ブレイドビートル討伐
気分よく目が覚めたな。今日からは気を取り直して頑張るか。あの小娘四人組に、仕返しもしたいところだが、当面の生活のためにクエストをこなさなくてはな。
朝食を終えて、冒険者ギルドに行った。受付で適当なクエストを受けたいと伝えると、近場の村に出現したという、ブレイドビートル討伐を勧められたので、そのクエストを受けた。
そういや、剣も盗られたんだっけか。まぁ、Dランクのブレイドビートルくらいなら体術と魔法でどうにでもなるか。ベテラン冒険者舐めんなよ?
俺はブレイドビートル討伐依頼を発注した村に向かった。
ブレイドビートルは体長50cm程度で、角が鋭利な剣のようになっており、結構な速度で飛行する。
クヌギーラという木を好み、鋭い角で切りつけて、染み出した樹液を吸う。基本的には人を襲わないが、なわばりに侵入すると、襲い掛かってくるから放置するわけにはいかない。
外殻も硬いので、やみくもに武器を振るってもなかなか倒せない。駆け出し冒険者が命を落とすこともある危険な蟲だ。
だが動き単純で真っ直ぐ標的に向かって飛ぶだけなので、落ち着いて見切ればどうという事はない。
外殻が硬いといっても、俺ほどのベテランになれば、気合を入れて拳打を当てると外殻を貫通できるし、外殻に覆われていない腹部を攻撃すればイチコロだ。魔法だって少々心得があるし、Dランクごとき目じゃないんだよ。
「こちとら長年冒険者をやってるんだ、油断さえしなければあんな小娘ごときに、遅れを取ったりしなかった!」
ブツブツ独り言をつぶやきながら歩いていると、村に着いた。
軽く村長に話を聞いた後、周辺を探索を始める。ほどなく、木が鋭く切りつけられた痕跡をいくつも発見した。切り口はまだ乾いておらず新しい。
「近くにいるな……」
「ウィル、近くに、蟲、5匹いる」
「お前、分かるのか? ちょいと危険だから下がってな」
俺は呼吸を整え、拳を握り締める。
ブーンという大きな羽音と共に、こちらへ突っ込んでくる1匹のブレイドビートル。その角を両手で挟み込むように掴むと、勢いを利用して地面に叩きつけた。
地べたに転がり腹を無防備にさらして、ピクピク痙攣しているブレイドビートルに、氷の魔法で作り出した楔を刺し込んで息の根を止めた。
魔法で氷の剣やら槍やらを作り出して、敵に打ち込むのには相応の魔力やセンスがいるが、この程度ならたいして魔力のない俺にだってできる。
それにしても、今日はすこぶる調子がいいな。残りもサクッと仕留めてやる。残りの四匹も勢いよく飛び掛かってくるが、そのすべてを軽く躱してやった。
するとベネットが、ブレイドビートルたちに向かって何かを打ち込んだ。打ち込まれたブレイドビートルは、次々地面に落ちて動かなくなった。
俺はベネットに「今のはなんだ?」と問う。
「胞子、固めて、撃った」
へー、胞子ねぇ……。俺が感心していると、念話が続けて聞こえる。
「この蟲、食べていい?」
「ああ、いいぞ。でも、角や外殻は討伐証明として持って帰りたい。残しておいてくれ」
ベネットは菌糸をシュルシュルと伸ばし、ブレイドビートルたちの死体を包み込む。
ブレイドビートルは、瞬く間に角と外殻だけになった。解体の手間が省けたな。しかもかなり綺麗に必要部位だけが残っている。
「この蟲、美味しかった。でも、ウィルの方が、美味しい」
「あ、あぁ。また血を吸わせてやるからな……」
背中にゾクっと悪寒が走り身震いしていると、ベネットはさらに念話を続ける。
「それと、さっきの蟲、能力、奪った」
ベネットは菌糸を伸ばし、それの先端部分を剣のよう硬化させ、近くに生えている木にを斬りつけた。すると、硬そうな樹皮にあっさりと刃が通り、木を両断してしまった。
能力って言うか、ブレイドビートルの身体的な特徴のような気もするが……。それにブレイドビートルの角よりもより切れ味いいし。
まぁいいか、こいつは凄い奴だからな!
ブレイドビートルを喰って、少し大きくなった相棒と、帰路についた。
街に着き、冒険者ギルドに向かう。受付嬢に討伐完了報告して、素材部位の買取を頼んだ。
受付嬢は「少々お待ちください」と奥に引っ込んでいき、少し待っていると、お金を持って戻ってきた。思っていたよりいい金額になったな。これでしばらくは安心だ。ザックのやつにも奢ってやるか。
冒険者ギルドから出ようと、扉に向かって歩き出すと、あの美少女四人組のパーティーが建物に入ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます