいですけど」
エリックに担がれている最中に王女様が想像以上にアウトドア派だったという情報をサトルから
ちなみに向こうでは三人仲良く山菜採りをしていた。
「おいコラ、なにダラダラ喋ってんだ。さっさと位置につけ」
エリックには既に話が通してあったようで、一応近衛騎士の団長であるはずの男は何食わぬ顔で聡を急かす。
そのあまりにもスムーズな話の進み方に、になんだこの用意周到な感じは、と首を捻りながらも賢者はスタート地点に立ち、大人しく黄色の魔法陣を四枚浮かべた。
そして——
「用意、初め!」
——訓練が始まった。
◇◇◇
「ハッ…………ハッ…………」
一つわかったことがある。
今の聡は、走ろうと思えば魔力が切れない限りいくらでも走ることができるようだ。
その理由は、不変の呪いにあった。
「ハッ…………ッ…………」
この呪いは、傷や内臓の状態だけでなく、体内のエネルギーや各種化学物質の量なども勝手に補填して『今』の状態に保ち続けるらしい。
ここだけ聞くとメリットしかないように聞こえるが、もちろんデメリットも幾つかある。
一つは、その効果の代償として聡の魔力を勝手に消費する事。
どうやら魔力は不変の呪いの対象外である上に呪いの『燃料』のような役割をしているらしく、二時間しか走っていないにも関わらず魔力は既に半分を切っていた。
魔法陣を二枚しか並列起動できないものの、半日以上好き勝手に魔法を使いながら訓練をしてまだ魔力に余裕があった頃と比べると、身体強化魔法を四枚起動していることを差し引いても明らかに魔力の減る速度が早いのである。
ちなみに普通の不変の呪いは魔力も呪いの対象になっており、『燃料』も術者の魔力らしいので、この呪いの特異性に足を引っ張られている形だ。
医者からおおまかな説明を聞いた時に魔法が使い放題になったと思っていたが、そう都合良くはいかないらしい。
「ハッ…………ハッ…………」
「水どうぞ!」
「ありがとう、ございますっ……」
そして今の時点で判明したもう一つのデメリットは、すぐに息が切れるということだ。
ここでやはり、最悪な状態の時に呪われた影響が出ていた。
今の聡は森での鬼ごっこが終わった直後の、酸素需要がひっ迫した状態だ。
そんな時に全力で動いているため、体内の酸素需要は許容できないほどに増大する。
結果、現在進行形で消費される酸素は呪いの効果で随時補填されるにも関わらず、酸素が必要であると脳が誤認し、聡に対して必要以上に呼吸を強制させる……のだろう、たぶん。
王女様がどこからか取り出したボトルに入った果実水を口に含みつつ、文系の聡は知ったかぶりの知識を駆使して雑にそう結論づけた。
「まだ余裕そうだな。三周追加!」
「「はい!」」
無茶な動きによって身体のあちこちの外傷から悲鳴が上がり、息も上がってしまっているものの、いくら走っても今以上に苦しくなりそうな気配はせず、なんなら
想像通りの苦しみを代償に、想定通りの大きなメリットを得ることができたと前向きに考えようとする賢者は、笑みを浮かべようとして——身体のあちこちにある外傷からくる刺すような痛みに顔を歪めるのだった。
◇◇◇
それからしばらく走り続け、魔力残量が四割を切った頃。
「団長。会議のお時間です」
「あん?もうそんな時間か。サトル!今日はもう終わっていいぞ!」
「はい!ありがとうございました!」
訓練が唐突に終了した。
経験則から最低でもあと二時間は続くと思っていた聡は、拍子抜けしながらも走る速度を落とし始める。
「あと俺が戻ってくるまで、お前はカトリーナ王女の側にいとけ」
「え?は、はい!」
「それと、後は頼んだ」
「……はい?」
こちらに意味深な視線を送ってきたエリックの言葉に、立ち止まって何のこっちゃと首を傾げる聡。
何も察していないように見えるその態度を鼻で笑ったエリックは、そのままエリックを呼びに来た部下らしき女性と共に訓練場から去っていった。
「私も少し席を外しますね。すぐ戻ってくるので、休んでいてください。ここなら安全ですので」
「分かりました」
そう言って訓練場から出ていく王女様の背中を見送り、その場にゆっくりと座り込んだ聡は、早速ステータスを開く。
そして、乾いた笑みを浮かべた。
――――――――――――――――――――――――――――――
伊藤 聡 Lv:31
適性職業:賢者
生命力:1
魔力 :325
攻撃力:1
耐久力:1
精神力:215
持久力:1
敏捷性:1
【能力】
翻訳LvMAX
火魔法Lv5
水魔法Lv6
風魔法Lv9
土魔法Lv11
雷魔法Lv1
光魔法Lv3
闇魔法Lv1
結界魔法Lv6
瞬間記憶Lv7
思考加速Lv10
速読Lv4
暗記Lv6
軽業Lv6
苦痛耐性Lv2
――――――――――――――――――――――――――――――
「苦痛耐性……」
拷問を受けた者やこの国の騎士が発現することが多いというスキルを得たことに苦笑しつつ、早くレベル上がれ〜と念を送りながらステータスボードを消す。
そこへ、王女様が水が補給されたボトルとタオルを二枚持って帰ってきた。
「お疲れ様でした。汗はこれで——掻いていないみたいですね」
「あ、ほんとだ。呪いの効果ですかね?」
「……そうかもしれませんね」
王女様の顔が一瞬強張る。
それを体の様子を確認する仕草をしつつ横目で盗み見ていた聡は、王女様に向き直ると穏やかな笑みを浮かべた。
「……そのタオル、頂いてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
タオルを受け取り、額に向けた左手に青い魔法陣を浮かべる。
そして、サッカーボール大の水を思いきりぶつけた。
「サトル様!?そんなことをしたら傷に——!?」
「大丈夫ですよ。包帯を巻いてるので」
笑いながら髪と顔を軽く拭く。
包帯も魔法抵抗を持っており、魔法の水に対して強力な撥水性を発揮するのだ。
「それでも濡れたままなのはダメですよ!た、タオルを——」
「あーさっぱりした。王女様もいりますか?」
「え?あ、はい……はい?何を——」
タオル一枚では足りなさそうな聡の濡れ具合に、タオルをもう一枚取ってくるか、それとも自分の汗を拭いてしまった手元のタオルを渡すかで迷って思考を止めたまま反射的に返事をした王女様に対し、聡は悪い笑みを浮かべる。
「ウォーターボール」
「へぐっ!?」
そして、直径二メートル弱の青い魔法陣を浮かべて王女様の頭に容赦なく大きな水の玉を落とした。
「王女様。お気持ちは嬉しいですけど、あまり気負いすぎないでください。パッと見は痛々しく見えるかもしれませんが、わりと元気なので」
面倒なことに、魔法の水に対してはこの世界のタオルも撥水性を発揮するため、そもそもタオルを渡されてもあまり意味がない。
したがって、聡を乾かすなら魔法の風や火を使うことが正解なのだが、王女はタオルでどうにかしようとして慌てていた。
世界中からさまざまな人材が集まる学園を、なんと首席で卒業したというエリート中のエリート様が、だ。
要は、今の王女はサトルに対する
今の一連の慌て様と、訓練場に来た時から続いている台本でも読んでいるかのように棒読み感が残る話し方、そして訓練中や今もテンションが明らかに
「……」
「……とか口で言われても、納得できませんよね?たぶん。責任感強そうですし」
指で頬を掻いて苦笑する聡に、王女様は呆けたまま黙り込む。
「なので、仕返しです。この世界に僕を喚んだ責任とかその他諸々は、今のでチャラにしましょう」
エリックが聡に託したのも納得である。
これは、当事者間でしか解決できない類の問題だ。
外様がどう言葉を尽くしても、本当の意味で彼女を納得させることはできない。
しかし、神でも仏でも人生経験豊富な先生でもないただの思春期青年もまた、まだ関わりが薄い相手にどのような言葉をかければいいのか分からなかった。
「……分かりました。お気遣いありがとうございます」
実際に、どうにかこうにか言葉を捻り出した今も王女は作り笑いのままである。
だから。
「えーっと、それじゃあ」
重い空気を消すついでに、関わりを深めることにした。
「親睦を深めるために鬼ごっこでもしましょうか。遠慮なくかかってきてください」
唐突に浮かび上がる巨大な青い魔法陣。
「へっ?」
「ウォーターブラスト!」
「!?」
ドッパーンッ!と、直径五メートル程の水球を真正面へ指向性を持たせて破裂させたセクハラ野郎は、笑い声を上げながら両手に黄色い魔法陣を浮かべて脱兎の如く出口へと駆けだした。
取り残された水まみれの王女は、無言のままそれを見送り、ゆっくりとタオルに視線を落とす。
「……ダメですね、私。結局気を遣わせて——」
バシッと、何かを振り切るようにタオル越しに両の頬を叩き、ついでに顔と髪を雑に拭いて、タオルを勢いよく横に振った。
「さてと、追うのはいつぶりでしょうか」
広がりきった状態で凍ったように動きを止めた
それは、先ほどの訓練中に度々浮かべていた無理矢理作ったようなものでも、世間一般が想像する王女様が浮かべていそうな優雅なものでもない。
例えるなら、手強い獲物に遭遇した際にベテラン狩人が浮かべていそうな、不敵な笑みだ。
「逃しませんよ?」
幼少期に野生動物達を追いかけ回していた王女様は、残像をその場に残す勢いで走り出す。
「見つけました」
「っ!?ロックウォール!」
敏捷性でアストガルムとギリギリタメを張れる王女相手に鬼ごっこを挑んだ
「さて、お仕置きは何がいいですか?」
「で、できればグーパン以外で——あ痛ぁっ!?」
「あと、私の事を『王女様』なんて他人行儀に呼ぶのはいい加減やめてください」
「世界っ……揺れ……デコピンで……?」
「聞いてますか?」
「はい聞いてます!聞いてますから構えないでください!エリステラさん!?」
「……その、できればファーストネームで呼んでくださいませんか?」
「え?じゃあカトリーナさん、ですか……なら折角ですし、あだ名みたいな感じでカトリさんって呼びますね」
「リーナでお願いします」
◇◇◇
「何も言わずに二人だけにして大丈夫だったんですか?賢者様が帰還なさった時に、状態を耳に入れたカトリーナ様が倒れてしまったとかいう嘘みたいな報告が来てましたけど」
城の廊下を早足で歩くエリックに、少し後ろを歩く部下——白髪で耳の先が僅かに尖っている女性が話しかける。
その部下の憂いの色を帯びる言葉に、エリックは少し歩く速度を落とした。
「王女様も召喚のせいで魔力が枯渇したしんどい時だったからな。今は聡も起きたし、魔力もだんだん戻ってきてるってんで落ち着いてるらしいぞ?」
「何とぼけてるんですか。さっき見ましたけど、あの笑い方は無理してる時のやつですよね?」
「そうだな。んで、聡も王女様の違和感に気づいて戸惑ってたな」
「その状態で何も言わずに放置するとか鬼ですか……?」
くつくつと喉を鳴らしたエリックは、歩く速度をさらに落とし、ふと訓練場がある方向に目を向ける。
「確かに、大人がちょいとは出張った方がいいんだろうが……」
少し思考し、ガシガシと頭を掻いたエリックは再び前を向いた。
「どうせアイツなら上手くやる。気にすんな」
「……団長、賢者様を凄く信頼していますね」
「そりゃあな。誰が王女様を救ったと思ってんだ。あと、今回やらかした俺らが偉そうに口出しすんのも違ぇし」
「うっ……」
それに、とエリックはニヒルな笑みを浮かべる。
「野暮だろ?」
「まーたそれですか。すぐに邪推する癖、治したほうがいいですよ」
女性が呆れた声を上げた直後、訓練場の方向から微かに
反応し振り向く二人。
その視線を遮る建物の向こう側で、巨大な岩の壁が乱立し、水の球が空へと乱射され、それらを破壊し、避けるためにそこら中を跳び回っているのか、青と金のナニカが建物の上に見え隠れする。
「……野暮でしたね」
「な?」
顔を見合わせ、苦笑とドヤ顔を向けあった二人は、『青いなぁ』『ですねぇ』などとしんみり言い合いながら会議室へと歩いていった。
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