VSバーゲスト
下層最後の階層。
そこには..........黒く、禍々しい、一匹の巨大な犬がいた。
その空気を見た瞬間、体全体がビリビリと痺れる感覚に襲われた。
おそらく.......この感覚は、あの犬から放たれた殺意なのだろう。
..........このレベルの殺意を浴びたのは、久々だな。
紅葉「..............なるほど、このダンジョンの主がイヌなら、イヌ系のモンスターが現れても仕方がないってことね」
:ちょっ!?アレってバーゲストじゃねぇか!!
:あ!!本当だ!!
:マジか!!
:バーゲストって......世界中にダンジョンが出現して間もない頃に、ダンジョンに侵入してきた軍団を壊滅寸前まで追い込んだっていうモンスターだよな!?
:そうそう、しかもその事件以降、バーゲストの目撃情報が途絶えているから、撃退方法が全くもって謎なんだよ
:バーゲストがダンジョンの主なら、そりゃブチコボルトロードが中ボス扱いされるわな
:バーゲストってガチで居たんか.......
紅葉「バーゲスト.............それがあのモンスターの名前なんだね」
バーゲスト「グルルルルル.....」
私がそう言うと、バーゲストは私に向け、大きな歯を見せながら威嚇した。
紅葉「.......そっちも戦う気満々ってわけね」
ニヤリと笑いながら、私がそう言うと
バーゲスト「ワォォォォォォン‼︎」
バーゲストは、ダンジョンが揺れる程の咆哮を上げた。
:強者VS強者
:咆哮だけでダンジョンが揺れてんだけどぉ!?
:これこそマジもんの化け物だわ
:この配信をしてるDチューバーも化け物だけどな
:.......怪獣大決戦かな?
:紅葉ちゃんが怪獣扱いされてて草
:いや、だって.............ねぇ?
:あのバトルスタイルを見たら、確実にそう思っても仕方ないだろ
まるで、怪獣同士が戦いを始めるかのように、盛り上がるコメント欄。
その勢いもあってか、どんどん視聴者数も増えていった。
紅葉「そんなに面白いことは言ってないんだけどなぁ.............」
:今更w
:ツブヤイターのトレンドに『#犬神よりも弱いブラックハウンド』とか、『#へっぴり腰なオルトロス』を量産してる時点で何言ってんだよ
:これには有名Dチューバーも呆然としてたもんなぁ...................
:てか後ろ!!
紅葉「あ、うん、知ってるよ」
そう呟いた後、背後に移動していたバーゲストの攻撃を避ける私。
すると
:知ってたんかい!!
:知ってた上で放置してたのかよ!!
:放置プレイで草
:これが本当の放置プレイってかw
:てか、放置した上で避ける紅葉ちゃんスゲェ!!
と、こんな感じで、またコメント欄が盛り上がっていた。
一方、バーゲストはというと.....
バーゲスト「ワォォォォォォン!!」
一直線に私の方に向かうと、大きな爪を振り下ろした。
紅葉「はぁっ!!」
私は、薙刀を使って、その攻撃を弾き返すが..............バーゲストはすぐに態勢を立て直したのか、ボス部屋の中を移動する、私の背後にピッタリくっ付き、まるで、ストーカーのように追いかけ回していた。
:あの犬.......頭もいいのか!!
:やり方が完全にストーカーのやり方で草
:ブチコボルトロードと違って、こっちはこっちで厄介だな
紅葉「もぅ!!邪魔だなぁ!!」
そう言うと、私は.......追いかけてくるバーゲストに対し、ほどほどの力でジャンプをして、その追跡を回避した。
バーゲスト「グルゥ!?」
:えぇ!?
:飛んだぁ!?
:というか.......アレは飛びすぎじゃね?
:普通、あんなに高く飛ぶか?
:紅葉ちゃんだからね仕方ない
:だな
そして.....そのまま落下する勢いに任せ、薙刀でバーゲストを攻撃するのだった。
だけど、その攻撃の威力がヤバかったのか..........バーゲストが地面にめり込んでいた。
紅葉「あれま、地面にめり込んじゃった」
:あのバーゲストが地面にめり込んでるぅ!?
:そりゃ落下する勢いを利用したら、そうなるとは思ったけど...............流石にこれはやりすぎだろ!!
やりすぎたかな?
そう思っていたら
バーゲスト「グルアアアアアアアアア!!」
すぐにバーゲストは復活した。
紅葉「よかった〜、生きてたみたいだね」
:言ってる場合か!!Part4
:あの攻撃でも死なないバーゲストのヤバさよ.......
:いや硬すぎぃ!?
:でも、あの様子だと.....少なからず、ダメージは入ってるっぽいな
:紅葉ちゃんもバーゲストもガチモードに入ってるやん
バーゲストの耐久力の強さに対し、騒然となるコメント欄。
そんな中、バーゲストは私に対し、一気に近づいた.............かと思いきや、人を何人も飲み込めるであろう、大きな口を開き、そして.......私を噛み砕こうとした。
しかし、咄嗟に避けたことによって、攻撃を受けずに済んだものの...........
バーゲスト「ワォォォォォォン!!」
今度は、連続で噛みつき攻撃を仕掛けてきた。
紅葉「速っ!?」
:攻撃する方のバーゲストもヤバいけど、その攻撃を避ける紅葉ちゃんもヤベェ!!
:どっちも速すぎるだろ.......
:倍速の世界かな?
:アレ?何かゲーセンでこういうのがあったような.......?
:それ思った
あまりにも速い連続攻撃に、とうとう私もバテてきたのか.......気を緩めた、まさにその時
バーゲスト「バクン!!」
と、食べられた.......そう見せかけて!!
紅葉「実は、生きてるんだよね〜」
バーゲスト「⁉︎」
喰ったはずの私が生きていることに対し、驚きの表情を見せるバーゲスト。
紅葉「さっきのは炎で作った分身だよ♪」
:はぁぁぁぁぁ!?
:分身も作れるのかよ!?
:ガチで焦った〜
:炎の活用方が凄すぎw
:いつの間に分身と入れ替わっていたんだろ..............
バーゲスト「グルルルルルル.......」
紅葉「もっと戦いたい?なら.......これならどう?」
そう言うと、私は.......ボス部屋の中に、無数の炎の分身体を出現させた。
紅葉「さぁ、やろっか」
バーゲスト「ワォォォォォォン!!」
舐めるな!!とばかりに、分身体を倒していくバーゲスト。
しかし.....
バーゲスト「ワォン!?」
その度に分身体が爆発し、バーゲストにダメージを与えていった。
:何あの戦法!?カッケェ!!
:動く爆発物かよ!?
:相手がバーゲストなだけに、容赦ないな
バーゲスト「グルァァァァァ!!」
分身隊の攻撃を受けつつも、何とか態勢を立て直すバーゲスト。
やっぱり、特殊ダンジョンの主だから、一筋縄じゃあ行かないか〜
そう思っていたら
『助けて.......』
という声が聞こえた。
紅葉「今のは.......?」
:バーゲストが喋った!?
:モンスターって喋れるのか.......
:え、え、どゆこと?
:何この声、怖っ!?
:誰か!!有識者来てくれ!!
.......どうやら、視聴者のみんなにも、この声は聞こえているらしい。
『苦しい.......寂しい.......誰か............助けて.......』
紅葉「どういうことなの.....?」
私が困惑していると、有識者らしき人がコメント欄にやって来た。
Dr.ジョージ:呼んだ?
紅葉「専門家の人キター!!」
:有識者ニキが来た!!
:Dr.ジョージって..........マナ研究の大御所じゃねぇか!!
:マジで!?
:何でそんな人がここに!?
Dr.ジョージと名乗る人物の登場によって、驚くコメント欄。
紅葉「Dr.ジョージさん。今聞こえている、この声って一体何なんですか?」
Dr.ジョージ:そうだね..........簡単に言えば、バーゲストと化した何かの声かな?
バーゲストと化した.....
紅葉「何かの声..........?」
:もしかして...........このバーゲストって、元々はモンスターじゃなかったのか?
Dr.ジョージ:YES
...........なるほど、そういうことね。
紅葉「つまり..........何らかのことが原因で、モンスター化することはあり得る.....てこと?」
Dr.ジョージ:そもそも..........特殊ダンジョンは、高濃度のマナを浴びてモンスター化した存在を中心に構成されているから、そのモンスターを倒せば、特殊ダンジョンは消滅するよ
紅葉「..........それって、無機物とか、生物とかもモンスター化する前提の話?」
Dr.ジョージ:YES
紅葉「そっか.............」
その話を聞いた私は、薙刀をギュッと握りしめ..........こう言った。
紅葉「私..........あの子を助ける!!」
:はぁぁぁぁぁ!?
:バーゲストを..........助ける?
:そんなことって.....可能なのか?
:教えて!!ジョージマン!!
私の発言によって、騒然となるコメント欄。
それは、ジョージさんも同じだったらしく
Dr.ジョージ:普通.......高濃度のマナを浴びてモンスター化した存在が元に戻る確率は0に近いけど...........
:けど?
Dr.ジョージ:彼女なら..........その確率を破壊してくれるのかもしれない
紅葉「その確率を壊せるかは分からないけど...........とりあえず、やってみる!!」
助けを求めている人を、放っておくわけにはいかないしね。
:カッコいい.................
:頑張れ!!紅葉ちゃん
:あ、姉御!!
:カッコいい女は背中で語るってか
:何でだろう..........紅葉ちゃんから姉御オーラが漂っているんだが
紅葉「さぁ..........行くよ!!」
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