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ほとんど眠れないまま朝を迎え、ラフな服を着てコートを羽織る。
ヒールのないショートブーツを履き、マンションを出た・・・。
駅に着くと、スーツ姿の群れの中・・・派手なドレスを着た盛られた髪型の女の子が。
壁に寄り掛かるように座り、下を向いてしまっている。
見てみると、ほぼ寝ている状態だった。
その女の子のすぐ近くにしゃがみ、肩を揺らす。
それでも起きないので・・・
「立ちな!!!!歩くんだよ!!!!」
女の子の耳元で、腹から声を出した。
女の子はうっすらと目を開け、私を見る。
「タクシーで帰りな!!!」
「お金ない・・・。」
「金の心配する前に!!!
自分自身の価値の心配しな!!!」
そう叫び、女の子の腕を私の肩に回し・・・
立ち上がろうとした・・・
その時・・・
女の子のもう片方の腕を、黒い上等な生地のコートを羽織った男が掴んだ・・・。
そのコートの男を見てみると・・・
山ノ内だった。
私が驚いていると、山ノ内が優しい笑顔で笑い・・・
「俺も一緒に。」
と、言って・・・。
断りたかったけど、この泥酔した女の子を1人でタクシー乗り場まで連れていくよりも、この男がいた方がいいのは分かる。
「分かった。」
そう答え、2人で女の子をタクシー乗り場まで送った。
タクシーに放り込み、泥酔している女の子に住所を言わせ、私の財布から数枚の札を握らせる。
「この女の子、お願いね!!」
そう言って、タクシーの運転手にも札を1枚渡した。
笑顔で頷く運転手を確認してから、女の子に最後に伝える。
「帰るんだよ!!!家まで!!!
しっかりしな!!!」
腹から声を出し、そう伝える。
女の子はうっすらと目を開け、また私を見て小さく頷いた。
「名前・・・」
「きょうか!!!」
私が叫ぶと、女の子はうつろな目で・・・でも小さく笑った。
タクシーを見送った後、隣に並んだ山ノ内を見上げる。
「ありがとね、助かった。」
私がお礼を言うと山ノ内が・・・私にお金を渡してきた。
そのお金を見て笑った。
「いらないよ。
私がやりたくてやったことだから。」
「知り合い・・・ではないよね?」
「“人には金を使え”って、親から言われてるからね。
知りじゃなくても、“人”だから。」
そう答えると、山ノ内が優しい顔で笑う。
「葛西さんは?電車?」
「電車。」
「俺も。一緒に行こうか。」
「・・・なんでこの駅にいたの?
最寄り駅とか違うでしょ?知らないけど。」
「出勤前に葛西さんに会いに来た。」
それには、笑ってしまう。
並んで歩く山ノ内を見上げる。
「心配しなくても、山ノ内副部長と関係を持ったことは言わないから。」
「少し、話したくて。」
「それは結果が分かってからにして。
まだ日数的に分からないし、くるかもしれないから。」
そう答えながらも、手が震えた・・・。
震える手を隠すために、両手をコートのポケットに入れる。
「じゃあ、私こっちの線だから。」
「ああ・・・。どこに行くの?」
暗い色をした髪の毛や服装ばかりの人の群れの中、黒い髪の毛で黒いコートを着た山ノ内が私に聞く。
「実家に行ってくる。」
「実家・・・?でも・・・。」
「親には言うわけないじゃん。
殺されるから。」
「殺されるって・・・」
眉間にシワを寄せて難しそうな顔をしている山ノ内に、笑う。
「バイバイ。」
そう言ってから、黒い人の群れの中・・・派手な明るい色をした私が入っていく。
手はまだ震えていて・・・
少しだけ、泣きそうだった・・・。
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