第22話 面白い人!
「あ……ごめんなさい、つい、逃げそうになってしまって」
と言うと彼は少し残念そうな表情を浮かべながらもこう言ってきたのですね。
「いいよ別に、君がそういう性格だってことはよく分かってるからさ……」
そんなことを言ってきましたけど私的にはなんか腹立ちますね。
だからとりあえず蹴ってみたのですけれど全然効いてないみたいですね。
まあそりゃそうですけれども何か納得いきませんのでもう一度蹴りましたけどね今度はちょっと本気出してしまったかもしれません。
そしたらさすがに効いたらしくてようやく手を離してくれたんですよ。
「痛ってぇ……いきなり何すんだよ」
って言うんですよけれど私、全然悪そうに思ってないですもの仕方ないですよね。
そんなわけで、それから彼と話を始めたわけですけれども彼はまだ諦めきれなかったみたいですわ。
私の事が好きすぎてたまらないみたいでして、正直迷惑でしかないので適当に受け流しておこうと思っていたのですけど、
なんかやたらと付き纏われて困りましたよね。
もう面倒になったしぶん殴ったら大人しくなったんで良しとしましょうよそうしないと終わらないですからねこのやり取りは!
そんな訳で蘇芳さんは私につきまとうようになってしまったのですよこれが困ったことに本当にしつこいものでね。
何度振り払ってもついてくるんですわよ。
まあ私もいい加減うんざりしまして、 ある日、とうとう我慢できなくなってしまって彼のことを拒絶することに決めたのでありました。
それで彼が諦めるように仕向ける事にしたのですけれども、なかなかうまくはいかないもんでねえ……
「もうやめてください、 これ以上しつこいと通報します!」
と言ったら蘇芳さんは急に泣き出しましてね。
これにはこっちも驚きましたよ。
いや本当に驚いたんですから仕方ないじゃないでしよう!?
そんな反応されたらこっちまで動揺しちゃうじゃないですかぁ、
でもとりあえず泣き止むのを待ってから話を続けてみたんですが、やっぱり納得してくれないみたいでしてね。
仕方がないなぁと思ってもう一度言い直しましたわ。
「お願いします、私の事を、そっとしておいて、ください……」
ってそしたら彼はまた泣き出したんですよ。
本当に面倒くさい奴ですわ。
でまあ結局泣き止んでくれなかったので、その日はそのまま別れましたね。
そして翌日以降は全く音沙汰なかったので、どうやら無事に諦めてくれたようですね良かった良かった。
「ララ、好きだ」
そう呟いた声は風に乗って掻き消えていった。
彼女はその呟きに答えることはなく、ただ微笑んで見せただけだった。
だが俺はそれを肯定の意と判断してしまうことにした。
彼女が否定しようと肯定しようと関係ない、
そんなことを考えているうちに彼女の家の前に辿り着いたようだ。
そこで一度立ち止まって息を整えることにした後、意を決してインターホンを押した。
すると扉の向こう側から足音が聞こえてきて扉がゆっくりと開かれると同時に現れた彼女に笑顔で挨拶をした俺なのだが、
しかし次の瞬間には固まって動かなくなってしまったのであった。
何故ならばそこにいたのはいつもの彼女ではなく、
まるで別の人物が立っていたからであり、いやむしろ別人と言っても差し支えないだろうと思うほどに雰囲気が違うというかなんというか。
「こんにちは、あなたが来ると思って、待ってました」
そう告げる女性の声にどこか聞き慣れたものを感じたような気がしたが、今はそんなことはどうでもいいことであるしとりあえず彼女の話に耳を傾けることにした。
そしてその内容を聞いて愕然とする羽目になったのは言うまでもないことだろう。
「それで、何か御用でしょうか?」
と言う彼女に向かって、俺は意を決して告白することにしたのだ。
俺がずっと想っていたことを伝える為に、とは言ったものの何を言えばいいかわからないので取りあえず自己紹介を、
しておくことにしたのだがそれでもやはり緊張して、うまく話せないまま時間が過ぎていってしまったのである。
その時彼女が急に笑い出して言った言葉を聞いて俺も笑ってしまったものである。
「あはは、面白い人ですねぇ」
と彼女は笑顔で言っていたが俺もそれに釣られて笑ってしまったので結局何だったんだと思ったがまあ良いか。
しかしそこで彼女がまた口を開いたかと思えばこんなことを言い出したのだった。
その途端私は驚きのあまり目を見開いて固まってしまったのですけれど、
その一言は、あまりにも衝撃的なものでありましたよ。
だってそうでしょう!?
私が蘇芳さんのこと好きじゃなかったって言ったらどうしますかって、言われたら、そんなのもう絶望するしかないじゃないですか。
そうなのです。
私は実は彼のことなんて全く好きではなくむしろ嫌いだと言ってしまうと、
嘘になってしまいますけどそれでも別に好きなわけではないという訳でして、
それなのに彼はどうしてそこまで私に執着してくるんでしょうかね〜本当に謎です。
しかも毎日のようにやってくるのでさすがに嫌になってくるんですけど、
まあ仕方ないから相手してあげているのですけどねでもいい加減うざいですよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます