ピンク色の旗


「嬉しく、ないんですか? 」


 よろしくね、と言った私に対してきみはそんな事を言った。

 え、と聞き返す。



「……いえ。勘違いなら良いんですけれど。」


 先輩がわたしを歓迎していないように見えたので。



 そう呟いたきみの声は、どこか哀しくて、優しかった。

 ああ、本当にこの部活に入りたいんだな、と。

 たったそれだけの対話で、きみの事をわかった気になったわたしは、慌てて否定した。


「ごめん、そうじゃなくてね。」


 深山さんみたいな美少女が廃部寸前のこの部活に来るなんて、ちょっと驚いて。

 自分の意志でここに来てくれたのなら、わたしは歓迎するよ。



 わたしがそう言うと、きみは嬉しそうに目を細めた。


「それなら、良かったです。」


「じゃあ、改めて。よろしくおねがいします、悠木先輩。」

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