人狼だってことを再確認した
さて、この家で住ませていただいてから、ちょうど一か月ほどの今日は、リズ様とテーマパークに来ております。オスとメスのネズミが楽しくわちゃわちゃしているランドです。想像したらお肉が食べたくなってきました。以前は草食系男子というより、絶食系と呼ばれていたんですけれども。
と、言うよりもですね…そんなに簡単にメイド一人にお守りを頼んではいけないでしょう。スペックだけはマシですけれども。他はみんな仕事って…なめてたりしますか?
〈ねえ、トワ。あの水のやつに最初乗ってみない?〉
〈リザ様、お友達とでも来ればよかったではないですか…何故私と一緒に行こうと?それでシア様やジュリア様は賛成なさったのですか?〉
〈…私、あまり年の近いお友達いないから。〉
〈そうなんですか、家では明るく振舞われていましたので、てっきり…〉
〈そう、前まで年の近い話し相手はお姉ちゃんくらいだったから。私、最初トワに突っかかっていたでしょう?あの時はお姉ちゃんがもっと離れちゃうかもって必死で。その分、今はトワにこうしてほだされちゃったけど。責任とってね?〉
〈言い方に悪意を感じますが、私も責任を取ってお世話をさせていただきますよ。〉
〈ありがとう。それとも迷惑だったかしら?…そうよね、仕事もあるだろうに確認もしないで。あんなに楽しそうに家事をやっていてくれて、私てっきり疲れてるのかと思って。本当にごめんなさい。本当に…(涙目)〉
〈お気になさらず、ご主人様はわがままでなんぼですので(キリッ)〉
〈それってとどのつまり、迷惑ってことなんじゃ…?〉
〈おっと、こんなに話していたら列が長くなってしまいますよ?行きましょう!〉
〈待って、まだ心の準備が!…て、力強くないいいいい⁉〉
なんといえばいいのか、私も連続での仕事の日にちは切れていないので、休んだ方がいいのはわかりますが、逆なんですよ。興奮してテンションが這い上がってきています。心なしか、耳元とおしりのあたりがムズムズします。ちゃんと洗っているのですが。
『ねえ、』
「‼‼‼‼」
〈? ど、どうしたの?トワ。そんなにこのアトラクションが怖い?私は結構爽快感があって好きだけど、冷たい水が苦手なのかしら?〉
〈い、いえ。なんでもありません。〉
『いきなり声をかけてこないでください!びっくりするでしょうが!耳と尻尾出てきちゃうかと思いましたよ⁉』
『いやあ、ごめん。でも話したいことがあってさ。』
『…今じゃなきゃいけないですかね?』
『うん、すぐ終わるからさ、デートの邪魔はしないよ♪』
『デートて、違いますが? まあ、わかりました。』
『うん、リズにはお手洗いに行ってくるとかで良いんじゃないかな?』
斗和が急に話しかけてくると、並のホラゲーよりも怖いんですよ。これから気を付けてほしいです。それよりも、話したいこととは一体何でしょうか?間が悪いなんてもんじゃありませんが。
〈すいません、リズ様。お手洗いに行ってきてよろしいでしょうか?〉
〈わかったわ。ここで待っているから。(だからさっきまで様子がおかしかったのかしら?まさか漏れ…)〉
〈ありがとうございます、では失礼。〉
〈(それにしては落ち着いいてるわね?まさかもう!)〉
それにしても、斗和はもしリズ様が、〈一緒に行く〉とか言い出したらどうするつもりだったのでしょうか?女子ってそういうの多いって聞きますし。
◇
『はあ、あのまま移動途中にでも話せばよかったのでは?』
『短いとは言ったけど、結構大切な話なんだよ?僕の話をもっと真剣に聞いてくれても、罰は当たらない気がするけどな~』
『勿体ぶらずにさっさと行ってください。時間の無駄です。』
『あれ?結構理不尽だった気がするのは僕の気のせいかな?』
『戻りましょうか?』
『わかったよ…トワってさ、最初は内気だったけどさ、段々みんなと打ち解けてきたって思ってない?』
『まあ、ロイド家の皆様は優しい方が多いですし。』
『それでさ、僕はやることがよっぽどのことがなけりゃないから、君の行動とか、ずっと見てたのよ。』
『それは、そうでしょうね。』
『そうそう、でもね?君って僕という意識が確立する前さ、結構はっちゃけてたよね?ジ〇リなんて、向うの人があまり知らないような、リスクは低かったけどそれらしくないことしてたじゃん。いくら真面目モードじゃなくたって、もともとの自分じゃないからって、おかしな行動だったと思うんだよ。』
『?』
『でね?君自身も気付いてないと思うけど、丁度二週間前あたりが、一番君らしかったんだ。君が思っている冷静沈着なメイド像にね?』
『本当に何が言いたいのかわかりません。長くなるなら戻ってよろしいでしょうか?』
『ここからいいところなんだよ!それでさ、君って月とか見てる?』
『?見ていませんが。たまに見かけることはありますね。』
『でさ、僕ら耳と尻尾があるんだよ、本来。最初の日、君が人間に化けるっていうのかな?したときに、少し手こずっていたのは覚えているかい?確か一週間くらいでなれたんだよね。』
『そうですね、自然に…』
『体調に異変が起きたのは?』
『一週間ほど前です…』
『僕はね、その症状が慣れないと言っていた時の症状と、同じに思えてならないんだ。』
『…つまり?』
『そう急ぐなよ、今の君でも人狼ってどんな奴か覚えているかい?』
『満月のときに、狼になってしまうってあの?』
『そう、僕らは見方によっては人狼だ。それだと、満月の日には狼のようになるよね。実は、今日が満月なのは知ってた?』
『あなたは、まだ自立して動いたことはないはずでは?』
『君も料理中にニュースは見ていなかったようだね。ここにきて僕たちは一か月。あの夜、僕らが森に倒れていた時、耳と尻尾が生えていたのは、必然じゃなかったと思うんだよ。あの夜が満月だったから。そう捉えることもできないかい?』
『いくらなんでも考えすぎでは…』
『注意するに越したことはないよ。だってそうなら、君は月が出れば、無条件であのかわいらしい姿になってしまうかもしれないよ?後は、一種の興奮状態になるかもしれない。』
『他人事みたいに…興奮状態とは何ですか?』
『人狼であれば、満月の夜は狩りの時間だ。そんな風に自分が抑え込めなくなるかもよ?第一、このぐらいの見た目ので年齢が同じくらいだったら、生理くらいとっくに過ぎてておかしくないんだよ。肉体が再構成されたなら、ハジメテはまだのはずだろ?』
『言い方がいちいち気持ち悪いです。まあ、早めに帰って休んだ方がいいでしょう。というより、ひらめきであなたに負けたことが、すごく悔しいです。』
『ただの予想だよ。こう見えても僕は、狼の中では頭がいい方だったっぽいよ?』
『それよりも、早くリズ様のもとへ戻らねば…随分と長く話し込んでしまいました。』
◇
それから先は、ムズムズが先ほどよりも強く感じられ、あまりアトラクションに集中できませんでした。や、病は気からと言いますし、きっと私の心が生み出したものに違いありません!というか、そうあってください(切実)
〈大丈夫?トワさっきからやけにふらふらしてたけど。まさか、水が掛かって風邪でもひいちゃった⁉ごめんなさい、タオルとか買っておけばよかったかしら。ごめんなさいね、最近仕事ばっかで疲れていたでしょうに…〉
〈つっ…大丈夫です。風邪ではないと思います。しかし…疲れてしまったのは事実の様です。本当に申し訳ありませんが、そろそろ家へ帰ってもよろしいでしょうか?〉
〈本当に大丈夫?顔は青いというよりも赤いわね。熱があるのかしら。…ん?少し熱いわね、本当に大丈夫なのかしら?〉
〈い、いえ?大丈夫ですって!あと、近いです。〉
〈家でもっとくっついたときなっかった?〉
〈いえ…ええと、あの…そう!熱が移っちゃうかも…それよりも、帰って大丈夫ですかあ?〉
〈(これは重症ね、あのトワがでろでろでトロっとした目…これだけでご飯三杯いけちゃいそう。)そうね、そうしましょうか。〉
『あれ?いつの間にか君が年下みたいになってない?かわいいね~』
『うるさい…こうたいしていい?』
『おっと、今君は中学生に肩を貸してもらっていてもメイドなんだよ?ここで僕が君の代わりになるわけないじゃあないか。』
『うう、あたまがまわんない…』
『(こりゃあ相当だよ…)』
いえへつきました。みんながしんぱいそうなかおをしてるけど、それどころじゃない。からだがあつい。べっとでうずくまってたら、がまんしてたおみみとしっぽがすぐにでちゃって、そうしたら、なんだかすこしらくになりました。
でも、なんかおなかがムズムズして、さびしくて。でも、そこまでするともどれなくなっちゃいそうだったから、がまんしていました。そしたら、だんだんねむけが…まだやっていないしごとが…うみゅう。
『全く、これを見せられる僕の気持ちも、少しは考えてほしいものだよ。だからってどうしようもないんだが…まあ、これは本人には言わないでおいてあげよう。厳密にいえば同一人物なんだけどね。』
◇
『あれから、何かあったのですか?最後のほうの記憶がなくて…朝も耳と尻尾出ちゃってましたし…やらかしてないですよね?』
『やらかしてはいなかったよ、…やらかしては。』
『そうですか、今回はあなたの予想が正しかったようですね』
『そうだね。』
『あ、でも一つだけ違うところがありましたよ?』
『?』
『興奮状態はなかったでしょう?あれはさすがにひどいですよ。』
『ああ~、ウン、ソウダネ』
『何か言いたいことがあれば、どうぞ?』
『何でもないよ(…まあ、また次の一か月後には、察してくれるよね?)〉
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