メイド×学校は…なくない?
長期の休暇が終わり、いよいよこの国でも学校が始まります。二学期のはじめというものは、長らく会っていなかった友人との再会を喜ぶ一方、二学期で転校生という、本人以外はとても楽しみでわくわくするようなイベントが稀に発生します。
イギリスで、そのガチャの景品にされた一匹のメイドが私ですが、とてもじゃありませんが、この『パーフェクト・メイド・フォルム』で学校に登校すれば、友達どころか、全員が赤の他人化する恐れがあります。
また、メイドは仕える主人が居てこそのものです。リズ様はまだ中学生ですし、ここは無難に優等生キャラで通すとしましょう。
『と、いうわけで』
『なんだい?やけに神妙じゃないか。僕と話しても時間は待ってくれないよ?』
『まだ五時でしょう⁉…それよりも、貴方に頼みがあるのです。』
『嘘だろう?まさか…』
『そのまさかです。あなたには、優等生キャラを演じるという役目を与えようと思います!やりましたね!青春は一度しか味わえませんよ?』
『君は一回歩んだ道だったろう。うらやましそうな顔をしているが、絶対に面倒ごとを押し付けたいというのがバレバレなんだ!』
『ちっ…ばれましたか。でも、私の記憶が読めても、まだあまり自分で学ぶというのも面白いものです。私が陽キャなら食いついているところですよ。私もイギリスの授業とかほとんど受けたことありませんから、ぜひ教えてください。』
『はあ、本当に君はメイド特化だからな。僕もコミュ障ではないようだし…でも、メイドであるという自己暗示だけで、あそこまで人と会話できるのは、もはや化け物だからね。』
『それなら、所見の人にも臆せず声をかけるどころか、ナンパを仕掛けるような人のほうが、精神的には強いような気が…、それよりも!私が心配してるのはそこじゃありませんから!あなたは私との会話でちょくちょく煽ってくるから、決して学校で目立たないようにしてほしいんです。あなたが問題行動でも起こせば、ロイド家の皆様に更に迷惑をかけてしまいますし、私のメイドとしての株も下がってしまいます!』
『つまりは、普段の君に沿った性格を演じろ。ということかい?』
『その通りです。』
『学校でくらいなら、僕の自由にしていい気がするけど?』
『駄目です。というか、あなたに任せるとどんなことをしでかすかわかりません。初めて体を受け渡すんですよ?なにかあってからでは遅すぎます。』
『わかったよ。でも、口調はそのままでいいかい?絶対にぼろが出てしまうと思うから。』
『外国では僕っ娘という概念がなくて、本当に助かりました。それならボーイッシュくらいで良いんじゃないですか?』
『そうさせていただくよ。』
それでは、そろそろ朝食の支度をはじめましょう。
〈トワ⁉今日から学校でしょ?私たちが作るから、少し待っててね。〉
〈ジュリアさん…そうですか、ありがとうございます。この制服とやらも、とても凝っていますね。〉
〈そうだ!学校がどんなところかは知ってるって確認したけど、まだ何か聞きたいことがあったら、どんどん質問してくれて構わないよ~〉
〈そうですね、それでは~~~〉
リズ様やエリオット様、シア様が起きてきたので、一緒に朝食を頂きました。そういえば、ジュリアさんの料理は初めてか…いや、これは料理とは言わないのでしょうか?(サンドウィッチ)
〈トワ、制服似合ってるわ‼〉
〈そうね~、今度はリズの学校のペアルックがいいかも♪ジュリアは年が離れすぎてたからね~〉
〈とても綺麗だよ、ジュリアがこのくらいの頃は、もっと手に負えなかったからね。反抗期というのか?あれが。〉
〈余計なこと言わないでお父さん!〉
〈はい、この制服は本当にぴったりで着心地がいいです。〉
〈そうでしょう?トワは大人っぽいから、細身でスラっとしていて、本当にうらやましいわ~〉
〈でもね、この前トワとディ◯ニーに行った時にね、とってもふにゃふにゃしててかわいかったよ!いつものかっこよくてきれいなのもいいけど、私はもっと元気いっぱいでもいいと思う。〉
〈そんなに力抜けてましたか?そうですか、では学校では、もう少し笑顔を心掛けます。〉
〈(あの顔は、私以外に見せてほしくないんだけどな〜)うん!頑張って!〉
『そんななので、斗和。頑張って下さい。』
『君は気楽でいいよね、僕は本来なら初めてのお使いよりもヘビーなことをやってるよ?』
『赤ちゃんじゃないなら、やってみる事ですよ。私はこの家で一ヶ月ずっと働いていましたよ?あなたも私ならば、努力するべきでは?』
『だからね…君も僕も同じでしょうが。本来なら幾つも人格を持つ人なんて、病気の中でしかいないんだからね?』
『楽できるのなら病気で構いませんが?』
『はあ、アドバイスは頼んだよ…』
◇視点変更「斗和」
ここからは僕が説明でもさせてもらうよ、僕が担当するのは今のところ、登校から下校まで。宿題は場合によってかな?リズと一緒に勉強することもあるだろうしね。
しかし、結構あの校舎は広いね。とてもじゃ無いけど、あの学校に僕が行くとは思っていなかったよ。コネ入学みたいで気が乗らないね。
しかし、早すぎるからか全く生徒がいないな。僕は確認や何やらで七時半集合だけど…、いや、一人二人見えるな。見た感じ真面目そうな男女。カップルでは無さそう。生徒会とかそこら辺なのだろうか?そもそもイギリスにそんなものがあるのか知らないけど。
そんなこんなで学校に到着。徒歩で十五分位だから、前の電車通学よりもだいぶマシだね。勿論狼時代に登校や通学なんてものなかったから、『若』の方の記憶になる訳だけど。
校舎は少しファンタジーの薫りがする造りになっているよ。遠くからの方が外見はわかりやすいけど、中も意外とちゃんとしている様だね。
清掃員さんに挨拶をして、校長室を教えてもらった。男の人だったけど、一瞬だけ止まってたね。もしかして、この顔に見惚れたとかあるのかな?そんなにかな?
そんなこんなで校長室に着きました。日本のものよりも、先生一人一人の部屋が個室っぽくて、僕は好きかな〜。
〈失礼します。〉
〈そんなに畏まらなくて大丈夫だよ。ここでは学校生活の確認だけだから、気軽にしていてくれ。〉
〈ありがとう。それじゃあそうさせてもらうよ。〉
きっと向こうから言ってくれたから、大丈夫だよね。この人が校長先生なのかな?意外と若くて、歳で例えるなら…
〈なるほど、君がエリオットのところのか…〉
〈はい、一ヶ月ほど前から住まわせてもらっているよ。もしかして、知り合いだったりするのかな?〉
〈ああ、エリオットとは同級生だったんだ。あいつが養子を学校に入れてほしいと言ってきたからな。どんな奴か楽しみにしていたんだよ。〉
〈それは、本当にありがたいよ。こうして今からこんなにいい学校で学ばせて貰えるなんて、他の子からしたら羨ましいことだろうからね。〉
〈ああ、そうだな。しかし、エリオットからは真面目だと聞いていたんだが、私の思っていた真面目とはひと味違う様だな。〉
〈本人の前で言わないで欲しいなあ。まあ、こちらにも事情があるんだよ。それに、君も態度ばかりだと飽きてしまうだろう?僕もお互いいい関係で居られればいいと思っているからね。〉
〈君みたいな子はあまり見たことないタイプでね、今まではどんな暮らしをしていたんだい?〉
〈それはね、記憶喪失らしいよ。何もさっぱり覚えていないんだ。〉
〈それは、悪い事を聞いたな。〉
〈大丈夫だよ、隠すことでもないしね。〉
〈…ここまで校長に向かってラフな態度を取れるのは、君だけだと思うよ。〉
〈礼儀はね、相手が不快に思わなければそれでいいんだよ。〉
〈ハハッ、確かにそうだ〉
こうして、少しこれからの話を終えた僕は、いよいよ自己紹介をクラスの皆にする時間になった。これからの高校生活、(正確に言えばSenior Secondary School)二年が始まる。気を引き締めていこう。
◇
『まあ、今のところ及第点じゃないですか?』
『そうだろう?もっと褒めてもいいよ。』
『若干、家での私とキャラが違いましたが、私とは違った余裕を感じました。クソ真面目があなたを見れば、イラっとくるでしょうね。』
『褒め言葉…と受け取っていいかな?』
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いきなり失礼。Pikarin⁉︎です。突然ですが、少し追加情報を書いておきます。
イギリスでは小学校、中学校、高校、大学、という呼び方ではありません。
それに『Senior Secondary School』というものは、日本で言う高校ですが、十七歳から十八歳までの二年間です。
この前の、リズ様への印象で、中学生という単語が出ましたが、あくまでも日本での中学生を基準とした表し方で、実際にイギリスでは、中学校というものは厳密には存在しない事を、ご了承下さい。
また、今回の様に視点が変わる事がありますが、事前に変わる事は伝える様に心掛けます。
ここまで真面目に読んでくれた方、本当にありがとうございます!随時、説明は設けるつもりです。質問や、間違い等ございましたら、気軽にコメントして欲しいです。
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