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その手の平の冷たさを感じてしまうと、ときめいてしまう・・・。
私は社長の娘で・・・生まれた瞬間から苦労をしたことがなかった。
家の方針で公立の学校に通わされたけど、庶民の苦労を私は知ることが出来なかった。
親父はそういうことを大切にするタイプで、それを知っておくべきことだと思っている。
私も、そう思っている・・・。
私には重みがないと分かっているから。
私の人生には重みがないと分かっているから。
重みがある人に近ずこうとすることは出来るけど、本物には敵わない。
だから・・・
こんなに冷たい手の平で、唇を震わせ、鼻を真っ赤にしている山ノ内の姿を見ると・・・
ときめいてしまう・・・。
これが、私の大切な物だと私の本能が知らせてくる。
親父の会社に足りない大切な物も、これだった。
だから、弟が山ノ内を親父の会社に紹介した。
弟は色んな意味で凄い奴だから。
良くも悪くも凄い奴だから。
そんな弟が、どうやったのか経営者だった山ノ内を引っ張り・・・親父の会社に紹介をした。
何も知らなかった私は、惹かれてしまった。
だって、こんなの惹かれてしまう・・・。
私の頬を包む山ノ内の冷たい手の上に、私の手を重ねる。
眉間にシワを寄せ、切ない顔でゆっくりと私の顔に近付く山ノ内の顔に・・・
引き寄せられるように私も顔を上げ、近付く・・・。
大切な物を、求めて・・・。
きっと山ノ内が持っている、私の知らない大切な物を求めて・・・。
触れ合った鼻も、唇も・・・
凍っているように冷たくて・・・
重なった唇は小刻みに震え・・・
山ノ内の歯はカチカチと小さな音を立てていた・・・。
それを感じ・・・
私は、全身が震えている山ノ内を・・・
抱き締めた・・・。
強く強く、抱き締めた・・・。
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