また会えるよね…?会え(豹変)
〈本当に…行ってしまうの?〉
〈はい。今まで本当にお世話になりました。〉
〈迷惑ではないんだよ?むしろ君は働きすぎだったんだけどね?〉
〈住まわせてもらっていて、三食が毎日食べられて、しかも給料ももらっていたのですから、なにも文句はありませんよ。〉
〈そうか…しかし向かう先が日本だとはね。何か記憶につながるものでも見つかったのかい?〉
〈はい、日本語が分かったんです。少しでしたが…後、日本のアニメや漫画などに見覚えがありまして。どうやら、私は日本にも住んでいたようです。〉
〈そうか、寂しくなりそうだよ。君が居てくれて、本当に良かった。僕よりも娘たちのほうがそう感じていると思うよ。〉
〈ジュリアは教師の道を真剣に目指し始めたし、リズはV…tu…ber?とかなんかになりたいって言っていたわ。正直リズは何言ってるかわからなかったけど、二人ともあそこまで真剣に物事に取り組みたいって言うのは初めてだったわ。〉
〈これだけは信じてほしい、私たちは君がどんな出自であっても、どんな考えがあっても私たちの家族だ。いつでも戻ってきていいし、年に数回は顔を出してくれよ?リズはさみしがると思うからね。〉
〈そちらも、ぜひこちらに遊びに来てください。丁度、連絡先が新しくなりましたから。〉
〈ええ、そうね。…それよりも、リズには言わなくていいの?嫌われちゃうかもしれないわよ?〉
〈黙って行こうとも思いましたが、リズ様が日本に来た時に、後ろから刺されたら笑えないので、今夜言いに行こうと思います。〉
〈あら?夜這い?〉
〈もうこの二年であの子も成長しましたから、私が襲い掛かろうとしてもカウンターされる気がしますよ?〉
〈あら?否定はしないの…あの子もチャンスなんじゃないかしら(小声)〉
〈そうだね、私もトワがもらってくれるなら…(小声)〉
〈もらって?なにか言いましたか?〉
〈〈いえ(いや)、さよならする前のほうが案外チャンスなんじゃ、って。〉〉
〈???〉
『どういうことですか?斗和は何かわかりませんか?』
『いや、僕は二年前からずっと執事の修行だったから…恋愛はちょっと。』
『恋愛?どこからそれに繋がるんですか?』
『ああ~~、お幸せにって意味だよ。』
『そんなこと一言こともいってなかったような…』
『ほら!お礼くらい言わないと、失礼でしょ!』
そういうことじゃないと思いますが…、それよりも、私は晴れて日本に帰国?引っ越し?することが決まりました。イギリスには離れがたい繋がりがたくさんできてしまいましたが、学校生活の節目に我が母国へ帰ろうと決意しました。斗和も私と並ぶレベルまで、執事としての振る舞いが美しくなりました。
〈そしてね、君は日本に行ったらアルバイトをすると思うんだけど…、君が行く予定の学校の近くに、私の日本での知り合いが居てね…丁度お世話係を探しているらしいんだ。しかも、同じ学校の同学年らしい。ご飯は出ないけど、私たちが払うよりかはお給料も悪くはない。トワがよかったらなんだが、引き受けてくれないかい?〉
〈そうですか、とても珍しいですね?日本ではそういった存在は、この国よりもはるかに少なそうですが…〉
〈それがね、知り合いのが会社を運営していたから、実質社長令嬢ってやつだね。その子はリズとも会ったことがあって、数少ない友達だったよ。〉
〈社長令嬢ですか、聞いた感じだとなかなかに印象の良い相手ですね?〉
〈そうだね、自惚れかもしれないが、私は人の善し悪しを見抜くのは得意な方なんだ、それは彼らの中のものだから、実際はわからないけどね。〉
〈もう一つ確認がありますが、よろしいですか?〉
〈ああ、いいよ。〉
〈メイドと執事とどちらが求められていますか?〉
〈?…メイドの方がいいんじゃないかな?女性同士だからそちらの方が違和感がないと思うよ?〉
〈承知しました。勤務の予定はどれくらいの頻度ですか?曜日制とか…〉
〈平日の登校から、夕方までだね。〉
〈わかりました。受けさせていただきます。慣れている事を仕事に出来るのは幸運ですから。どれくらい長く続くかわかりませんが。〉
〈そうだね、頼むよ。僕も彼に連絡をしておく。一週間後くらいに、指定されたお屋敷に向かって欲しい。〉
〈では、私はリズ様に報告を…〉
〈明日が最後か、とても短かったよ。お別れパーティーだな。〉
〈着せ替えパーティーも忘れないようにしてね?〉
〈はは、わかりましたよ。〉
『やっぱり感じるものはあるね。』
『あなたもそう思いますか、卒業式では泣いていませんでしたが。』
『そんな問題じゃないだろう?細かいものでも、独り立ちとなると感慨深いものだよ。』
雑談を斗和と話しながら、リズ様の部屋の前に着きました。
コンコン〈リズ様?今大丈夫でしょうか?〉
返事がありません。ただ、何かしらの声は聞こえてきます。かなり大きい声を出しているため、聞こえていないと言う事はないでしょう。
〈開けますよ…?〉
扉を開けると、シーツにくるまっているリズ様がいました。
〈大丈夫ですか?〉
と、シーツを取ると、目が少し赤くなって、しゃっくりをあげているリズ様が居ました。
〈何かあったのですか?〉
〈……でしょ〉
〈?〉
〈グスッ…この家を、出ていっちゃうんでしょ?姉さんさら聞いたの。〉
〈はい、明後日の朝に出発します。日本へ行きます。〉
〈あなたが決めた事だから…グスッ、絶対に反対はしないけど、その代わりにちょこちょこ戻ってきてね‼︎こっちからも会いに行くから。〉
〈はい、約束します。〉
〈向こうでも、元気にしててね?私たちのこと、忘れないでね?そうしないと許さないから。〉
〈はい、重々承知しています。〉
〈ありがとう…、本当に大好き。トワ〉
〈! …、私も大好きです。〉
〈ふふ、かわいい。〉
手を後ろに回され、ぎゅっと抱きしめられます。もう数え切れないほど抱きしめられているのに、いまだに慣れません。
…しかし、今回はそこで終わりませんでした。少し背伸びをして、唇に柔らかい感触が、唇?
あれ?何でリズ様の顔が目の前に?うそ、え?キス?
なに?ふぁーすときす?は、恥ずかしい。あえ…そんなにかおみないでよ…
〈ふふ、ここまで照れてるトワを見るのは、私が初めてなんじゃないかしら?〉
〈もっ、もう寝ますよ!〉
リズ様は、本当に心臓に悪いです。
◇
そして、次の日の宴会も終わり、あたりも静かになった頃。私は大きめの荷物を持って、玄関の前に立っていました。それは奇しくも、時島家を出た日の、あの日とよく似ていました。
この出来事が、また私の転換点になると言う事は分かっています。しかし、今度こそ私は、家族を悲しませるような事はしません。
『そうですよね?斗和』
『当たり前だよ、僕を舐めないで欲しいな。』
涙を堪えずに、私は“家族”へと手を振るのでした。
◇視点変更「リズ」
行ってしまった。姉のように思っていたトワが、別の国へ旅立ってしまった。今更ながらに、泣いて喚いてでもすれば、止められたかもしれないと思う。
もうこれは、初恋と言っても良かったのかもしれない。トワと一緒にいる時が、一番暖かくて、一番幸せだった。
もういない、もういないと考えるほど、自分の体が疼いていくのがわかる。好きな存在のことを考えて、ほぼ無意識的に自慰行為を繰り返す自分の手を見て、気持ち悪いと感じながらも理解してしまう。
あの顔を、あの体を、あの匂いを、あの吐息を、トワの全てを思い描く事で、何とか疼きを抑えていく。まるで、自分の気持ちを確かめるように。
〈確かに長く会えないかもしれないけど、浮気しちゃダメだよ、トワ?あなたのとろけた表情も、全部全部全部ぜんぶぜんぶ…私のものなんだから。ずぅーとまっててね…〉
◇視点変更「???」
お父さんから連絡が来た。私の世話というか、お供というかをしてくれる人が、ようやく見つかったみたい。私が社長令嬢な事は知っているらしくて、学校では秘密にしてくれるらしい。
相当自信満々だったけど、よっぽどお父さんに気に入られているのかな?気になったから、LAINで聞いてみる。
『その子、どんな感じの子なの?』
『私の、海外の知り合いの娘さんらしい。』
『え、聞いたことある人だと、結構偉そうな人じゃなかった?いや、立場的にだけど。その人の娘さんに日本まで来て面倒見てもらっていいの?』
『いや、養子で家では家事全般できていたらしい。元々学校に入るときに忙しいから、世話係を探していたんだが、海外からの枠でトップクラスの成績を取って入ったものだから、泣く泣く行かせることにしたらしい。これから日本で暮らすらしくて、バイトとかも決まっていなかったそうだからな。そして、なんと言っても日本語が上手いらしいぞ。』
『へえ、写真とかあるの?』
『一応あるぞ?ほら…』
送られてきた写真には、とても美しい灰色の髪をした美少女が立っていた。思わず息を呑んでしまう。私も顔は自信があるが、それでもドキドキしてしまう。
次の写真にスクロールすると、メイド服を着たその少女が写っていた。いや、雰囲気というのだろうか、それが違うだけで、彼女の見た目は、美女と言っても過言ではないというほどに落ち着いていて、気品があるように感じた。
というか、かなりゴッテゴテだな、このメイド服。
『すごくかわいい!でも、会ってすぐにスカウトとかしないでよね?』
『わかってるよ、確認くらいは取るさ。』
『ありがとう、顔合わせは?』
『一週間後の予定だ。』
本当に楽しみね、トワ。
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