顔合わせ(笑)

 時間は八時前。お菓子を用意して、お茶は淹れる準備だけ行っておきます。私の部屋から何か持ってくればよかったのですが、あいにく私の部屋の中に、甘味や嗜好品の類はありませんでした。とりあえず持ってきたのはメイド服一式のみ。


『そこでメイド服に着替えることがよくわからないんだけど?僕らがただ引かれるだけの未来が見えるよ?』

『私は同じライバーという身分を超えて、一回のメイドにすぎませんから。身分の差くらいわからせましょう。』

『それを言うなら”メイドでも同じライバーなんだ!”じゃないの?あと、身分の差を教えるのは、普通上の人間の方だから。』


 あみ様は年相応に緊張しています。えっと、なになに?『新しい友達を作るんだ!』……。


 早速不安になってきましたが、嘆いていても仕方がないので、私達のガワについての資料を開きます。


 私のはもう十分見ていますが、画像が五つ並んでいて、一人だけ白黒なのがいい味出しいていますね。目立ってどうするんだって話ですけど。


 ビジュアル的に一番好きなのは、『鬼頭 天野』ちゃんですかね。設定は、昔は素直だったけど、天邪鬼の性質と周りのドМの反応で、性格が歪みに歪みまくってしまった感じですね。…あいつこんなにク-ルだったっけ?(困惑)


『ピンポーン』

「あ、はーい!今行きまーす!」

「焦りすぎて大声出さないで、ちゃんとインターホンに向かってしゃべってください。下のメインホールからご案内してくるので、あみ様は待っていてください。」

「わかった…」

「はい『今、参ります』」


 エレベーターで行っては少し時間が掛かってしまうので、階段をジャンプで飛び降ります。そして、手すりで方向転換して、またジャンプ。身体能力と、メイド服の滑空能力(?)によって、十秒もかからずに一回に付きました。


 一瞬で服の汚れを払い、メインホールへ行くと、三人の私服のような女性達と、一人のちゃんとスーツを着た女性が立っていました。まあ、お前はいるよね、我が妹よ。


 皆さん驚いた顔をしており、に至っては


「お待たせいたしました。鷲塚…失礼。あみ様が上でお待ちです。どうぞ、このエレベーターにお乗りください。」

「え、あの、待ったというよりも来るのが早すぎて引いたというか…」


 一番背の低い金髪の美少女が若干震えた声で口にします。少しボーイッシュな声からして、この子が火車さんなのでしょう。


「それは失礼しました。事前に待っていたもので。私はあみ様の世話係のようなものです。星崎様・古川様・時島様でお間違いないですか?もう一人の方がマネージャー様ですね。これから、どうぞよろしくお願いします。」

「はい、よろしくおねがいします。」


 高音で澄み渡るかわいらしい声。消去法でもわかりますが、この方が桜木さんでしょう。さらさらした黒髪に高身長で、すらっとした体形は特に女性から嫉妬されそうですね。


「マネージャー様はコーヒーがお好きだと聞いておりますので、イギリスから取り寄せたものを用意しています。」

「お気遣いありがとうございます…、ぜひお願いします。」


 配信がもう近いですから、仕事の量も多いらしいので、随分睡眠時間を削っているのだとか。


「ミルクや砂糖はお付けしますか?」

「砂糖を少しで…」


 今後のためにも、少しでも疲れを取っていただきましょう。


「私も、失礼でしたよね…、ごめんなさい。」

「星崎様、あまり気負わないでください。Vtuberは、些細なギャグに気が付いた方が何かとお得でしょう?」

「あ、やっぱり知ってるんですね…」

「こんな完璧なメイドさん、秋葉原でも見たことありません…」


 そして最後は…


「時島様、高校生とお聞きしましたが、本当に今の時間は大丈夫ですか?」

「ありがとうございます、でも大丈夫です。」

「そうですか、お菓子もご用意していますので、ゆっくりとしていってください」

「「「はい!」」」「はい…」


 四人をエレベーターまで案内します。そんなに部屋が多いわけではありませんが、部屋を大きくしている関係でなかなか廊下がややこしいです。


「あまりエレベーターは大きくないので、私は階段を使います。出て左側の階段の近くに玄関があるので、インターフォンを鳴らしてください。」

「あれ?メイドさんはエレベーター乗らないんですか?」


 桜木さんが気を使ってくれていますが、私はむしろ体力が有り余っているタイプなので…


「五人で乗るには狭めですから。私は階段を使わせていただきます。」


 そのまま私は階段に向かいます。そして、階段の向かいの壁に足をかけながら、さながら最近の赤帽のように上の回へとジャンプし、扉の横でスタンバイします。その五秒ほど後に、エレベーターが到着しました。


 こちらの顔を見た途端に、一同がぎょっとしたのが見えます。


「(小声)え?まだ三十秒くらいしか経ってないと思うんだけど…」星

「(同じく)走って登ってきたんじゃないですか?」古

「(そのまた同じく)失礼なので、先に中に入ってしまいませんか?」時

「(またまた同じく)同感ですね」マ


 …ばっちし聞こえてるんですが。


『本当に都合のいい事しか通さないフィルターでもついているのかな?その耳は。』

『最近斗和の口数が減ったから、執事禁断症状の放置で死んだのかと思ってました。』

『勝手に殺すな。君が周りと話しているときに、タイミングを考えずに喋りかけたら、君が聖徳太子みたいになってしまうだろ?まあ、今のはつい突っ込んでしまっただけなんだけどね。』

『あのタイミングで突っ込み?何に対してですか?』

『そういうのに対してだよ…』


「あのお…メイドさん?もうこの部屋に入ってもいいですか?」古

「っ…申し訳ありません。どうぞ、突き当りの扉にリビングがありますので。」

「「「「はい!」」」」


 ここまでくると自分が保護者のように感じてしまいます。私はメイドの端くれでしかないので、もう少し身の程をわきまえた方がよさそうですね。



「あ!み、皆さん初めまして。この部屋に住んでいる、鷲見あみです。皆さんと一緒に、ネオライブの三期生としてやっていくことになると思います。よろしくお願いします…!」


 かなり早口で、噛まずに言うことが出来て偉いですね。…残念ながら、がっつりメモを見ていますけど。精神的に必要らしいです。


「私たちは、ここに来る前にお互い先に話しちゃったんですけど、私の名前は星崎です。『明石 火車』としてやっていくことになりました。これからみんな、よろしくね!」


 しょっぱなから元気っ娘ぶりを発揮する火車さんは、きっと見に来てくれた視聴者様の活力を与えることでしょう。はきはきしていて、ヲタクを理解してくれる優しい陽キャみたいな感じがしますからね。一定数彼女の配信を求める人は現れるでしょう。早めに固定のリスナーさんが作られるかもです。


「では次に、私の名前は古川と言います。Vtuber名は『咲』ですね!皆さんにはご迷惑をかけてしまうかと思いますし、こんなちんちくりんですが…よろしくお願いします!」


 いい子って言うのが一目でわかりますね。守ってあげたい…けどちょっといたずらをしてみたい…と、じれじれさせるような特徴の声です。母性本能と性的本能を一気に刺激される感じです。デビューして真っ先に同人誌でもデビューしそうですよね。というかこれ、少し声を意識すれば、いろいろな声とか出せそうですよね。歌が得意って言ってましたし、それかもしれません。まあ、サキュバスなんですけど。


「次は私ですかね。この中では最年少になります、時島と言います。ガワの名前は『鬼頭』です。世間知らずな身で、まだかなり緊張が抜けていませんが、仲良くしてくださると…嬉しいです。」


 わが妹のハスキーボイスは天下一品なので、皆さんもぜひ仲良くしてやってください!よく聞くと舞の声がちょっと震えているのが、実に高得点でかわいいですね。そういうキャラでやっていくのでしょうか?なんか声のキレが二年前よりもいい気がしますし、夢に向かえたようで何よりです。


 すると、タイミングを見計らってか、あみ様が声をあげました。


「実は、今日の顔合わせは仲を深めるっていう意味合いが強くて…。な、なので…もうちょっと砕けてお話ししし…しませんか!?」あみ

「えっと…それは賛成なんだけど…」古


 ?何か問題があったのでしょうか?


「ちょっとまだ…」古

「私も思った。自己紹介というか…がまだ終わってないよね?」星

「メンバーは五人…ですよね?」時


 あれ?もしかしてですけd

「「「もう一人メンバーいなかったっけ?」」いませんでしたっけ?」

「ああ!」あみ


 近くにいる人って忘れ易いのかもしれません。


「トワのこと?それならずっとそこにいるよ?下で出迎えた時に、自己紹介しなかったの?」

「「「は?」」」


 皆さんが恐る恐るこちらを向きます。それのタイミングに合わせて、私はばっちりカーテシーを決めます。なかなかメイドっぽかったのではないでしょうか?


「お嬢様方は…紅茶でよろしいですか?」




 ここまでの間、マネージャーさんは空気と化していました。さっきどさくさに紛れて渡したコーヒーを飲みながら、スマホ見てますね。忘れられてたのこの人もだったんじゃないですか?


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 最近忙しくなってしまい、更新を十分にできずにすみません…


 こっから、また安定すると思いますが、どうしても感覚は長くなってしまうと思います。気長に待っててもらえると嬉しいです!


 2024年8月30日から、文章の書き直しを始めていきます。納得のいくものになり次第、続きを書いていくと思います。一年間、本当にお待たせいたしました。更新頻度はかなり低いかと思いますが、これからも『狼メイド 時々執事』をよろしくお願い致します。

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